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「ニンジャスレイヤー」1部 「ア・カインド・オブ・サツバツ・ナイト」

 ネット小説としては相当に有名であろう『ニンジャスレイヤー』。

 『忍殺語』と呼ばれる独特の文体、「ちょっとやめないか」、「何事も暴力で解決するのが一番だ」等、声に出したい感じのそれを見聞きした事のある人は多いだろう。


 バラエティ豊かで面白い、数多くのエピソードの中でも一番好きな話が『ア・カインド・オブ・サツバツ・ナイト』だ。


 一応読んだ事が無い人向けに最低限の内容を。


 この作品でのニンジャ(忍者にあらず)は半神的な存在であり、ニンジャソウルが憑依する事で普通の人間がニンジャに変わる。


 主人公は、世紀末でサイバーパンクな世界で珍しい、幸せな人間だった。愛しい妻子と、祝日にある程度の贅沢が出来るくらいには。

 ある日彼はニンジャ同士の抗争に巻き込まれ、妻と子は死に自身も死の淵に立たされた。そんな彼に、邪悪で強大なニンジャソウルが宿った結果生まれたのが、「ニンジャを殺すニンジャ」であるニンジャスレイヤー。



 第一部の敵は、一人の強大なニンジャに束ねられたニンジャ集団『ソウカイヤ』。このエピソードは、この組織に所属する一人の下っ端ニンジャが、ニンジャスレイヤーに追われ必死で逃げるシーンから始まる。


 彼の名前はレオパルド。上から丸投げされた調査任務で、運悪くニンジャスレイヤーに遭遇してしまった。

 下手をすると幹部でも殺される、圧倒的な戦闘能力を持つ相手。ソウルに憑依されて日も浅く、ソウル自体も強くない彼に勝てるはずがない。


 片腕と引き換えに、一時的にニンジャスレイヤーを撒いたレオパルドは高層マンションの一室に逃げ込む。

 失くした腕の止血をし、痛み止めの薬物を使用しても、頭から離れない死の恐怖。携帯していたスシを口にしようとしても、手が震えてうまく食べられない。


 それでも何とか食べ、最後の一つを彼が口にしようとしたその時、ドアの外から物音が聞こえた。

 もう追いつかれたのかと戦慄し、急いで身を隠す。耳を澄ませてよく聞くと、物音は相手が複数である事を示していた。


 相手があの怪物ではない事に安堵した彼が目にしたのは、三人組の強盗。

 同じニンジャならともかく、常人など物の数ではない。瞬く間に彼らを始末したレオパルドは、ニンジャになる前の事を回想する。彼らのような強盗だった頃の事を。


 人間だった頃のレオパルドは、警察の罠に嵌り死の淵に立たされた。捜査を指揮していた刑事、ノリベには彼らを逮捕する気など無かったのだ。


 仲間達が殺され、自身も後少しで死ぬという所でソウルが憑依し、彼はニンジャになった。

 溢れんばかりの力で危機を脱し、全能感に支配されて思うままに欲望を満たす。


 4日間続いたそんな日々を止めたのは、より強大なニンジャ。


 勧誘に来た、ソウカイヤの幹部との実力差を感じた時は、「力をつけていつか上に立つ」と思う事が出来た。

 そんな思いを完全に打ち砕いたのは、ソウカイヤのトップが放つ圧倒的なプレッシャーだ。


 どんなに汚い手を使っても、どれほど時間を掛けて力をつけても、絶対に勝てない。

 力の差を理解できたレオパルドは、誰に強制されるでもなく膝を折った。


 そうして始まったのは、ニンジャの力を得てもなお殺人的に過酷な日々。強盗になる前、サラリーマンだった頃もレオパルドは過労死に怯えていた。ニンジャになってからは、幹部による粛清という死も彼を苛む。


 騒がしい物音で現実に引き戻された彼は、かつて自分を殺そうとした刑事と再会する。彼が逃げ込んだ部屋は、かつての自分が嵌ったものと同じ警察の罠だった。


 数分後、追跡してきたニンジャスレイヤーが目にしたのは、刑事と相討ちになり虫の息となったレオパルド。

 僅かなやり取りの後に、彼の短いニンジャとしての生は幕を閉じる。



 一人の三下ニンジャを主役に据えた、もの悲しさの漂うエピソード。


( ( (ちくしょう、ちくしょう……ニンジャになれば全てが解決すると思っていたのに……この世界の王になれると思っていたのに……!) ) )


 回想時にレオパルドが言ったこのセリフ、最期のやり取り、辞世の句。どれも胸に来るものがある。


 「ビガー・ケージズ、ロンガー・チェインズ」、これは別シーズンのエピソードにつけられたタイトル。

 「より大きな檻、より長い鎖」。強い力を得て自身を縛るものを振り切ったと思ったら、より強い力に囚われた。レオパルドのこれまでにも当てはまる言葉。


 ニンジャスレイヤーの世界では、誰もが何かに囚われている。強大な力を持つニンジャ達も、その頂点に近い存在ですらそれを振り切る事は出来ない。


 なら、どうするか。

 明確な答えを出せずとも、そんな世界に対してキャラクターたちは選択や行動をしている。そんな所が、この作品の魅力の一つだと思う。

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