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【白狼の視線】攻略②

  ダンジョンに潜ってから体感一週間が過ぎました。現在は23層にいます。一体何層まで続くのでしょうか……


 え? 食事はどうしているのかって?


 …………二度と聞かないで下さい。良いですね?


 ——吐きながら食べたという事だけは伝えておきます。


 いつまでこの生活が続くのでしょうか……

体力と心が摩耗していってます。しかし、それでも私を食い止めていたのは、お嬢様を想うこの心と、確かに強くなっているという実感でした。


 あれから、累計百体以上はレベル50を超えた魔物を討伐しましたよ。


 ジャイアント・コブラに始まり、レッドサーペント、ブラッディ・バットなど、洞窟に住まう最上級位ハイクラスの魔物達ですね。


 気持ち悪い見た目の魔物ばかりで、正直辟易していましたが、今ではすっかり慣れました。寧ろ、解剖している内にその構造に興味を持ったぐらいです。



 ——ダンジョンに篭ってから、2週間が過ぎた頃には、私の心は完全に折れていました。


 現在の階層は56階。


 もう、ずっと、まともに日光を浴びていません。ちゃんとした栄養のある料理を食べていません。心と体が限界に近付きつつあります。


「……お嬢様に会いたい」


 ふとした時に、呪詛を吐く様に呟く、この言葉が、私の意識を覚醒させます。


 ——レベルだけは、無情にも上がっていく感覚がありました。




 ——そして、遂に三週間と二日が過ぎた今日この日。

 この頃には、既にお嬢様の事を考える余裕すら無く、ひたすら黙々と魔物を処して行きました。


 そして、壁に阻まれ、立ち止まった私の前には、一際大きな扉がありました。『86階層』。ここが、ダンジョンの奥地みたいです。

 この扉の先には、恐らくダンジョンのボスがいるのでしょう。それを倒せば、無事ダンジョンを制覇した事になります。


 ——あれ、すごく今更ですけど……私って、レベル上げに来たのであって、ダンジョン攻略をしに来た訳では無いですよね……?


 もう、何百、何千体、魔物を倒したか分かりません。多分、レベル60を超えた魔物も、今では苦なく倒せる様になりました。


 かなり、レベルが上がったのでは……?

 まぁ、ここまで来たらボスも倒して行きますけどね。果たして、この先には何が待ち構えているのでしょうか。


 期待半分、憂鬱半分で、その扉に手を掛け、開けて行きます。


 ——ぎしぎし、と扉が軋む音が鳴り響き、中に入ると、そこは底無しの暗闇が拡がっていました。


「……ナニカ、いますね」


 気配察知には何も引っ掛かっていません。しかし、私は第六感ともいえる、本能的な何かで、その気配を感じ取りました。


 そして——私が一歩を踏み出したその時。


 しゅっ、と空を切る音と共に、斬撃が降って来ました。それを、寸での所で後ろに回避します。


 そこで、私は背中が岩の様な、硬い何かにぶつかりました。


 ——先の扉です。どうやら、いつの間にか閉められてしまった様でした。


 そして、扉が閉まった事で、外に刺していた僅かな松明の明かりも消え去り、完全な静寂と、暗闇だけが残されます。


 ……どうやら、閉じ込められたみたいです。と、冷静に状況を分析した後、私は俯瞰的に導き出したその結論を口にしました。


「……これは、つまり。外に出たくば、この敵を倒して見せろ——という事ですよね」

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