「ターボキッド」
今回もヒーローもの。2015年の映画「ターボキッド」だ。
「核戦争により文明が崩壊した世界。主人公のキッドは幼い頃に親を亡くし、ガラクタ拾いで生計を立てて生きていた。そんな彼のバイブルは「ターボライダー」というヒーローのマンガ本。
ある日彼が公園でそれを読んでいると、不思議な雰囲気の少女が声をかけてきた。彼女の名はアップル。
なし崩しに彼女と共同生活を始めて仲良くなってきた頃、水を支配している悪人ゼウスにアップルがさらわれてしまう。
キッドは偶然手に入れたターボライダーのコスチューム(本物。グローブから放つ光線には殺傷力がある)を身に纏い、ゼウスのアジトへと向かった。
ゼウスが人間から飲料水を搾り出す機械を手下に披露している中、アップルを返せと殴りこみをかけたものの、ヒーローらしい事はできずピンチに陥ってしまう。
装備の力でなんとかその場を切り抜けたものの、彼らを目障りに感じたゼウスは刺客を放つ。キッドはアップルと共に逃げるが・・・」
「チャリンコ版マッドマックス」等と形容されるこの作品、燃料が枯渇している世界観ので登場人物はみんな自転車に乗っている。主人公やヒロインはもちろん、上記の刺客もキッドたちを追いかけてくる際には自転車を使う。
腕にバズソーをつけて、ドクロ型の鉄火面をつけた怪人が自転車。いかにも世紀末なモヒカン野郎たちも自転車。ストーリーを置いておくと結構シュールな絵だ。
ゴア描写が割と過激な映画でもあり、人体が爆裂する、内臓を引きずり出される等といった描写がある。文字で抜き出すとグロテスクな映画のようにも見えるが、実際に見た感じそこはあまり目立たなかった。
独特の奇妙な要素があるこの作品、筋書きは王道の「ヒーローに憧れた少年が、本物のヒーローになる話」だ。この部分がしっかりしていて、ある種のこだわりを持ち奇妙な要素を詰め込んでいるからこそこの作品は評価が高いのだと思う。
ヒーローのコスチュームを手に入れる展開はご都合主義な感じだが、そこは批判されるべきではないと思う。あくまでもこの出来事はきっかけに過ぎないからだ。
憧れたヒーローの姿と力に背を押され、キッドはアップルを助けにいくという選択をする事が出来た。結果は装備の力でなんとか脱出できたという有り様だが、それでもヒーローとしての第一歩は踏み出せた。
どんなに強い力があっても、この選択が出来なければヒーローでは無い。
作中とある事情により、キッドは最大の武器であるターボライダーのグローブを失う。コスチュームの他の部分は丈夫な防具程度の代物なので、スーパーパワーを無くしたに等しい出来事だ。
しかしキッドは、その後グローブ無しでゼウスとの決戦に挑む。アップルのアドバイスと相棒フレデリック(あらすじからは割愛したキャラ。ゼウスに片腕を奪われキッドが乱入した際一緒に脱出した)の助けにより、彼はゼウスの手下と戦う事が出来た。
強い力や憧れに背中を押されずとも、悪と戦えるなら彼は立派なヒーローだろう。ただの少年に過ぎなかった彼がそうなるまでの過程にこそ、価値がある。
キッドがヒーローになるきっかけは、アップルとの出会いだ。彼女とのボーイミーツガールも本作の見所だろう。
異世界からきたんじゃないかという位に世紀末な世界が似合わないアップルは、人によっては鬱陶しく感じるかもしれない。
色々とおかしいので、筆者自身「なんだこいつ!?」と最初は思った。話が進むに連れてなぜ彼女がそうなのかは分かる。
映画の雰囲気同様に変な奴ではあるが、良い奴なのは間違いない。だからこそキッドは彼女を助けに行ったのだろう。
また、あらすじから削ったフレデリックも渋くて格好良いキャラだ。ダスターコートにカウボーイハット、右手は鋼鉄の義手。マッドマックス風の世界観的にこっちが主役でキッドがサイドキックでもあまり違和感が無い。
出番は少し遅いが、先輩ヒーローのようにキッドの背中を押してくれる。
シュールな画面とゴア表現が気になるものの、ヒーロー好きな人には見て欲しい。そんな作品。




