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怠惰でチートな異世界創造者(マジッククリエーター)  作者: 市川キキ
第3章、魔国へ
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55話、クラーケン

誤字脱字あるかもです。

「おぉ! 何やら青く光るものが彼方まで広がっているぞ!!」

「本当ですね! 綺麗!」

「広ーい! 高ーい!」



 現在遥希たちを乗せた超音速旅客機『コンコルド』は、上空約9000メートルを飛んでいた。



 そして今はこの世界に来て初めての海の上を飛行している。それ自体に特別何を思うとかはないが、それでも海は綺麗だと遥希も思う。



 今はまだ操縦席にいるが、高度やスピードなどの軌道を設定し、埋め込んだコンピュータで自動操縦をする。



 それが終わると同時に、遥希はアウリールたちがいる客席へと足を運んだ。



「空を飛ぶ気分はどうだ?」

「あぁ、サイコーだ!」

「そうか、それならよかった」



 実は遥希、危険性や時間短縮のためだけに飛行機を選んだのではない。少しでも空を楽しんでもらおうと考えてそうしたのだ。



 船ならば、クルージングと洒落込みたいところのなのだが、魔物を警戒しつつ、尚且つ対処しつつクルージングなど、楽しめるわけがない。



 それに比べ飛行機は先ほども述べたとおり、危険性は少なく対処が簡単だから、遊覧飛行ができると思ったのだ。



 遊覧飛行と言っても、見えるのは海自体と海にいる魔物、そして大空だけなのだが、そんなことは気にしない。



 兎に角、遥希としてはアウリールたちの燥ぎようが嬉しいから、そんな些細なことどうでもいいのだ。



 と、遥希がそんなことを考えていると、カレンが手招きしているのが目に入った。



「どうした?」

「ねぇ、あれ見て!」

「どれだ? ん? あれは……」



 カレンが指を指したところ、海の中に、少し黒い大きな何かが見える。



 遥希はそれを目を凝らしてみてみる。しかし見えないので、仕方なく望遠鏡を創りだす。



 そして望遠鏡を覗いた際には吸盤の着いた五対の腕を持つ軟体動物のあいつがいた。その魔物の名はクラーケン。



 カレン(ヘカトンケイル)以上の危険度でランクSS。海の王者と呼ばれ、それのテリトリーに入ると、客船や漁船のみならず魔物まで絞め殺してしまう生物だ。



 アウリール曰く、普段クラーケンは海中の深くに生息しており、こうして海面に上がってくることは滅多にないんだとか。



「そういえばカレンと同じようにクラーケンにも擬人化や意思はあるのか?」

「うーん……。直接確認したわけじゃないからわからないんだけど、きっとあると思うよ。なにせSランクのカレンにもそれがあるんだからね」

「そうか……。よし、いまからコンタクトを取ってみよう!」

「「「……えっ?」」」



 カレンの話を聞き、遥希の眼の色が少し変わった。その眼に含まれている感情は好奇心。子供の様に眼をキラキラと輝かせ、何やら嬉しそうな顔をしている遥希。



 遥希の様子から、止めても無駄なんだろうな、という考えが生まれた。まぁ、それは彼女たちからしてみれば「何となくそんな気がした」なのだろうが、止めても無駄、というのは完璧に的を射ていた。



「でもどうやって降りるんですか? この高さからだと落ちたら死んじゃうだろうし、それに死ななかったとしても、クラーケンに殺されますよ?」

「あぁ、それなら問題ない。そんなこともあろうかと予想して滞空用のブースターをセットしてある」

「準備周到だねお兄ちゃんは……」



 遥希の、万が一に備えてあるというブースターを説明するときの意気揚々とした様子に、流石のカレンも溜息をつくしかない。



「それじゃあ行こうか!」

「「「はぁ……」」」



 遥希の勢いのある号令に、アウリールたちは意気消沈しながら溜息をついた。



~~~~~~~~~~~~~~~~



 現在、クラーケン上空200メートル。小さくはあるがクラーケンが目視できる位置まで降下した『コンコルド』。



 クラーケンからも見えているのか10の目でこちらを眺めている。ように見える。



「さてと、俺は言ってくるから少しここで待っていてくれ」

「わかった。相手はランクSSだ。……気を付けろよ」

「あぁ、当然だ。っていうか戦闘はしない。ただ話すだけだ」

「そうか、ならいいんだが……」

「あぁ、じゃあ行ってくる」



 遥希は1つ深呼吸するとイメージを収束した。



三文字解放(トリプルキャスト)、落下傘」



 それを唱えると遥希の背中には傘状の大きな布製の用具が取り付けられていた。



 遥希はサイドにある紐を引っ張る。すると、纏まっていた布状のものが、バサッという音とともに展開。そう、それは地球でいう『落下傘(パラシュート)』だ。



 そして遥希は一瞬、宙に引っ張られ、臓器が持ち上がったような感覚を覚え、不快な気分を味わった。しかしその後は気持ちの良い潮風と、綺麗な海が見えたため、結果オーライだ。



 海面から30メートルの位置で一文字解放(シングルキャスト)で船を生成。快速の小型舟艇『モーターボート』が出現。遥希はパラシュートを器用に使いそれに乗った。



 意外なことにクラーケンは遥希を様子をじっと見ているだけで攻撃するどころか一度も動かない。



 そのことに遥希は首を傾げる。と、また意外なことにクラーケンから話し始めた。



『オ前、何者ダ? コノ世界ノ者ジャナイナ』

「あぁ、よくわかったな」

『アノ奇妙ナ魔法と、オ前ノ周リ二イル霊子反応ガソウ告ゲテイル』

「そういうことか」



 遥希は平然を装っているが内心、混乱していた。創造(クリエイト)のことは分かったとしても、この世界の者じゃないというところは、こっちから話さないと分からないと思っていたからだ。



 その混乱を察したのかそうでないのかわからないが、遥希が落ち着くまでクラーケンは黙っていた。そして落ち着いたのを確認したのか、話を始める。



『ソレデコノ世ノ者デハナイ者ヨ』

「ハルキだ。ハルキ・シンザキ。ハルキって呼べ」

『……ハルキヨ。ワザワザアレカラ降リテキタ意味ハナンダ?』

「これと言って意味があるわけじゃない。ただあいつと同じ様に、お前にも意思があるのかと思ってな」

『アイツ、トハ?』

「あぁ、カレン。……ヘカトンケイルだよ」



 その言葉を口にした瞬間、クラーケンの眼の色が変わった気がした。

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