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choice0S-1  作者: 陽芹 孝介
藤崎美夢
9/13

そう言うと兄はスーツのジャケットのうちポケットから、2枚のチケットを取り出した。


私はそのチケットを見て言った。

「何?それ…」


「招待券だよ…。『豪華クルーザー!一週間の夢の旅』。貰ったんだけど…俺、仕事で行けないからさ…」


兄は私にチケットを手渡した。

「葵と行ってこいよ」


私は少し高揚したが、兄が葵の名前を出したので少し冷めた。

「私は嬉しいんだけど…葵、行くかな?…お兄ちゃん知ってるでしょ…葵、こういうの興味無いの…」


兄は言った。

「いいから、誘ってみ…葵のやつ、最近退屈そうだぞ」


「どうして?」


「捜査協力は相変わらず手伝ってくれて、助かってんだけど……慣れちまったのか、少し飽きた様子なんだよ…」


私は兄の言いたい事が、だいたいわかった。

「で、これに連れって行って、気分転換させろと?」


「流石は俺の妹…察しがいい」


「あのねぇ…私は、葵の保護者じゃないのっ!」


「まぁ、そう言うなよ…せっかくの夏休みだぜ…」


私には願ってもないチケットだったが、葵が素直に行くとは思えなかった。それでも、葵以外の人間と旅行する気も無いので、誘ってみる事にした。


「わかった…葵、誘ってみる…。ありがとう、お兄ちゃん」


「心配すんな、葵は行くよ…」


兄が何を根拠にして、葵が行くと思っているのか、わからなかったが…私は素直に兄の好意を受け取った。






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