ロイヤルガーデンパーティー
王家主催のお茶会、それはロイヤルガーデンパーティーと言われ、年に数回行われている。ホストは国王陛下であるが、それとは別で王族の誰かが毎回主役になっていた。
この主役への挨拶こそが、お茶会のメイン行事。そして今回は十二歳になった第二王子が主役なのだ。間違いなくこれが“プレ婚約者探し”であると分かるので、参加する令嬢のオシャレは特に念入りになる。
「髪は……そう、ハーフアップでいいわ。髪飾りはこのパールのついたリボンを考えていたのだけど……このラリエットでもいいわよね?」
「はい、奥様、そちらのラリエットでよろしいかと。そのラリエットとお揃いのリング付きブレスレットもございます」
「いいわね。ラリエットにしてリング付きのブレスレットもつけましょう!」
アクア色のエンパイアドレスを着た私は、もう着せ替え人形状態。あらかじめ着るドレス、身に着ける宝飾品は決められていた。だが当日になって「やはりこっちがいいかしら?」「ルージュはこの色の方がいいかしら?」と母親は私をよりレディに見せようと悩み始める。
お茶会は14時半から開催だが、私の準備は朝からスタートしていた。そして一度は左に束ねていた髪型は、出発直前にハーフアップとなり、髪飾りから宝飾品もチェンジすることになった。
そんなギリギリまで、娘を飾り立てる理由。それはこのお茶会が“プレ婚約者探し”であり、公爵夫人である母親としては、自分の娘を王家へ嫁がせたいという気持ちがあるからだろう。
何よりここは乙女ゲームの世界で、私は悪役令嬢のアドリアナなのだ。ゲームの正しい流れでは、第二王子と婚約する。母親が頑張るのはこのゲームのシナリオに後押しされている部分も大きいと思う。
「まあ、アドリアナ! とっても素敵よ。妖精のお姫様みたいだわ!」
「うん、これは素晴らしい! まさに公爵令嬢だ。出会った頃のパルシェのように、初々しくとても可愛らしい」
「ふふ、あなたったら! アドリアナ、あとはマナーや礼儀作法で習った通りにするのよ。何か起きても使用人に任せて、アドリアナはゆったりと構えていればいいのよ」
両親から褒められ、そして大人しくするように言われた私は、完璧な笑顔で「はい、分かりました!」と答えることになった。
「ではお嬢様、馬車へ」
侍女に促され、私は馬車へ乗り込む。
両親も付き添うが、馬車は別々。
お茶会の会場でも子供たちとは少し離れた場所で見守ることになる。
(西洋社会は子どもの自立性を重視するのよね。いつまでも庇護する可愛い子どもでいることより、自立することを求める)
この見守りはするが、距離を置く風習のおかげで、私は山猿令嬢になるための演出もできるというもの。
そう。実はこっそり、いろいろと準備していた。
蛇に見えるロープとか、前世では通称“ひっつき虫”と呼ばれるオナモミ、それに珍しい鳥の羽根などだ。蛇に見えるロープはテーブルの下にでも転がしておき、「あ、蛇がいる!」と私が大騒ぎすればいい。しかもその蛇に見立てたロープを「えい、やー」と大立ち回りをして退治、でも最終的にロープと分かり、「この公爵令嬢はまるで山猿のように大騒ぎをして、何をしているんだ!?」という状況を生み出すつもりでいた。
こういった他愛のない物を使った悪戯、両親が子どもにべったり付き添っていては、上手く使うことはできない。だが侍女に持たせ、着席してからこっそり袋を受け取り、頃合いを見て、いろいろやれば……。
(間違いなく、私は山猿令嬢になれるわ!)
その後、両親を落胆させ、怒らせることになるだろう。
(それでも婚約者候補のリストからは、漏れなく落選するはずよ!)
ということで朝からのオシャレにも耐え、私はほくそ笑みそうになるのを堪えながら、お茶会の会場へと向かう。
公爵邸は宮殿から近い場所にあるので、あっという間に馬車は宮殿のメインエントランスへ到着。そこで宮殿職員に迎えられ、メイドによりお茶会が開かれる庭園へ案内される。
芝生は綺麗に整えられ、動物や幾何学的な造形のトピアリーも、完璧な形で皆をお出迎え。花壇の花はこの日に合わせたかのようにどれも満開に咲き誇り、植木にはリボンが飾られ、バルーンや旗などもひらめき、まるでフェスティバルが行われるかのように華やか。
いくつも用意されたテーブルには白のクロスが広げられ、すでに素敵な花が飾られた花瓶とカトラリーや銀食器が並べられていた。その一角には臨時の厨房が設けられ、そこでは簡易の竈で火がおこされ、紅茶に使うお湯が沸かされ、三段スタンドの盛り付けが進んでいる。
保護者である両親たちは、そこから離れた席で、談笑の最中。子どもたちは侍女や従者と共に、子ども同士で挨拶を始めていた。私もそれに交じり、そつなく社交を行う。山猿になるのは、ホストである国王陛下と共に第二王子が登場してからでいい。
ということでおめかしした令嬢たちと談笑していると、「チリン、チリン、チリン」とベルの音がする。侍従長のこの合図で、遂に国王陛下夫妻と第二王子が会場に登場だ。
(あれが第二王子ね。……すごいわ。さすがヒロインの攻略対象。美少年ね……!)
お読みいただき、ありがとうございます!
次話で第二王子の全貌が明らかに!
ということでもう一話、更新します〜























































