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ドミトリー・グルホフスキー「METRO2033」

 前回の「S.T.A.L.K.E.R.」とはウクライナで製作という共通項のあるゲームとその原作小説「METRO2033」について、今回は語りたい。


 とりあえずゲーム版のあらすじを


「核戦争により地上に住むことが出来なくなった時代。ロシアの首都モスクワで、人類は地下鉄の駅に生活圏を移し、ミュータントや物資の不足と戦いながら細々と生き延びていた。


主人公アルチョムは、核戦争前に生まれて幼い頃に地下へ潜った若者。彼の住む『博覧会駅』は現在、新種のミュータント『ダークワン』の脅威に晒されている。

強い腕力、黒く強靭な体を持つ彼らの最も恐ろしい武器は『人の心に干渉する能力』。

屈強な肉体を持つ警備員達も心までは鍛えられない。駅の出入り口やトンネルの警備を行っていた彼らの心を壊され、『博覧会駅』は脅威から身を守る術を失いつつあった。


義父の友人であり、優秀なレンジャーでもあったハンターはある日『もしも俺が戻らなければ、ポリス駅の仲間にダークワンの脅威を伝えてくれ』と言い、単独でミュータントの進入してくるトンネルを爆破しに行く。しかし、彼が戻ってくる事はなかった。

アルチョムは彼との約束を果たすため、そして故郷を救うために『博覧会駅』を旅立つ。」


 小説だとキャラクターの名前やその後の展開が異なるものの、冒頭部分は大差ない。

 前回の「S.T.A.L.K.E.R.」はオープンワールドで、自分の意思で寂しい旅路を歩いていく作品だった。一方このゲームは一本道で、アルチョムの過酷な旅を追体験する事になる。


 暗いトンネルの闇から這い出てくるミュータント。トンネル内で起こる怪現象「アノーマリー」。イデオロギーの違いから、核戦争の後ですら争っている共産主義者やファシスト。

 故郷を救うためには様々な脅威を乗り越えていかなければならない。


 ゲーム版のアルチョムはパンチ一発で屈強な兵士を昏倒させられるタフガイだが、小説版はそれほど強くない上に、プレイヤーという強力な味方もついていない。ひどい目に合いながらポリス駅を目指していく。

 「賭けに負けて奴隷にされる」「蛮族紛いの連中に捕まる」など、全体的に暗澹とした雰囲気で本当にろくな事が無かった。


 そんな有り様じゃゲームにならないのでゲーム版のアルチョムは強いのだろう。行き着くところは大して変わらないが(ゲーム版はマルチエンドで、多少変える事も出来る)。



 ゲーム版だったか、小説版だったか。どのキャラが言ったかも定かでは無いが、「人類は核の炎で、天国も地獄も破壊してしまった」というような台詞があった。

 本当にそうなってしまったのか、あるいはメトロのトンネルがウィンチェスターハウスのように人の魂を捕らえているのか、アノーマリーには心霊現象みたいなものが多い。


 壁を這うパイプに耳を澄ますと謎の声が聞こえる。もう動いていないはずの、電車の影だけがトンネルを通過する。

 これらの現象は不気味なだけではない。アルチョムをあの世(あるいは死後の世界ですらない場所?)へ引きずりこもうとしてくる。大量の死者がいた場所で、ダイレクトにあの世に連れて行かれそうになる事もあった。


 元が人間だと推測できるのに、どこか無機質なアノーマリー。トンネルに芽生えた意思が人を食らっているのか、多くの死者が混ざり合って変質した結果なのか……。ゲーム中、小説内でそれらの答えは描かれる事は無い。



 次回は続編をやりたいので結末の一つを言ってしまうと、アルチョムはダークワンの殲滅に成功する。精強なレンジャー達の力を借り、軍事基地の機能を取り戻してダークワンたちが住処としている植物園を焼き払うのだ。


 博覧会駅に帰ってこなかったハンターは、アルチョムの夢、あるいは幻覚の中で何度か現れる。


「敵なら、殺せ」

「どんな代償を払ってでも、障害は取り除かねばならない」


 彼のそんな言葉に従った結果がこの結末であり、続編で彼はさらなる『代償』を支払う事になる。何が正しい事なのかを見極められなかった代償を。



ゲーム版も小説版も、入手出来ないという事はないはず。小説版がハードカバー上下巻なのでちょっと長いかもしれない。

 二次創作として、この二つを混ぜてグッドエンドに近づけた「できる夫のMETRO2033」というのもある。マンガ感覚で読めて大体の筋書きは同じ(ただしゲーム版の続編には繋がらない)なので、これから入ってみて世界観が気に入ったら原作に手を出す、というのが良いかもしれない。

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