行く末②
火の手があがる、王都。崩れ落ちる家々。
かつて栄華を極めたその地も、今となっては廃墟へと向かう他に道はない。
ジークによる蹂躙。
そして。
「これから先。この地は我らエルフのモノ」
「人間共の時代は終わった」
「勇者も魔王も無き今。次に世界をおさめるは、人ではなく我らエルフなのだから」
「ジークという者には感謝せねば。このような混沌。それをもたらしてくれたのだからな」
報に触れ、機に乗じ、国へと攻め入ったエルフの国【エルフェイム】による蹂躙。
その二つの蹂躙に晒されて。
逃げ惑う、生き残りし人々。
それを嬉々として狩っていく、エルフの兵たち。
弓と、魔法。それらを自在に操りながら。
「焼き尽くせッ、殺し尽くせ!! 人間共を根絶やしにするのだ!! 一匹たりとも逃がすな!!」
轟く、エルフたちを束ねる長の声。
「我らエルフが人間共に虐げられ続けた時代ッ、それはもうすぐ終わる!! この地を足がかりにッ、我らの時代がはじまるのだ!!」
呼応し、蹂躙は更にその勢いを増す。
逃げ惑う女子供は、尊厳を踏み躙られ虐殺されていく。
武器をとり抗おうとした男たちは、嘲笑されその首を刎ねられていく。
僅かに残った王都の兵たちも、数に勝る敵に対し弄ばれるのみ。
エルフたちは、嗤う。
これから先。
自分たちの時代が来ると、嗤いを響かせた。
だがその嗤いを遮るは、吹き抜ける漆黒。
そして、響く声だった。
「終わりにする」
「俺一人で」
同時にエルフたちの視線が一点に注がれる。
王都の入口。
もはや原型を留めていない門扉に向けて。
そこに佇んでいるのは、たった一人の男。
闇を纏い。漆黒のローブを揺らすジークそのモノだった。
しかし、エルフたちはジークを畏れない。
いやむしろ、歓喜する。
「貴方がジーク」
「此度のこの混沌をもたらしたモノ。纏う漆黒で、貴方だとわかります」
「貴方のおかげで。こうして我らが日の目を見ることができる」
「シルフに、メリル。あの二人は尊い犠牲。しかし、あの二人の犠牲は無駄ではありません」
「こうして。我らの為に混沌をもたらしてくれたのですから」
我らの為。
その虫唾が走る言葉。
それに、ジークは力を行使する。
無機質に。淡々と。
「収納する」
「長を除くエルフ共の命を」
刹那。
エルフたちは、長を残しその場に崩れ落ちる。
目から光を無くし、それこそ一瞬にして。
一人残された、長。
顔に汗を滲ませ、長は後退りをはじめる。
そして、叫ぶ。
「そのようなことをしても意味はない!! わッ、我らが死したところで、我らの同胞が大挙してーーッ」
「収納する」
「エルフという名の種族を」
長の声。
それを遮り、ジークは意思を表明。
目を見開く、長。
そして、瞬きの間にーー
エルフという名の種族。
それが、ジークの力によりこの世界から消えてしまったのであった。




