②
「順平っ!カクテル持ってきてよ」
またか……。
この島にきて結城愛美には度々このような、使いっぱしりにされる。
「わかったっす…ちょっと待ってて下さい」
はっきり断らない俺にも問題があったかも知れないけど、日増に扱いが酷くなっている様な気がする。
俺は溜め息をつきながら、厨房に向かった。
「これじゃあ…ここに来る前と変わらないな…」
しかし、俺に親切に接してくれてる人もいる。愛美の友人、岸川容子と、葵の幼馴染みの藤崎美夢だ。
愛美とは違い、俺の事をずさんな扱いは決してしない。特に容子は愛美の友人とは思えない程、おしとやかで…親切だ。
「何で愛美さんと、容子さんは友達なんだろ?」
俺はブツブツ言いながら厨房に入った。
厨房に入ると船長の山村崇が、昼食の準備をしていた。
山村が言った。
「どうしました?小林様…」
「あっ、船長……すみませんが、適当にカクテルを3つ…作って貰えないっすか?」
山村は笑顔で答えてくれた。
「承りました…少々お待ち下さい…」
山村も親切な人だった。もてなす側なので当然なのだが、彼の雰囲気には、好感が持てた。
よくよく考えれば愛美以外は、とても好感が持てる。
あの有名な九条でさえ、好感を持てるのに、俺は愛美はどうしても苦手だった。
俺は山村からカクテルを受けとり、愛美らが待つプールへ向かった。
「皆、親切だなぁ…ずっとこの島にいたいよ…」
確かに愛美は苦手だが、時間が経てば経つほど、この島に俺は執着するようになった。




