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裏切り

 あれから一ヶ月、集団ストーカーの気配は完全ではないが消えつつあった。


 それに明美さんも無事であり、ストーカーに狙われた金井と言う男は事故死してしまったらしい。


 でもそれは集団ストーカーに保険金をつまされて殺された事を誰も知るよしもなかった。


 奈々瀬は金井が事故で死んだことを、奴らの陰謀によって殺されたんじゃないかと勘の鋭さを持ち合わせている。


 金井には恋のキューピットとして何かしら言ってやりたかったが、もうこの世にはいない。

 本当に残念であると思えてきた。


 季節は八月、奈々瀬と大介はこの夏のシーズンにデートを満喫していた。


 カラオケ屋には高校生以上じゃないと入れないと言われたが、奈々瀬は偽の身分証明書を持っていて、高校生としてカラオケ屋に入ることが出来た。


「大介君。今日はいっぱい歌うよ」


 奈々瀬は最近のヒップホップを歌っていた。


 大介は尾崎豊のファンであり、尾崎豊ばかり歌っていた。


 奈々瀬は尾崎豊のオーマイリトルガールが好きでその歌を奈々瀬自身と大介を重ねていた。

 大介君は顔はあまり良くないが歌はとっても上手だ。


 今、大介は奈々瀬のリクエストにオーマイリトルガールを歌っている。


 本当に良い歌だと思う奈々瀬であった。


 楽しい時間と言うのはアッという間に過ぎてしまう。


 カラオケ屋に出た時はもう夕暮れ時で、もう小学生が歩く時間帯ではなくなった。


「さて、そろそろ帰ろうか?大介君」


「そうだね。次、いつ合える!?」


「分からない。とりあえずまた会える時はLINEで連絡するよ」


「そう」


「いつも私の都合に合わせて貰ってありがとね。今度会う時、大介君はどこに行きたい?」


「海に行きたいな」


「海かあ、それは良いかもね。またマリちゃんや明君を誘ってダブルデートするのはどうかな?」


「それは良いかもしれないね。八月も入ったんだし、そろそろ、俺は海で海水浴がしたいよ」


 私と大介君の家はかなり近いところにある。だから近所の商店街のカラオケに行くことに今日はなったんだよな。


 そして私と大介君はそれぞれの家路が近くなり、それぞれバイバイと言って別れたのであった。


 奈々瀬は思う。本当にいつも私の都合に合わせてくれてありがたいと思っている。それに大介君は私が恋のキューピットである事を知らない。


 そう私は恋のキューピット。私はいつも恋愛相談室で恋にお悩みの方を解決してあげるのが私の役目である。


 本当に恋と言う物は良い物だと思っている。


 でも恋と言う物は本当に危険な物であると言うことも奈々瀬は以前、明美に集団ストーカーを依頼したと思われる金井の事を思い出される。


 金井は殺されたんだと奈々瀬は思っている。その時は明美はホッとしていたが、恋のキューピットとしての奈々瀬は残念に思っている。


 何か彼に一言言ってやりたかったと思っていた。明美に振られたなら明美を後悔させるような男性になって生まれ変われば良いと言ってやりたかった。


 たまに集団ストーカーの気配が感じるときがある。


 いずれまた対立するかもしれない。


 明美の事件以来、奈々瀬は危険な事に巻き込まれてしまったのだ。


 とにかく過ぎてしまった事は仕方がない。今日も家に帰ったらパソコンの前に座り、奈々瀬が運営している、恋愛相談室のサイトに目を向けた。


 今日も恋愛に関してのメッセージが届いている。


「ふむふむ」


『女の子に告ったらいきなり振られてしまったよ。俺明日から部活に行く勇気も気力もないよ』


 とある男子高生の言葉だった。


 奈々瀬は、


『だから言ったでしょ。あなた前にも同じ事をして振られたじゃない。いきなり告白したら相手の女性は驚いて逃げちゃうよ。でもその勇気は良いね。まあ、立ち直れないのもその気持ちは分かるけれども、失恋は人生で一番の逆境だから、それを乗り越えればあなたはもっといい男になれるよ。それと言ったけれども、いきなり告白をするんじゃなくて、まずは手紙から相手に伝えるのが良いといつも言っているじゃないですか』


『でも俺は文才とかそう言った才能は皆無だし、とにかく直接伝えた方が良いと思って』


『それがいけないのですよ。とにかく最初はソフトに手紙から初めて送ることを提案します。後、言っておきますけれども、相手に思いを伝えるのに文才も才能も必要ありません。後はあなた自身を磨くことです』


『磨くって何を?』


『それは勉強でもスポーツでもその他にも色々あるじゃないですか。だから自分の今出来ることを磨くことを私はおすすめしています』


『分かりました。明日はちゃんと部活に出て、このモヤモヤした気持ちを吹き飛ばして自分自身を磨きます』


『その意気です。私は応援しています。とにかく頑張ってくださいね』


 もう一つのメッセージがあった。それは、


『あの、以前恋のキューピットさんに言われた通り手紙で彼に伝えたら、私の恋は成就しました。でも彼と付き合ってから、何か周りから悪い噂を立てられて根も葉もないような事を言われたりしています。どうしたら良いんでしょうか?』


