爆弾投下
ヒロインであるマーガレットが、美青年リアスのことを、あのローズクォーツのような瞳で見た時。
複雑な感情が渦巻いた。
リアスは泣き虫モブ令息であり、そんな彼を励まし、彼自身も頑張り、今があるのだ。私にとっては弟のようであり、弟子であり、友であり、仲間。
恋愛脳のマーガレットの視線にさらされる=ロックオンされると危機を感じ、怒りと悲しみと焦燥など、いろいろな感情が瞬時に駈け巡り、めまいがしそうだった。
(クラスだって違うの。ヒロインであるマーガレットとは絶対に関わりたくないわ!)
それはもう悪役令嬢の本能で、ヒロインを回避したくなっていた。でもそんなふうに慌てることになったのはこの日だけ。
同じ学院に通っているが、クラスが違うだけで、ヒロインであるマーガレットはもちろん、カミュ第二王子他の攻略対象とも、まったく接点を持たずに済んでいたのだ。
そこに安堵したのも束の間。
学院生活が始まり、二週間が過ぎたこの日の昼休み、カフェテリアで昼食を終え、予鈴まで寛ぎの時間となるはずのまさにその時、ジャスパーが爆弾を投下した。
「六月にデビュタントがある。これは令嬢のためのイベントで、男は関係ないと言えば、関係ない。だがデビュタントに行く令嬢のエスコートを任せられたら、それはもう当日までのカウントダウンが始まる」
そこでジャスパーがゆっくり、美青年リアス、セーブル、アンバーの顔を見て問いかける。
「デビュタントに予定がある者は?」
全員、首を振る。
「俺も予定はない」とジャスパーは言うと、私を見た。
「で、師……サンフォード公爵令嬢は、デビュタントのエスコート、決まっているのか?」
「え、多分、従兄にでも頼むと思うわ……」
本来のゲームの進行では、そのデビュタント、婚約者であるカミュ第二王子にエスコートされ、参加している。だが婚約していないので、正直、誰がエスコートするのか……決まっていない。ただ二人の兄が私のエスコートのために家に戻ることはなく、おそらく三歳上の従兄に白羽の矢が立つのではと思えたので、そう答えたのだけど。
「頼むと思う……つまりまだ決まっていないと」
ジャスパーがチョコレート色の瞳で射貫くように見るので驚きながら「え、ええ、そうよ」とたじろいでしまう。だが次の瞬間、ジャスパーはニカッと笑顔になり、こんなことを言い出す。
「ならサンフォード公爵令嬢、俺がエスコートするよ! つい最近、テールコートも新調したし、ダンスの練習もしているんだ」
「それを言うなら僕は三歳の頃からダンスの練習をしています。完璧なダンスをデビュタントで披露したいなら、僕を選ぶべきでしょう」
そう主張するのはアンバー。まさか三歳からダンスを習っているとは驚きで、彼の意外な特技を知ることになったが。
「ダンスが目的なら、エスコートは自分がする。アンバーは会場に着いたマスター、いやサンフォード公爵令嬢とダンスだけすればいいだろう?」
セーブルが真剣な表情でそんなプランを提案すると、アンバーが「そんなふざけた話、聞いたことがありません!」となり、「おい、お前ら、俺のことを忘れていないか!」とジャスパーが食らいつく。
子分三人のこんなところは、三年前から変わらない。
「三人とも、ここは学院のカフェテリア。いつもの公園ではないのだから、そんなふうに騒ぐのは、やめた方がいい」
冷静に三人を宥めるのは美青年リアス。
本当に。三年前はリアスがこの三人に泣かされていたのだけど……それが夢のように思えてしまう。
「僕はサンフォード公爵令嬢と一番関係が長く、しかも一番弟子。ここは僕がエスコートして最初のダンスを踊るのが当然に思えるけど……」
リアスがしれっとそう言うと、三人の声が揃う。
「「「なにーっ」」」
「その反発が出ると思ったよ。ここは公平にサンフォード公爵令嬢にジャッジしてもらおう」
「!? 何を言っているの、レイノルズ侯爵令息!」
「この反応も想定済みだから、こうするのはどう?」
美青年リアスは、いつこのプランを考えたのかと思ったけれど、でもみんなが「その案だったら……」と納得するものを提案した。それはこれ。
「サンフォード公爵令嬢にとって、デビュタントは大切なセレモニーだ。そのエスコートというのは大役であり、決してくじ引きやじゃんけんで決めていいことではないし、武術の腕で競うものでもない。ちゃんとエスコートができるのか。きちんとダンスをできるのか。そこが重要だよね。だから実際にエスコートをして、ダンスを一曲踊り、それをサンフォード公爵令嬢のご両親に見ていただくんだ。そして四人の中から、娘さんのエスコート役に相応しいと思う一人を、ご両親に選んでもらう。どう、これなら公平だよね?」
お読みいただきありがとうございます!
いつまでもお子ちゃまな三人組
すっかりお兄さんのリアス!
本日もう一話いつもの時間に公開しますー!























































