星空の下で
目論み通りで冬眠用の穴は、獣の快適な寝床となっており、沢山の枯草や枝があった。それを使い火を起こし、さらにロープを使い、濡れた服を脱いで干すことができた。さらに私は布を使い、パレオのようにして身に着けることができたのだ。
(今が夏でよかったわ。夜になっても気温は極端に下がっていないから、なんとかこの焚火と布で私は大丈夫だけど……)
カミュ第二王子は濡れたままのズボンで、上半身は裸だった。
(この気温だし、風邪を引くことはないと思うけど、それよりも!)
少し癖のあるプラチナブロンドに、エメラルドのような瞳で、とにかく常にキラキラエフェクトをまとっているように輝いている。背景音は「シャラーン」という感じで、薔薇の花束を持たせたら無双しそうなキャラだった。
そんなカミュ第二王子が上半身裸。
ゲームの舞台は西洋風の騎士がいるような世界観で、水着なんて存在していない。ゲーム内で攻略対象の上半身裸なんて登場していないのだ。エロの感覚で見たいわけではない。あくまであの乙女ゲームのキャラが上半身裸だ!という好奇心で見たくなっていた。
ということで、気付くとついその上半身に目をやりそうになるが、心の中で「煩悩退散! 見たらセクハラ」と念じることになる。
(私はリアスと婚約しているし、見るならリアス一択よ。他の男なんてどうでもいいのだから!)
ともかく私がそんなことを念じているとは思わないカミュ第二王子は、手ずからで夕食となる品々を用意してくれた。そして――。
「こんな物しかないですが、どうぞ」
「ありがとうございます。これだけあるので十分ですよ」
カミュ第二王子が持参していたずた袋に入っていた食料。それは堅いパンとアンチョビ、欲し肉にドライフルーツだった。
(水袋もあったのよ。水分と食料があれば上々だわ)
いざとなれば簡易な罠でも仕掛け、獲物を仕留める覚悟もしたが、これなら十分だ。とはいえ堅いパンは水分が少ないので、もそもそと食べることになる。
そうやって食事を始めると、カミュ第二王子は何だか笑顔なのだ。
「ごめんなさい。この状況、笑うような場面ではないと分かっているんです。でも僕には林間学校の延長に思えてしまい……。今日は星空の下、みんな野宿をしている……そんな気持ちになってしまいました」
(星空の下で野宿……)
その言葉で空を見上げ、そこに広がる満点の星空に息を呑む。焚火の明かり程度では遮ることが出来ない、眩しいほどの星空が広がっていたのだ。
「首都でもこの辺りの星空は格別ですね。王宮から見上げても、ここまでの星空は見えないです」
「そうですね。ここが森の中なので……」
お互いに星空を眺めている。沈黙を気にする必要はないのだけど、それでも何だか意識してしまう。何かを話さなければと思い……。
「そ、そう言えば、殿下はイストス帝国へ行かれていたのですよね?」
その瞬間。
カミュ第二王子の顔に、大きな影ができた気がした。
(もしかして地雷だったかしら……。公務と称して学校を休み、第二皇女とイチャイチャしていた。そのことは誰かにとやかく言われたくないと思っている可能性は……大いにある。それに結局、公式でイストス帝国へ行っていたとは、発表されていないのだ。それなのにそこに触れたことは……)
「ええ、イストス帝国に滞在していました。予想以上に長い滞在となりましたし、そもそもデビュタントはクロノス王国の方に参加したかったのですが……どうでしたか、デビュタントは?」
そう言って微笑むその表情に、先ほどの影はなくなっている。
(焚火の当たり具合、だったのかしら?)
ともかく問われたので、答えることになる。
「デビュタントは……はい。国王陛下への謁見……挨拶はあっという間で、あまり緊張せずにすみました。むしろそのデビュタントでリアスにプロポーズしてもらえたので……。とても幸せでしたし、一生忘れることのないデビュタントになりました」
「……そうでしたよね。そこでプロポーズされ、婚約された……お互い知り合いだったのですか? それともデビュタントで強烈な一目惚れを?」
カミュ第二王子は当然だが池ドボン事件を知らない。そこで軽くその事件について話し、二年前ぐらいからリアスとは交流があったと話すことになる。
「なるほど。そうだったのですね。そうやって何度か会ううちに愛を育んだと。……そうですよね。想っているだけではダメなんだ……。ちゃんと行動しないといけない」
そう言うとカミュ第二王子は、なんとも寂しげな表情になる。
(第二皇女と何か上手く行っていないのかしら)
そこで気が付く。大好きな相手と、カミュ第二王子は今、離れ離れなのだ。本当は帝国から戻りたくなかったはず。
(ゲームの力はここでカミュ第二王子と悪役令嬢に何か起きればと思っているのかもしれないが。彼も私もそれぞれ愛する人がいる。何も起きるはずがないのだ!)
「今宵、ここで僕と一晩過ごしたことが、社交界で噂になったら……君とレイノルズ侯爵令息の婚約は……壊れてしまうでしょうか?」
お読みいただき、ありがとうございます!
星空の下で野宿……ではなくグランピングはしてみたいなぁ~
もう1話公開します!























































