第6章 『王都帰還 ― 英雄と誤解と少しの静けさ ―』
三日間の行軍を経て、勇者マダマ一行は王都へと戻った。
門の前では、兵士たちが整列して待ち構えていた。
「勇者様だ!」「魔王軍の拠点を落とされた!」
歓声が波のように広がる。
疲労の色が濃いマダマは、それでも笑みを浮かべて手を上げた。
その姿に、人々は一層の歓声を上げた。
イノリは静かに祈りを捧げ、オレガは無言のまま敬礼する。
オモイは小さくため息をついた。
「……帰ってきたわね。地味に死にかけた気分よ。」
「地味に、じゃねぇな。」マダマが苦笑した。
> ナレーション:
> 「彼らは凱旋した。
> 称賛を受けながら、誤解も受けながら。」
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王の間。
玉座に座る王は、厳粛な面持ちで一行を迎えた。
「よくぞ帰還した、勇者マダマ・エル。そしてその仲間たちよ。」
マダマ:「拠点“カノン遺跡”は制圧しました。犠牲は……ありません。」
「……そうか。見事である。」
王は満足げに頷いたが、次の瞬間――眉をひそめた。
「……なぜ、報告書の余白に“岩が硬かった”とある?」
沈黙。
全員がキルスを見た。
「……いや、ただの感想です。」
「報告書に感想を書くな」
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謁見が終わると、王は小さく微笑んだ。
「勇者よ。
そなたたちの働きは王国の誇りだ。
だが、次が本番だ。――魔王を倒せ。」
マダマ:「……承知しました。」
オレガ:「我ら、必ず果たします。」
イノリ:「神の加護がありますように……。」
オモイ:「フラグっぽい言葉は禁止よ。」
マダマ:「ほんとそれな。」
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謁見の後、王都の空は茜に染まっていた。
街の賑わいが戻り、子どもたちが走り回る。
その中心に立ち、マダマは静かに息を吐いた。
「……勝ったのにな。」
「実感、ねぇよな。」オレガが答える。
「まだ、終わってないから。」イノリが微笑む。
オモイ:「休む時間、ちゃんと取らないとね。」
キルス:「俺、次こそ役に立つから!」
「今までも立ってたよ。ネタ的に。」マダマが笑う。
焚き火のように、短くあたたかい笑いが広がった。
> ナレーション:
> 「勝利の喜びよりも、ただ“生きて帰った”安堵。
> それが、彼らにとって本当の報酬だった。」
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夜。
酒場の窓から、笑い声が漏れていた。
五人は静かにグラスを掲げた。
マダマ:「次は魔王城だ。」
オレガ:「最後の戦い、か。」
イノリ:「必ず、帰りましょう。」
オモイ:「死亡フラグ立てるなってば。」
キルス:「いや、今回はマジで立ったな。」
マダマ:「やめろ!」
笑いながら、全員が同時に飲み干した。
> ナレーション:
> 「こうして勇者マダマ・エル一行は、
> 再び旅立つ準備を整える。
> そして夜が明ける――
> 新しい戦いの幕が、静かに上がろうとしていた。」




