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先の話の余談(ジェームズ・キャメロン監督作品「エイリアン2」「ターミネーター2」)

 前回の「命の武器」に関する話ではあるが、別の作品に言及する上に少々長くなるので分けることにした。



 「命の武器」が掲載されていたアンソロジー「異形コレクション」では、本文の前に主催の井上雅彦先生による紹介文が載せられている。


 この作品の紹介文では、「このようなアイデアは、ジェームズ・キャメロンなら大作映画のシリーズにしてしまうだろうが、草上仁先生は濃密な短編で勝負をかけてきた」といった事が書かれていた。


 ……意味も無く、引き合いに出された訳ではない。

 「命の武器」からジェームズ・キャメロン監督が手がけた作品2作を連想できるからだ。


 「ターミネーター2」、そして「エイリアン2」。

 どちらも有名だから、この二つのタイトルを聞いた事の無い人はまずいないだろう。


 「命の武器」とこれら二つの作品に共通している事は、「強い女性が主人公(格)」ということ。



 「ターミネーター」シリーズのサラ・コナーは、第1作の時点において普通の女性だった。

 記憶が曖昧だが、未来での出来事を知らされた際に「財布の中身もろくに管理できないのに、何で人類の指導者になれるような人物を育てられるのか」なんて事を言っていた覚えがある。


 少し話は逸れるが、本来の歴史におけるジョン・コナーと、カイルとターミネーターがやってきた歴史のジョン・コナーは、同一人物と言えるのだろうか?


 タイムトラベルによって歴史は改変されるなら、元々のジョン・コナーは父親が違い、殺人機械と戦うための教育はされていないはずだ。

 普通のサラが産んで育てた、普通のジョン・コナー。


 「ターミネーター3」とはまた違った経緯で核攻撃を生き延び、人類の先頭に立った彼がスカイネット率いる機械たちを追い詰めた。

 追い詰められたスカイネットがターミネーターを過去へ送り、それに応じて人類もカイル・リース軍曹を送る。


 これによって、「機械の反乱」と「人類の勝利」という結果はそのままに、そこに至るまでの過程が改変された。


 話を戻す。サラが強くなったのは、未来からカイルとターミネーターがやってきたからだ。

 強靭かつ執拗な殺人機械に殺されかける、という過酷な経験だけではない。その間行動を共にした、カイルがいたという事が大きい。


 自分を守るために命を賭け、全てを置いて未来から現代へやってきた。しかもその動機は、写真で自分を見て以来ずっと憧れていたから。

 嬉しくない訳が無い。

 

 サラとカイルが行動を共にした時間は、非常に短い。作中の時間で三日ほど、だったか。

 僅かな期間に育まれた愛は、サラにその後の一生を戦い続ける力を与えた。


 「ターミネーター2」の物語が始まるまでの間、息子に様々な知識を身につけさせ、いざ息子に危機が訪れたなら病院から脱走しようとする。

 脱走前、サラが見た夢の中にもカイルが現れた。息子の危機を伝えるために。そして彼女を再び奮い立たせるために。

 「息子を守らねば」という彼女の無意識が見せた夢、とも考えられる。


 「命の武器」の主人公の戦いは、これからと言うところで終わる。「ターミネーター」のラストで、サラが戦いへ備える決意を固めたように。



 もう一つの作品「エイリアン2」の主人公リプリーは、宇宙貨物船で働く航海士だった。他の二人とは異なり、物語が始まる前からタフな女性だと言える。


 劇中での描写を見る限り、宇宙航海士は過酷な仕事だ。

 航海中の大部分をコールドスリープで過ごすとはいえ、何か問題があれば起こされ、それに対応しなければならない。

 シリーズ最新作「エイリアン:コヴェナント」では、開始早々にトラブルが発生して殖民船クルーに死亡者が出た。コールドスリープ中で意識が無いとは言え、焼死は辛い死に方だ。遺体がひどく傷つくという点では、遺族にとっても辛い。


 リプリーはノストロモ号の乗組員でただ一人の生き残りだ。命からがら脱出した後も、コールドスリープでの漂流があまりにも長かったため地球に残した娘アマンダには先立たれてしまう。


 ただ一人、取り残された訳だ。


 「エイリアン2」での顛末も同じだ。

 植民地に同行した海兵隊はほぼ全滅。植民地と海兵隊の最後の生き残りは、次作冒頭で脱出艇の墜落時に死亡してしまう。


 猫のジョーンズとアンドロイドのビショップはカウントしていない。

 前者は地球に置いてきてしまった。あの生きものと関わりが無くなって幸せだ。

 後者は、スクラップと化して捨てられていたのを回収し、最後の一働きをしてもらってから別れる事になった。胸から下が欠損した状態から修理によって起動させ、脱出艇のレコーダーを読んでもらうことはできたが……無理をさせたという感覚が強い。自身の機能停止を望む姿が痛々しかった。


 彼女もまた、サラや「命の武器」の主人公と同様に多くの死別を経験した。

 皆が関係の深い者ではないが、「もう沢山だ」と思うには十分な数だ。


 だから、彼女たちは三者三様に正体不明の生物や機械たちのもたらす悪夢と戦い、決着をつけようとした。死を悼む心が、愛する者を失った痛みが、彼女たちにそれをさせる。それをする力を与える。



 「エイリアン」シリーズには、「命の武器」との共通項がもう一つある。


 カッコーと、エイリアン。彼らは共に、繁殖する上で他の生物を必要とする。

 そして、その強すぎる生命力で他の生物を圧迫し、滅ぼす。


 違いは、カッコーは繁殖に利用した他の生物を殺しはしない(場合によっては殺してしまう事もあり得る)が、エイリアンは利用した生物を問答無用で殺してしまう。

 他の生物をエイリアンエッグに変化させるやり方でも、クイーンがエッグを大量生産する場合でも、彼らのやり方は、個体としての死を伴う事に変わりはない。


 兵器としての背景があったか、そうでないかの違いだろうか。

 「どちらにより嫌悪感を感じるか」は人それぞれだが、「他の生物を殺す」からこそ分かりにくく遠まわしになった面がある、と思う。


 望まない妊娠・出産。

 「エイリアン2」で、リプリーが植民地で生き残った少女とそういう事を話しているシーンがあった、はず。

 ギーガーのデザイン自体にそういう部分がある事もあって、生殖に関わる隠喩が多い。

 アンドロイドがリプリーを殺そうとする際、口に雑誌を詰めて窒息死させようとする部分なども……。使われた雑誌自体もアレだ。


 生殖という行為、生物の本能そのもののような生物だからこそ、力強さを感じる部分がある。他の生物をひき潰すような荒々しさを。

 カッコーは、エイリアンのそういう側面をより直接的にした存在なのだと思う。

 そして、それらと戦うヒロイン達は「母」としての一面が強調されている。


 「エイリアン2」はラストで種の異なる母同士が直接対決する。「ターミネーター2」では、母であるヒロインとの対比としてマシーンであるはずのT-800に父としての役割、あり方が見出される。

 「命の武器」は、カッコーのあり方をはじめとして、その辺の表現がかなりストレートな印象だ。


 一般的な作品としては、「命の武器」はストレート過ぎるのかもしれない。

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