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やり直し公女の魔導革命 〜処刑された悪役令嬢は滅びる家門を立てなおす〜 遠慮?自重?そんなことより魔導具です!  作者: 二八乃端月


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第92話 求人CM、そしてトラブル

 


 ☆



 私はあまりの恥ずかしさに、羽織っていたポンチョで頭を隠す。


 けれどその間も動画は容赦なく流れ続け、映像の中の私は精いっぱいの愛嬌を振りまいていた。



『今、エインズワース魔導具工房では、私たちと一緒に魔導具を作って下さる方を、大、大、大募集中です!』


『やる気があれば、年齢、経験、性別は一切不問。初心者の方も、ベテランの職人が優しく丁寧に一から仕事を教えます』


『勤務地は、オウルアイズ侯爵領、またはエインズワース伯爵領で、希望される方は食事つきの従業員専用寮に入って頂くこともできます』


『詳しくは、工房街のエインズワース魔導具工房・王都工房まで!』


『私たちと一緒に、魔導具で未来をつくりましょう! たくさんの応募、待ってます!!』



 スクリーンの中の私は笑顔で手を振り、そこで映像は終わった。




 次の瞬間––––


「「おおおおーー!!!!」」


 あたりに響き渡る歓声と拍手。


 わざわざうちのCMを見に来たと思しき人々は、興奮した様子で今の動画について語り合っていた。


「いやあ、すごかったな!」


「学園で噂になってるから見に来たけど、予想をはるかに越えてたよ」


「あの空を飛んでるところとか、どうやったのかしら?」


「こないだの事件の時、レティシア様が空を飛んだって話もあったから、それと同じじゃないかしら」


 ––––残念。


 空撮はカメラを吊り下げたココとメルを、私が自分の方に誘導しながら撮りました。


「いやしかし、本当に素晴らしいな!」


「ああ、どんな技術なのか想像もつかないよ」


「違えよ。レティシア嬢だよ! 新聞に絵が載ったことがあったけど、こうして観ると絵なんかよりよっぽど可愛いじゃんか」


 ––––はい?!


「うん、まあ分からないではない、かな」


「私、レティシア様のファンなのよね。他にも好きな子いっぱいいるし、ファンクラブ作ろうかしら」


「あ、じゃあ私も入る!」


「俺も入るぜ」


「あ、じゃあ僕も」


「特別会員として、妹さんを溺愛してるヒューバート君を誘って……」


「それグッドアイデア! 早速、会員証を作りましょう!!」


 ––––ええええええええ?!


 なんか、とんでもないことになってるんですけど!?


 しかも、ヒュー兄さまを巻き込んで!!




 私が頭からポンチョを被ったまま恐れおののいていると、傍らのテオが、ポン、と肩を叩いた。


「人気者だな、レティ」


「もう、人ごとだと思って!」


「特別会員が君の兄貴なら、俺は名誉会員になるよ」


「はい?」


「だから、さっきのやつ、俺にもくれないか?」


「絶っっ対に、あげないっ!!」


 私はテオにそう言い放つと、ぷりぷり怒って、馬車に向かう。


 あの求人CMは、お父さまに頼み込まれて、仕方なく作った動画だ。


 写真のポスターだけでは十分な人が集まらなかったので、ゴドウィン師匠と協力して、音声と同期して画像を連写投影できる映写機をなんとか開発したのだ。


 そして、これまたお父さまやアンナ、お兄さまたちの強い要望で、私が自分で出演する求人CMを作ったのだった。



 ––––不本意な出演で恥ずかしい思いをしてるのに、茶化すなんてひどい!!



「えっ、ちょっと、待ってよレティ!」


 後ろから慌てて追いかけてくるテオ。


「もう今日は、口をきいてあげないっ!!」


 私は振り返ってそう叫ぶと、さっさと馬車に乗り込んだのだった。




 ☆




 翌日、その翌日、さらにその翌日と、テオは使節団の視察と行事があり、私と顔を合わせることがなかった。


 ただ、直筆のお詫びの手紙が連日にわたって届き、彼が真摯に反省しているのは伝わってきた。




 そして四日目。

 オウルアイズ領への見学のため、合流して王都を出発する日。


 出かける準備を終えた私は、机の上に置いてあったプレゼントボックスを手に取った。


「そのプレゼントは、どなたに渡されるのですか?」


 包装が得意な使用人に頼んで包んでもらったプレゼントボックス。


 箱を手にした私に、アンナが尋ねてきた。


 ちなみに彼女は昨日こちらに着いたのだけれど、馬車で五日かかる道のりを馬で二日も短縮して私を追いかけてきていた。


 相変わらず、愛が重い。


 それはともかく、私はアンナを振り返り彼女の問いに答えることにする。


「テオに渡そうと思って」


 そう言った瞬間、顔を顰め露骨に嫌そうな顔をする私の侍女。


「あれにそこまでしなくても……。お嬢さまがわざわざこちらに出向かれただけでも十分感謝するべきでしょうに」


 アンナのテオ嫌いは相変わらずだ。


 私は手元の箱に視線を落とした。


「まあちょっと……。仲直りのしるし、かな」




 思えばあの日、テオは自ら進んでお店の混雑対応を買って出てくれた。


 一国の王子さまが、使節というお客さまの立場で、だ。


 あの時は『茶化された』と思ったけれど、思い返してみるとそういう意図はなかったのかもしれない。


 それなら、なんであんなことを言ったのか。

 そこはよく分からないけれど。


 ともかく、テオはあれから毎日手紙で謝ってくれたし、私も本領への道中、彼と気まずいまま過ごしたくなかった。


 そこで仲直りのしるしに、お手製の実用的な魔導具を贈ることにしたのだ。




「それじゃあ、行きましょうか」


「はいっ、お嬢さま」


 そう言って、アンナと二人、自室を出た時だった。


「お嬢さまっ」


 廊下の向こうの方から声をかけられた。


 振り返ると、執事のブランドンが何やら慌てた様子でこちらに早足で歩いてくる。


 彼は私たちのところまで歩いて来ると、何やらメモらしき紙を私に差し出した。


「お呼び止めして申し訳ありません、お嬢さま。今し方、伯爵領より緊急の魔導通信が参りましたので、ご確認頂きたく」


「……緊急?」


 突然のことに戸惑いながら、メモを受け取り、内容を確認する。






 『緊急

  北部ニテ魔物ノ大群ヲ見ユ

  避難指示発ス

  追加指示乞ウ      ソフィア』








挿絵(By みてみん)



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