大丈夫よ
ザバーッと顔を水面に出し、そのまま美少年リアスの肩に腕を回し、池の縁の方へと泳いでいく。リアスが気絶しており、暴れないでいてくれたので、救出はスムーズだった。
「お、おい、大丈夫なのか」
「い、生きているよな?」
「池に沈んでわずかだ。大丈夫なはずです」
ジャスパー、セーブル、アンバーが口々にそんなことを言いながら、私を追って泳いでいるが、私が答えることはない。なぜなら美少年リアスを運びながら泳いでいるのだ。ある程度鍛えている私でも、これは呼吸が上がる。
ようやく浅い場所に到達したので、私は立ち上がる。
「お嬢様」
「ヒューズ卿、そこで待機して。あなたまで濡れる必要はないわ。この後、レイノルズ侯爵令息を病院へ運ぶ必要があるのだから」
「……承知しました」
侍女はハラハラした様子だが、池のそばでのティータイム。もしもに備え持参していたタオルを用意して待ってくれている。そこはさすが祖父のところへ同行した侍女だけあった。
「なあ、俺が担ぐよ」
ジャスパーも池の浅瀬に到着し、立ち上がると、私に声をかけてくれた。セーブルもアンバーも浅瀬に到着している。
「それなら自分が」「僕が」
セーブルもアンバーもそう言いながら、立ち上がるが、私は既に美少年リアスを抱き上げる準備が出来ていた。
「え……」
「まさかお姫様抱っこをするのか!?」
「年齢的には同い年、体格は……リアスの方がわずかに身長があるけど、体重はそこまで重くないはず。でもいけるのですか!?」
ジャスパー、セーブル、アンバーが心配しているが、私はちゃんとコツを掴んでいる。体格差はそこまでなく、私は鍛えているし、脚力で持ち上げ、前腕と腰回りの筋肉で支えれば、ヒューズ卿のところまでは運べる。
「すげぇ……」
「信じられない」
「なるほど。腕だけではなく、分散させているのですか。考えましたね」
ジャスパー、セーブル、アンバーが驚き、賞賛する中、私は美少年リアスを運びきり、ヒューズ卿の前で下ろした。
「お嬢様、ご立派です。後はお任せください」
「ええ、頼んだわよ」
「お嬢様!」
一気に力が抜け、私はへたり込んだ。
◇
美少年リアスはヒューズ卿の処置のおかげですぐに水を吐き、呼吸を回復し、意識も戻った。その後、病院に運び、診察を受けたがどこも問題なし。
だが問題ありなのは私の方!
なぜ池に落ちたのか。しかも戦争の英雄の次男が病院に運ばれ、法務大臣の次男、騎士団の副団長の三男、クロノス王立アカデミーの学長の嫡男も池に落ちているのだ。これはもう根掘り葉掘り聞かれる。どう言い訳しようかと思ったら……。
「俺たち、つまりはリアス、セーブル、アンバーの四人で、池で遊んでいたんです。そうしたらそこへ公爵令嬢が現れて……。綺麗な令嬢が現れたと俺たち、舞い上がってしまったんです。それで彼女が池の縁に腰掛けて、水に触れているのを見て、無理矢理腕を引っ張ってしまって……。ごめんなさい、本当に申し訳ありません」
ジャスパーは私がアドリアナ・セレネ・サンフォードであり、公爵令嬢であると分かると、こんな証言をしてくれたのだ。これであれば私がこれまでも美少年リアスと会っていたことが両親にバレないで済む!
しかも……。
「リアスは今年、初めて池遊びに参加したんです。泳ぎはまだ得意ではなくて……。池に落ちた公爵令嬢を助けようとして、無茶をしたんです。それでリアスが気絶することになりましたが……。でもとても勇敢でした。それに変にちょっかいを出す僕たちを注意したのがリアスなんです。彼は……とても立派でした」
アンバーはリアスの勇気を称えたのだ。そしてセーブルは……。
「夏の暑さに浮かれていたというか、本当に申し訳ないことをしました。サンフォード公爵令嬢が池に落ちたのは自分らのせいです。そしてリアスが溺れたのも……自分らが余計なことをしたから。本当に申し訳ありません」
そう謝罪の言葉を言い、こう付け加えた。
「自分は……父親が騎士団で副団長をしているのに。女性や子ども、老人といった弱者に親切にするように言われているのにも関わらず、今回は誠に申し訳ないことをしました」
ジャスパーとアンバーも謝罪してくれたが、セーブルは自身の立場を踏まえ、さらにお詫びの言葉を重ねたのだ。こうなると両親も「怪我人もなくすみましたから……。でも以後、このようなことが起きないよう、注意してください」と応じ、大事にはしなかった。
そして美少年リアスはセーブルとはまた別の意味で私に頭を下げてくれたのだ。
「サンフォード公爵令嬢、ごめんなさい! 泳いだこともないのに、後先考えずに池に飛び込み、君を助けるはずが、逆に助けられることになるなんて……。本当に不甲斐ない。しかもそのせいでご両親から注意されたよね!? もう二度とこんなことにならないよう、泳ぎの特訓をするよ! ヒューズ卿に教えてもらう……!」
そう言ってあの透明感のある美しい碧眼から涙をポロポロこぼされたら、「大丈夫、そんなに大袈裟にならないで」と励ましたくなる。
「それにあの三人も、ものすごく反省しているし、私が両親に叱られないよう、上手いこと言ってくれたわ。だから大丈夫よ」
「大丈夫よ」と言ってしまったが、全然大丈夫ではないことに、この後私は気づくことになる。
お読みいただきありがとうございます!
はたして何が大丈夫ではないのか!?
続きは明日、更新します=3
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