タッ、タッ、タッと軽快な足音が
クロノス王立学院のA組には、攻略対象三人とヒロイン、そして悪役令嬢の主要キャストが集結するはずだった。だがそもそも悪役令嬢である私、アドリアナは、カミュ第二王子と婚約をしていない! それどころかカミュ第二王子は、隣国の第二皇女と婚約してしまったのだ。
私は何もしていない……いや山猿令嬢になろうとして、肝心のカミュ第二王子には効果なしだった。ただ国王陛下夫妻には多少なりとも効果ありだったようで、早々に婚約者候補のリストから外されたのだと思う。そして今、クロノス王立学院に入学して、同じクラスにならないで済んだ……!
どうやらシナリオの進行は狂い始め、悪役令嬢アドリアナは、お役御免になったのでは!? このまま無事学院を卒業できれば、逃げ切れることになる。
(死なずに済むわ、私……!)
そんなことを思いながら、B組を目指し、廊下を歩ていた。
「くそーっ、昼休みは一緒だからな! 絶対に、待っていろよ!」
「レッドシーク伯爵令息、その言葉遣い! ちゃんとしないと昼休み、置いていくわよ?」
「! わ、分かりました、師……サンフォード公爵令嬢」
C組のジャスパーと別れ、B組に向かい、美青年リアスにエスコートされ、セーブルが先頭で、アンバーが私たちの後ろに続く形で歩き出す。
その時だった。
タッ、タッ、タッと軽快な足音が聞こえる。
それは前世だったら気にしないことだが、ここは違う。貴族であれば、特に令嬢であれば、優雅に歩くのが基本。それなのにこんなふうに駆け足をする令嬢、一人だけ思い当たる。
「!」
フローラルな香りが鼻先をかすめた。
綺麗にウェーブしたストロベリーブロンドが揺れ、大きなバストを包んだブラウスが、ゆっさゆっさと上下している。
(童顔で小顔で小柄なのに、胸はビックなこの令嬢は間違いないわ!)
「わ~、間に合いました~! 遅刻かと思ったけど、大丈夫ね!」
ローズクォーツのような瞳をキラキラさせ、天然ドジっ子で、攻略対象の男子の心をメロメロにしていくヒロイン男爵令嬢マーガレット・ザックラインだ!
「わぁ……すごくハンサムな人がいる……! プラチナブロンドにエメラルドのような瞳で、王子様みたい……!」
今の独り言で理解する。ヒロインであるマーガレットは攻略対象としてカミュ第二王子を選んだ。まさにこのシーンが、ゲーム画面では『ついに攻略対象の姿を確認できました。三人いるあなたの未来の婚約者。誰を選びますか?』となり、三人の攻略対象の名前が選択式で表示されるのだ。そして選んだ攻略対象に合わせ、マーガレットのセリフも変わっていた。そしてさっき口にしたセリフはまさにカミュ第二王子を選んだ時のセリフだった。
このセリフがゴングとなり、マーガレットとアドリアナは火花を散らすことになるのだけど……。
私は幸いカミュ第二王子とは婚約していない。ゆえにマーガレットが誰を選ぼうが関係なかった。
(どうぞ隣国の第二皇女と火花を散らしてちょうだい)
そう思い、視線をマーガレットから逸らそうとした時。
彼女自身、教室の中へと足を踏み出していたのに。
立ち止まり、こちらを見たのだ……!
私のことはサラッと見て、その視線は――。
(な、リアスのことを見ている!?)
なんだか頭に血が上ったが、マーガレットはすぐに教室へ視線を戻し、ストロベリーブロンドを揺らして中へ入っていく。
「サンフォード公爵令嬢、どうしたの? 教室、入らないの?」
美青年リアスが私の耳元でささやくので、心臓が止まりそうになる。
「ち、近いわ、レイノルズ侯爵令息!」
「あ、ごめん……。サンフォード公爵令嬢から甘い香りがしたから、つい……。香水、変えたよね。バニラの香り」
そう言いながら美青年リアスの顔がさらに近づき、私は鼓動はいきなりフルスロットルになった。
「サンフォード公爵令嬢、ここに座ろう!」
先に教室に入っていたセーブルの声がけと、後ろにいたアンバーの「もたもたしていると始業のベルが鳴ります!」の言葉に、私も美青年リアスも動くことになる。そしてまさに席に着いたタイミングで「リーン、ゴーン」と始業のベルが鳴った。
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ヒロインも登場し、乙女ゲームのメンバーが揃う!
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