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やり直し公女の魔導革命 〜処刑された悪役令嬢は滅びる家門を立てなおす〜 遠慮?自重?そんなことより魔導具です!  作者: 二八乃端月


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第149話 邂逅、そして対決



 ◆



「は?」


 ある宿の屋上から戦場を眺めていた金髪の少女は、その端正な顔を歪めた。


「今の、なに?」


 彼女が問いかけると、背後の暗がりから若い男の声が返ってくる。


「強力な魔力爆発と生体魔力反応の消失を感知しました。我が方のA級個体が撃破されたようです」


「そんなことは見れば分かるわ。今のは『どこから』の『何の』攻撃かと訊いてるの。新手が現れたの?」


「申し訳ございません。突然のことでしたので……」


 その返事に、内心で舌打ちをする少女。


「次の攻撃で確実に捕捉しなさい。できなければ実験農場のブタのエサよ」


「はっ!」


 暗闇から緊張した声が返ってくる。


 少女は憎々しげに呟く。


「貴方たちが自信満々で出してきた魔力投射装置は早々に発見された。仕方なく計画を前倒しすれば、あっという間にA級個体が撃破される。挙げ句、なぜか私まで追われる身になる始末。––––何? 開発局パウークは私の足を引っ張りたいの?」


「……申し訳ございません」


「今回の件、本国に戻ったら陛下に詳しく報告させてもらうわ」


 彼女……この国では『ナターリエ・バジンカ』と名乗っている少女がそう吐き捨てた時だった。


「高密度魔力反応! 南西ですっ!!」


 部下の声に、ナターリエはバッとそちらを振り返った。




 闇の中に浮かぶ、多重魔法陣。

 その先に、眩ゆい光を放つ光球があった。


「あれは……魔法?!」


 ナターリエが叫んだ瞬間、それらの魔法陣が連鎖発動し、光の弾が一条の線となって闇を切り裂く。


 そして、爆発。


「……我が方のA級個体、二体目が撃破されました」


「ちっ」


 ナターリエは今度は音に出して舌打ちすると、腰のホルダーから魔術杖を引き抜いた。


「誰だか知らないけど、これ以上の邪魔は許さないわ」


 彼女は呟き、杖の先端を先ほど魔法陣が出現していた方向に向ける。


「次に攻撃に入った瞬間が貴方の最期よ」




 ☆




「すごい……! 二体目も倒しちゃいました!!」


 感嘆の声をあげるリーネ。


「リーネ、まだ終わってないわ。周りを警戒して」


「は、はいっ!」


 私は感心しきりの友人に警戒を促した。


 さすがの私も、射撃中は周囲への警戒がおざなりになる。


 それに今はなるべく人に見られないように、戦闘の現場から二百mほど離れた邸宅の庭に隠れ、敵から距離をとって射撃していた。


 ココに仕込んだ魔導照準回路の『中距離射撃モード』を起動しているとはいえ、味方の兵士を巻き込まずに一撃で魔物を仕留めるために、かなりの集中を強いられている。


「でもまあ、次で最後ね」


 私は魔導ライフルを構え、右眼に浮かんだ十字の照準を最後の迷宮主級の頭部に重ねた。


 照準回路により拡大された右眼の視界が、しっかりと敵を捉えている。


 引き金を半引きし、加速魔法陣が多重展開される。


 ––––その時だった。


「レティアさんっ! 魔力反応です!!」


「?!」


 直後、目の前に閃光が走り、パリパリと紫電が走った。




 ◆




「……やった?」


 建物の屋上から『雷撃ライトニング』を放ったナターリエは、自身の魔術が着弾した辺りを凝視した。


 パリッ、と雷撃の残滓が地面で爆ぜる。


 が、辺りは暗く、先ほど自らが放った雷撃の光のせいでよく見えない。


 ただ何か、虹色の膜のようなものが波打った気がした。


「…………?」


 その一瞬の間が命取りになった。


 ブン、という音が聞こえた気がした。

 魔法陣が展開される音。


 それは……いや、それらの魔法陣は立て続けに展開され、中心に輝く眩ゆい光弾は、真っ直ぐにナターリエを狙っていた。


 強烈な悪寒。

 冷たく鋭い、殺意の刃。


「ひっ?!」


