「MEATBALL MACHINE -ミートボールマシン-」
今回の話も一応、愛が関わっている話。
山本淳一監督による映画『MEATBALL MACHINE -ミートボールマシン-』。
キャッチコピーは「殺さねば、伝わらない、愛がある」
これを知っている人は相当な映画好きじゃないだろうか。
筆者はこの作品、一度視聴して印象に残っていたが、どういう経緯で知ったのかをしばらく思い出せなかった。
思い出せた理由は、主演俳優の出演作品つながりで知ったというもの。
……どうも違うような気がするが、それはさておきあらすじに移る。
工場で働く青年ヨウジは、向かいの工場で働く女性サチコに想いを寄せていた。声をかけるなんてとてもできない彼は、昼休み中に彼女の姿を見るだけ。
そんな彼がある日、不運な事に男に絡まれて殴られてしまう。打ちのめされてごみ捨て場に叩きこまれた彼は、奇妙な物体が落ちている事に気がついた。
生き物のように見えるそれにヨウジは強く興味を持ち、正体を調べようとするがうまくいかない。それでもいつかは分かるかもと、彼はそれを自室に置いておく事にした。
不運の埋め合わせなのか、彼は後日サチコと話すきっかけを得る。
工場の同僚に無理矢理誘われていた彼女を助け、自分の部屋に招くことができたのだ。しかも、話してみるとサチコもヨウジが気になっていたという事だった。
しかし、幸運はそう長く続かない。
部屋に置いてあった奇妙な物体が動きだし、サチコに取りついて怪物のような姿に作り変えてしまう。変貌してしまった彼女は隣人を殺害し、乱入してきた男に追い払われて逃走した。
意識を失い、乱入してきた男の部屋で覚醒したヨウジは、何が起こったのかを知る事になる。
あの奇妙な物体は人間に取りつき、互いの肉体を食らい合う。
ヨウジが拾ったそれはエネルギー切れで休眠状態にあり、ちょうどサチコを招いたタイミングで覚醒した結果、彼女が犠牲になった。こうなってしまった人間を元に戻す術はない。
男の娘も、取りつかれている。そして、取りつかれた人間(「ネクロボーグ」と呼称される)は同属の肉体を摂取しなければ生きていけない。男がヨウジをここにつれてきたのは、独自に調達した物体を取りつかせて娘の糧とするためだった。
物体による肉体の作り変えは大きな苦痛を伴う。それ以前に、ヨウジはこのままここで終わりたくはなかった。まだ彼は、何もしていない。
土壇場でも諦めなかったヨウジの抵抗は、思いがけない結果をもたらした。物体の中枢部が破損し、怪物と化しても自由を奪われなかったのだ。
彼はサチコの元へと向かう。物体に囚われた彼女を救うため、彼女へ想いを伝えるために。
あらすじは以上。恋愛、ホラー、ヒーローといった要素が含まれているストーリーだということが伝わっただろうか。
呪いのビデオで有名な『リング』シリーズの原作は、オカルトホラー、バイオホラー、SFとストーリーが三段変形する。この作品も、一つのストーリー内で似たような変化をしていく。
序盤は、恋愛ものとして見てもあまり違和感が無い。時々はさまれる怪人の戦闘その他のシーンを無視すればの話だが。
ネクロボーグが云々を抜きにしても、恋愛ものとして良い感じに撮れたんじゃないか。そう感じた。
サチコが物体に乗っ取られる辺りからはホラー色が強くなる。
そこまでは『普通の日常』といった感じだった雰囲気が、一気に非日常へと切り替わる。
「奇妙な物体が人間に取り付いて、人知れず殺し合いを繰り広げている」という設定が開示される。そんな展開に加えて、画面の作り方や役者の演技が非日常感を増幅する。
そんなシーンを経て、最後にこの映画がどうなるかというと……特撮になった。
ネクロボーグとなったヨウジとサチコの戦闘を、CGその他の手段を使って描いている。
身も蓋もないことを言ってしまうと、この作品は「秘密結社の怪人に、能力の実験台にされて死ぬ」みたいな事がある世界だ。
『仮面ライダー』だって初期は怪奇ものだった。だから、この作品が最終的にこうなるのも当然、……というのは少し苦しいか。
非常に低予算な作品なので、画面は毎週放映される特撮番組のそれだ。予算の無さを技術で補っている。映倫を通していないために過激なゴア描写といい、こういうものを撮りたかったという感じだ。
この作品は、元が監督の自主制作映画だったのをリメイクしたものらしい。オリジナルの方もソフト化されているようだが、筆者は見たことが無い。
アマチュアだった頃の作品をプロになってからリメイク。ここで作者として活動している人も、経験するかもしれない事だろう。
プロの技術による映像と、アマチュアらしいカオスで、それでいて好きなようにやっていると感じさせる脚本。とてもちぐはぐな印象を受け、良い『作品』かと問われれば言葉に詰まる。
例えば、ヨウジのエピソードと物体関連のエピソードは平行して進み、自室で物体が覚醒するシーンで合流する。その合流が大分遅いのは、まずいと思う。
特撮は予算を食うので、質を確保するため必要最小限の長さに抑えたかったのでは。その代わりに(比較的低予算でも撮れる)ドラマ部分を多くしたのでは、といった推測もできる。
オリジナル版は実際、主人公が早くに怪人化する脚本だったらしい。
そんな粗があっても、作者の『好き』が分かるから。作品としてどうかという部分はあっても、良い『もの』だと言える。『好き』を前面に押し出した作品ばかりではないが、ここで公開されている作品にも、似たような部分があるだろう。
書籍化などの形でそれが結実したように、この作品も昨年度『蠱毒 ミートボールマシン』という新作が公開された。相変わらず低予算ではあるらしいが、あらすじを聞いた限りは話のスケールがかなり大きくなっている。
都合が許せば、観に行きたかった。
……本作と原作となった自主製作映画は、どちらもソフト化されている。
笑えないタイプのえげつないゴア描写が見る人を選ぶ。「オチがいまいち」と感じたのもあり、視聴してみて欲しいとは言わない。




