全力で
デビュタントのエスコートの件。
美青年リアスの提案を両親に話すと……。
「なるほど。レイノルズ侯爵令息のその提案は実に理にかなっている。実力を見た上で、アドリアナではなく、我々にジャッジさせるとは、よく考えた。結局、本人がこの令息にエスコートして欲しいとなっても、最終的な決断は家長が行うことになる。ゆえにこの提案の方法でアドリアナのエスコート役を決めるのは賛成だ。週末の日曜日、四人を公爵邸に招待しようではないか。夕食会とプレデビュタントにしよう。さすがにデビュタントの白のドレスを着るわけにはいかないが、とっておきを着て、お迎えしてあげなさい」
父親は大喜びで、この提案を受け入れた。
翌日、登校する馬車で日曜日に夕食会とプレデビュタントはどうかと話すと……。
「父君の了承をとってくれて、ありがとう、サンフォード公爵令嬢。日曜日、きちんと正装してお邪魔させていただくよ」
「チャンスをいただけて嬉しいです! マイ・ロードのご両親のお眼鏡にかなうよう、精一杯努力します!」
美青年リアスとアンバーは快諾だった。
その一方でジャスパーとセーブルは……。
「つ、次の日曜日!? れ、練習する時間がないじゃないか。やばいよ。俺、絶対失敗する気がする!」
「テールコートの仕立てが間に合わないかもしれない。今持っているテールコート、きついんだよな。最近、さらに筋肉がついたからさ……」
そう言って二人は青ざめるが、だからと言って……。
「辞退!? するわけがない!」
「敵前逃亡なんて、騎士の恥だ! たとえサイズが合わないテールコートでも、自分は参加するぞ!」
「さすがにサイズが合わないなら無理をしない方がいいと思うけど……」
「リアス、お前、随分と生意気になったよな。昔はワンワン泣いていたのに!」
セーブルの一言に、これには一触即発かと思ったが。
「君たちが僕をいじめたから、サンフォード公爵令嬢に出会えた。僕が弱虫で泣き虫だったから、サンフォード公爵令嬢は一番弟子にしてくれたんだ。すべてはこうなる運命のための試練だったと思う。過去のワンワン泣いていた僕、それも僕なんだ。全部含めて、今がある。だからいくら過去の僕をバカにして挑発しても……その手には乗らないよ」
美青年リアスは見た目も成長したが、精神もかなり強靭になっていた。これを聞いた子分三人は大いに驚く。
「何だよ、リアスだけすっかり大人じゃん!」とジャスパー。
「そんなふうに言われたら、何も言えない」とセーブル。
「いつの間にか僕たちの何歩も先を行っていたのですね」とアンバー。
私はそんな四人にこう伝える。
「日曜日、両親が誰を選ぼうと、恨みっこはなしよ。そこは選ばれた人にちゃんと『良かったね』と言ってあげて。でもそう言えるためには、自分自身が最善を尽くさないといけない。そこが中途半端だと、やりきれなかったことを誰かのせいにして、選ばれた一人を妬む気持ちになってしまうから」
そこで言葉を切り、ジャスパーを見る。
「ジャスパー」
彼はチョコレート色の瞳を大きく見開き「は、はいっ」と頬を上気させて私を見る。
「時間はない、わけじゃないの。あるのよ。あとはいかにうまく使うか、なの。日曜日までは朝練は休んでもいいのよ。ダンスの練習をしたいなら、それに当てればいい。やり切って、やり切って、やり切って。後悔がないようにして挑んで欲しいの」
「師匠……! 俺、そうします! 朝練は欠席で、代わりにダンスの練習、させてもらいます!」
「ええ、それで構わないわ」
次にセーブルを見る。
「テールコートの仕立てのスケジュールは、自分自身ではどうにもできないわよね。勿論、お金を追加で払えば、ある程度は対応できるかもしれない。でもお針子さんたちも無茶をさせるのは可哀想だわ。それに本当のデビュタントではなく、プレデビュタントなのだから。無理をさせるまでもないと思うの。お父様にも話しておくから、テールコートを着て来なくてもいいわ。サイズを気にしていたら、全力を出し切れないでしょう?」
「マスター……! 確かにそうです。ビリッとするんじゃないかと思ったら、集中できないと思います。ちゃんとサイズのあうスーツを着て行きます! ありがとうございます!」
セーブルが深々と頭を下げ、私は大切なことを付け加える。
「今後のために。自分のサイズにあった衣装はちゃんと用意しておかないと。自分の筋肉の付き具合も加味して、少し大きめのサイズをオーダーしておくとか、工夫をするのよ」
「そうですね。テールコートは正装だし、急に必要になる可能性はゼロではない。ちゃんと考えて、オーダーするようにします!」
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モブ男子たちの負けられない戦いが始まる!
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