「失礼っ!!!!」


 ナターリエが悲鳴をあげるのと、部下が彼女に手を伸ばすのは、同時。


 次の瞬間、それまで彼らが立っていた床が爆発した。




 ☆




 私とリーネの前に、うっすらと虹色に輝く防御膜が展開されていた。


 ふよふよと浮かび『自動防御アウト・ディフェンシア』を発動している、ココとメル。


 私は魔導ライフルを構えたまま、その向こう……リーネが指差す先を睨んでいた。


「ナタリー、やっぱり貴女なのね」


 右眼の照準レティクルの中心に捉えた敵の姿。


 そこに見知った顔を確認した私は、彼女が立つ建物に狙いを移し、引き金を半引きする。


 狙いは、足元。

 そのまま引き金を引く。


 タンッ!


 銃口の先から撃ち出され、五つの魔法陣で加速される光弾。


 光の筋は、一直線に狙った場所に伸びる。


 そして、爆発。


 目標の建物の一部が吹き飛ぶ。


 目標付近で魔力を使用した形跡は、ない。

 つまり『彼女』は魔法防御もできず、魔法で飛んで逃げることもできず、あのまま吹き飛んだということだろう。


「うわぁ……」


 絶句するリーネ。


 魔導ライフルの銃口を下ろした私は、彼女の肩にぽん、と手をのせた。


「ありがと、リーネ。ナイスアシスト」


「ええっ?! わ、わたしがですかあ???」


 なぜか顔を引き攣らせる友人。


「魔力を探知して敵の居場所を教えてくれたのは、貴女じゃない。おかげで敵をやっつけられたわ」


 にっこり笑った私に、リーネは引き攣り笑いを返す。


「は、はは……。わたし、ひょっとして共犯ですか?」


 ああ、そうか。


「大丈夫よ。正当防衛だし、あの建物にいた人たちもとっくに逃げてるでしょう。それに今の貴女は私の保護下にあるから、全ての責任は私にあるわ」


「そうですか……」


 はあ、と安堵の息を吐くリーネ。


 友人を安心させたところで、私はあらためて屋根が吹き飛んだ建物に目をやった。


 ……うん。

 なかなかの惨状だ。


(あれで無事な訳がないわよね)


 さすがに瓦礫に埋もれている彼女を自分で探す気にはなれない。


「あとはエリク王子に任せるとして……まずは残りを片付けましょうか」


 私は再び魔導ライフルを構えると、銃口を残る一体の迷宮主級に向けたのだった。




 ☆




「レティア! 大丈夫か?!」


「あっ、えっ???」


 最後の一体を葬り、ココとメルに魔力酔いを調整してもらいながら脱力していた私は、突然背後から声をかけられて飛び上がるほど驚いた。


 振り向いた先にいたのは––––


「セ、セオリク?! なんでこんなところに???」


 頭部布とマスクで顔を隠したパーティーメンバーの男の子だった。


「それはこっちのセリフだ。なんでこんなところにいるんだ」


「あー、ええと……」


 どこか心配するような、責めるような口調のセオリク。

 そんな彼に、どぎまぎする私。


 すると彼は、私が手にしている魔導ライフルに目をやると、さらに厳しい目で私を見つめた。


「戦ったんだな?」


「ええと、その……」


 私が言い訳を考えていると、彼は「はぁ」とため息を吐いた。


「まったく。君って人は……」


 そう言って首を振るセオリク。


 彼はひとしきり私に呆れると、顔を上げてこう言った。


「それで、これからどうするんだ? レティアのことだ。どうせ止めたって聞かないんだろ。だったら俺も一緒に行くよ」



コミカライズ9話が更新されました!


いよいよ宿敵オズウェル公爵との対決のとき。

魔導具裁判の始まりです!

ぜひ見てみて下さい。


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― 新着の感想 ―
[一言] よしっ、一矢報いた! まあ更なる因縁が結ばれた気もするけれど、今のところレティアがやったとバレてはいないからセーフかな この事件の後で報道とかされなければ良いんだけど とりあえず顔バレは不味…
[一言] 更新お疲れ様です。 燃える展開と明確になった『敵』<`ヘ´> 次回も楽しみにしています。
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