『シカトしていれば良いんじゃないですか。あなたの周りで嫉妬している人なんて大した人間じゃないですよ。だからシカトしていれば良いんですよ』


『でも、その彼はテニス部のエースで人気もあり、それを私と付き合って彼も私も色々酷い目に合っています。どうかお知恵をください』


「お知恵をくださいって私は何かの教祖様じゃないんだからな」


 と人知れず呟いてから、


『ちなみにどんな事があるんですか?』


『友達をたくさんなくしましたし、私の机に落書きされたりとにかく意地悪をされています』


「なるほど、ちょっとこの女性の事をクラッキングしてみようかな?」


 名前は竹下絵里、城東高校の人みたいだ。私の恋愛相談室に来る人って優秀な人間ばかりで誇りに思いたいが、そんな事より彼女は凄く悩んでいる。これは直接会って話した方が良いかもしれない。


『じゃあ、明日私と出会いませんか?そのトラブルを解決させるために一緒に考えて行きましょう』


『本当ですか?』


『じゃあ、日程はいつにします?』


『明日は大丈夫です。丁度部活も休みだし』


『じゃあ、明日、お互い面識がないので私は白いワンピースを着てきます』


『じゃあ、私は藍色のワンピースを着てきます』


『これでお互いの目印が分かりますね。じゃあ十一時に東大島の駅で明日待っています』


『はい。じゃあ、お休みなさい』


『はい。お休みなさい』


「フー」


 と息をついて恋のキューピットも楽じゃない事を思い知らされる。


 明日は私は別に用事はないな。



 ★




 そして次の日、そう言えば十一時に約束していたんだよな。


 奈々瀬は約束通り白いワンピースを着てやってきた。


 さて絵里さんは藍色のワンピースを着てくると約束している。


 ここ東大島は彼女が住む家と近いからそこに決めたんだっけ。


 そしてキョロキョロとしている藍色のワンピースを着た女性を発見した。


「おーい」


 と奈々瀬は絵里に声をかける。


「はい」


「あなたが恋愛相談室に来てくれた人ですよね。私は相沢奈々瀬と申します。あなたは確か・・・」


 そうだった。クラッキングしたことがばれてしまう。


「あなたが恋愛相談室のサイトを運営している人ですか?」


 私の見た目を見て驚いている。


「そうです。私が恋愛相談室のサイトを運営している相沢奈々瀬と申します。驚くのも無理はありませんよね。私を見てみんな驚いています」


「あなたいくつなの?」


「十一歳で小学五年生です。絵里さんでしたよね」


「えっ!?私の名前どうして知っているの?」


 やばっ、クラッキングしていることがばれてしまう。


「今、あなたのその・・・」


 どうしようと考えているときに彼女の定期が見えた。


「その定期に書いてあるじゃないですか、竹下絵里って」


「ああ、これを見たんですね。驚いたもしかしてあなたエスパーか何かと勘違いしちゃったよ」


「エスパーって私は超能力者じゃないですよ。それよりも立ち話も何ですからあそこのジョナサンでドリンクバーを頼んで行きますか?」


 私と絵里さんはとりあえず、ジョナサンに行ってドリンクバーを頼んで本題に入った。


 私はノートとシャープペンシルを取り出して彼女の話を聞くことにする。


 彼女は彼と付き合って、周りから酷い嫌がらせをされたと聞いている。


「私、こんな嫌がらせもされました」


 私にスマホを見せつけて、絵里さんがテニスでアンダースコートがもろに見えている写真だった。


 さすがにこれは酷いと思った。


「ちょっとそのサイトを教えてくれませんか?」


「はい」


 私はスマホでその絵里さんがアンダースコートがもろに見えている写真の発信源をクラッキングしてみた。


「どうやら、この写真、岩井信二郎と言う人がやったことが分かりました」


 彼女は驚く。


「岩井君って言ったら、私と付き合っている彼氏です」


「エエッ!?」


 奈々瀬も驚いている。


「どうしてそんな事が分かるんですか?」


 彼女は取り乱していて涙がこぼれ落ちそうだった。


「そんなの嘘よ。絶対に嘘よ。あなた恋愛相談室で私の事をからかっているんですか?」


「残念ながら嘘じゃありませんよ。この写真を闇サイトに登校したのは岩井信二郎と言う男性です。私のクラッキング機能を甘く見ないでください」


 彼女は残酷な真実を知り、その場で泣き崩れてしまった。


 無理もないだろう。最愛の人に裏切られてこんな仕打ちまでされて。


 彼女は人目もはばからずに泣いている。本当にかわいそうだとしか思えない。


 私は彼女に向けて何を言えば良いのか分からなかった。


 最愛の人に裏切られたんだ。その気持ちは充分に分かる。


 なぜ最愛の人にこんな事をするのか?奈々瀬は許せない気持ちでいっぱいだった。


「立ちなさい、絵里さん!」


 すると絵里さんは涙を拭いながら、私の目を見た。


 彼女の目はウサギのように真っ赤に涙で染まっていた。


「その、岩井信二郎って言う人のところにつれて行ってください」


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