ナイトティー
包帯を巻き終わり、結び目を作ろうとしていると、カミュ第二王子が私の手をぎゅっと握った。これには「???」と目が点になってしまう。
「アドリアナ!」「殿下」
「「サンフォード公爵令嬢!」」
何人もの声に「?????」となり、カミュ第二王子はスッと私から手を離す。そして声の方を見ると、そこには白シャツに黒ズボンのリアス、セーブル、アンバー、そして隊服を着た近衛騎士たちがいた。
◇
「さあ、こちらにどうぞ」
「すごいわ、アンバー。テントに簡易ベッド、そしてこれは着替えの寝間着ね」
「さらにナイトティーも用意できています!」
カミュ第二王子に手を握られ、フリーズしているところへ現れたみんなは、快適に野宿できるよう、いろいろな物を持参してくれていた。白樺の森の中まで同行していた近衛騎士は二人だったが、森の入口では三人が待機している。一人は怪我をしているので来ることはできなかったが、四人は折り畳みタイプのすのこや薄手の丸めたマットなどを持ってきてくれたのだ。
みんなのおかげでテントを張ることができ、私とカミュ第二王子は簡易ベッドで休めることになった。
「カミュ第二王子殿下は火傷もあるし、簡易ベッドで休んで当然よ。でも私は……お祖父様の森の中で、野宿の経験もあるから、みんなと同じ寝袋でもいいのよ? それにみんなが来なかったら、そのまま地面にごろ寝だったし」
「いえいえいえ、何をおっしゃいますか! 公爵令嬢なのですから。そこは気にせず、休んでくださいませ」
「分かったわ」
「では着替えもされると思うので、ひとまず入口の布を下ろしますね」
テントの入口の布が下ろされ、私は一枚布のパレオのワンピースから、寝間着に着替えることになった。さりげなく下着も新しい物を持参してもらえたのは嬉しい!
着替えを終え、入口の布を上げてみんなの方を見ると……。
カミュ第二王子のテントの入口の布は既に下りており、彼はもう休んだようだ。背中の火傷の件もあるので、休むのは正解だった。
近衛騎士はカミュ第二王子のテントそばで護衛についていた。一応寝袋は用意されているので、交代で休み、護衛を続けるのだろう。
セーブルは既に寝袋に潜り込み、眠っているようだ。アンバーはすっかり執事になっており、護衛騎士にナイトティーを出していた。
(リアスはどうしたのかしら? 離れた場所で着替え中……?)
そう思った瞬間。
石鹸のいい香りがしたと思ったら、背後から私を抱きしめる引き締まった腕が見える。
「リアス」
「アドリアナ!」
背中越しに感じる、リアスの引き締まった体躯に心臓が急速にドキドキし始める。
「これからナイトティーを飲むんだよね?」
「そう。リアスが付き合ってくれると嬉しいわ」
「もちろんだよ! じゃあ座って」
私が簡易ベッドにストンと腰を下ろすと、リアスはティーポットからティーカップに紅茶を注いでくれた。二人分用意すると、一つを私に渡してくれる。
「ありがとう、リアス」
「どういたしまして。……でもまだ婚約したばかりなのに、アドリアナにナイトティーを出すのは、何だか不思議だな。まるで一緒に住んでいるみたいだね」
(そう言われるとその通りだわ。未婚の男女が寝室で会うなんて、まず許されないのだから)
テントだからこそ許されている感じだった。
「! リアス、どうしてそんなところに?」
リアスはティーソーサーを持つと、そのままテントの入口のところに立っているのだ。
「どうしてって……地面に座ると、雨でまだ湿っているから……」
「隣に座ればいいじゃない」
「えっ」
そこでリアスが瞼を伏せ、頬をポッと赤くする。
(なんだかその様子はもう乙女だわ!)
「……そんな。ダメだよ、アドリアナ。僕たち、結婚式も挙げていないのに。そんな同じベッドで座る……なんて」
さらに耳まで赤くするその姿は……。
(やっぱりリアスは乙女!)
「リアス、ここはテントよ。入口の布を上げているから、ほら、カミュ第二王子殿下の護衛についている近衛騎士からは、丸見えよ。アンバーが急に来るかもしれないし。何もやましいことをするつもりもないでしょう?」
(そしてベッドに座ることを勧めてしまう私は……やっぱり男ね!)
「そうか……。ならばいいのかな、僕が隣に座っても」
「今、ここで座れるのは地面かこの簡易ベッドだけよ。ティーセットを置いているのは、トランクだから。さすがにそこは座らないでしょう。だからベッドに座るのは自然な流れだし、近衛騎士も気にしないと思うわ」
「じゃあ」ということで腰を下ろしたリアスだが……。
座って横に座る私を見ると、透明感のある美しい碧眼を潤ませ、顔から首まで赤くなっている。
「……っ。これは緊張するな」
(愛い! リアス、本当に乙女で可愛いわ!)
リアスの緊張をほぐすため、ナイトティーを飲むように勧め、そして尋ねる。
「ここへ来ることになった経緯を知りたいわ」
お読みいただき、ありがとうございます!
ここへ来た経緯は次話で明らかに~
本日もう一話公開しますっ!























































