ついに学院へ入学
クロノス王立学院。
初代建国王が創立した歴史ある名門校で、王族を始めとした高位貴族が通っている。創立時のモットーで「性別身分を問わず学びの機会を」となっているものの。学費がすこぶる高い。
昔は違っていたという。だが王族が通っているということで、暗殺者が学院に現れたのだ。そこからセキュリティを強化することで、学費が値上がっていく。そうなると平民や爵位が低い貴族、資産が乏しい貴族は入学しなくなり、自然と高位貴族の生徒が増える。
高位貴族の生徒が多く通うとなると、高いクオリティが求められてしまう。例えばお茶会の授業であれば、使うティーセットも一流品を!となるわけだ。さらに学院の設備も、みずぼらしかったり、安物の絵画や花瓶が飾られていては、本質を見極める力が落ちると父兄からクレームが入ってしまう。
そうなると学院としては、建物から設備、授業に使う教材から教師に至るまで一流で揃える必要が出てくる。必然的に学費も上がり、入学できる生徒は限られるわけだ。
そんなクロノス王立学院に、乙女ゲーム『碧色のセレナーデ』の主要キャストが集結することになる。
そう、ヒロイン、攻略対象の男子三人、悪役令嬢は皆、この学院に入学するのだ。しかもクラスは三クラスしかない。そして主要キャスト全員が、同じクラス、A組になる……!
そこはもう乙女ゲームの設定として、そうしないと話が進まないということなのだろうけど、事情としては理解できる。
ヒロインの攻略対象となるカミュ第二王子、宰相の息子、公爵家の令息。この三人はそもそもご学友なのだ。学院入学以前に、カミュ第二王子の友人になるべく王宮に招かれている。王家として第二王子の友人として相応しいと選ばれた二人が、学院入学で別のクラスになるわけがない! ゆえにヒロインの攻略対象が同じクラスになるのは自明の理。そしてそのクラスにヒロインがいるのも必然だった。そうしないと始まる恋も始められない。さらにそこに悪役令嬢がいるのは……舞台装置だから……というのは大人の事情。表向きの理由はカミュ第二王子の婚約者であるため、学院が配慮した結果だと思う。
そんな前提が前世でプレイしたゲームではあったわけなのだけど。カミュ第二王子は悪役令嬢であるアドリアナとは婚約していない。そうなると今回、一緒のクラスになるのかしら?という疑問が湧く。
「お、あの掲示板にクラス分けが書かれているぞ!」
学院に到着し、エントランスホールに入ると、中央に掲示板が設置されている。そこにA組、B組、C組のそれぞれのクラスの生徒の名前が貼り出されていた。
ジャスパーは勢いよく駆けて行き、アンバーは「マイ・ロ……サンフォード公爵令嬢、クラス分けを確認して参ります!」と早歩きでジャスパーの後を追う。セーブルは知り合いの令息がいたようで、挨拶をして、美青年リアスは私の横にピッタリと寄り添っていた。
そんな美青年リアスをチラチラと見る女生徒がいる。彼女達がリアスを見る理由は……よく分かってしまう。
(だってリアス、もはや攻略対象並みに素敵だもの。これでモブだなんて、私がプレイヤーなら運営に『攻略対象に昇格してください』と嘆願してしまうわ)
そこでチラリと美青年リアスを見ると、透明感のある美しい碧眼と目が合う。
「レイノルズ侯爵令息、な、なんでそんなにじっと見ているのかしら!?」
「え、見てはいけないの? サンフォード公爵令嬢の制服姿が新鮮で……いくら眺めても、見飽きないんだ」
(!? これはどういうことです!? あ、えーともしかして、毎朝会っているけど、その時は乗馬服でしょう。白シャツに黒のズボンにブーツ。たまにドレスで会うけど、圧倒的に乗馬服のイメージが強い。だからこの制服姿が新鮮なのね!)
「毎日この制服姿を見ていたら、やっぱり乗馬服みたいに飽きるわよ」
「どうかな。この学院の制服、女生徒はブラウスにつけるリボンをタイにもできるんだろう? それに季節の変わり目で着用できる濃紺のワンピースもある。アイボリーのカーディガンも薄手のものと厚手のものがあるって聞いたよ。アレンジできるから、そうは見飽きないと思う」
(驚いたわ! 女生徒の制服のことまで詳しく把握しているなんて! でもリアスの言う通りで、オプションで用意されている服があるので、アレンジは自在なのよね)
「それにたとえ制服に飽きても、サンフォード公爵令嬢と一緒にいて、退屈になることなんてないかな。君の表情の変化を見るのが楽しくて仕方ないから」
そこでニコッとサラサラのブロンドを揺らして微笑む美青年リアスは、さりげなく私の手を持ち上げ、甲へとキスを――。
「クラス分け、見てきたぞ!」
ジャスパーが私と美青年リアスの間に入り、引きはがすようにしながら口を開く。
「ったく、なんで俺だけのけ者なんだよ!」
「ジャスパー以外、同じクラスです。サンフォード公爵令嬢、リアス、セーブル、僕はB組。ジャスパーはC組でした」
(……! 奇跡だわ! 悪役令嬢なのに、攻略対象とヒロインとは、違うクラスになれた……!)
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悪役令嬢フラグ続々と折れていく!
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