51話、遥希にかかる災害
誤字脱字あるかもです。
「帰っていいか?」
「おぬし、来るなり唐突に何を言い出すんだ?」
「いや、帰っていいか?」
「儂の話聞いておるか?」
遥希は王室に入るや否やいきなり帰宅宣言? を叩きつけた。
入室するときにノックもせず、そして挨拶もせずそんなことを言うものだから、流石の重鎮達も額に青筋を立てているようだ。
一方のニーグスは完全に呆れていた。いや、遥希の性格を考慮していたのなら、諦めていた、の方が適切かもしれない。
そして露骨に帰りたい宣言をしている遥希を見て眉間を抑えつつ、長引かせるとどうなるか堪ったものじゃないと話を急ぐ。
「単刀直入に問う。おぬし、ハルキ・シンザキは何者だ?」
「何者って言われてもなぁ」
「…………」
遥希は勿体ぶるように言葉を濁し、ニーグスへと目を向ける。
そこにはニーグスの真剣な、それでいて遥希を気遣うような、そういった様々な感情が複雑に絡まってた。その瞳の中には確かに様々な感情が渦巻いていたが、その中に嫌悪や侮辱、侮蔑と言ったマイナスな要素は含んでいなかった。それも、全くと言っていいほどに、負の感情は見られなかったのだ。
遥希はしばらくその瞳をじっと見ていた。傍から見たら、国王と少年が見つめ合っているように見える。が、きっとそれを考えた人はいないだろう。そこまで空気を読めない人は、この場には存在しない。
初めは国民が敬愛する国王に全く敬意を払わない配慮も礼儀も知らない小僧と誰もが思っていた。しかし、彼らはその少年の瞳を見てそれが間違いだと思ったのだ。それは、その少年の瞳がとてつもなく澄んでいて、強い意志と共に見た目とは裏腹に濃密な時間を過ごしてのだとそれを見て皆悟ったのだ。彼は只者ではない、と。
それが今の状況と何が関係あるのだろうと、誰もがそう思う。しかしその場にいた人はその答えを知っていた。それはつまり、その少年は国王と同等に話せる度胸と、何者にも屈しないという強い心があるということ。それを知った人は等しくこう思った、無意識にも彼を認めたんだと。
だから今更である。今、国王と少年は大切なことをその瞳から読み取っているのだと。全員がそれを読み取った。
突如現れたただ一人を除いて。
「大事なお話しの中失礼するね」
「……誰だ?」
遥希を除く全員が驚愕に顔を染めた。なぜならその人物は何もない所から突如現れた。いや、気づいたらそこにいた。
「あれ? ハルキは私のこと覚えていると思ったんだけど?」
「は? いや、誰だよ」
その少女は見た目遥希と同い年くらいだ。銀髪のロングに碧眼、背は遥希よりやや低いくらい。幼い顔立ちだが、その容姿はとても整っておりお世辞ではなく本心で可愛いと思える。
そんな少女が突如遥希たちの前に現れたかと思うと、遥希の知り合いのような口ぶりで話してくる。無論、遥希にはこんな少女に見覚えはない。
遥希が訝しげな目線を少女に向ける。怪しんでいるだけなのだが、なぜか少女は「いやんっ」と体をくねらせていた。マジで意味が分からない。本当に誰だよこいつ。
「お前、いい加減にしないと……」
遥希の忍耐袋が破裂する直前で、その少女が唇に人差し指を持っていき、おどけた調子で返答する。
「本当に私のこと知らないの?」
「全く知らないな」
「えー、なんだぁー」
遥希は見たこともない少女に目をやり、記憶を掘り返してみる。
が、やっぱり出てこない。
その少女は相変わらず先ほどと同じ体勢で遥希を見つめる。と、少し微笑んで、そして遥希にしか聞こえない声で言葉を紡ぐ。
「私の名前はヘカトンケイル」
「……………………………………は?」
少女の唐突に放たれた言葉に、遥希は一瞬我が耳を疑い、手をやる。そこにちゃんと耳が付いていたことに遥希は安堵の表情を浮かべた。が、すぐに引き締める。
「その根拠は?」
「ん~、根拠って言われてもねぇ~」
ヘカトンケイルは可愛げに小首を傾げた。何かを悩むように考えると、あっ! っと言い、顔を上げた。
すると何を思ったか、自身の目の前で拳を作ると、見ててね、と言い、魔力を活性化させ始めた。
そして、一つ息を吐き出すと、先ほどのようにおどけながら遥希に目をやる。その眼はなぜか少し濡れていた。
「ね?」
「………確かに」
「ふふっ、信じてもらえてよかったぁ~」
ヘカトンケイルは両手を胸の前で組むと楽しそうに微笑んだ。それはもう満面の笑みで。
遥希は遥希で少し困惑していた。あの魔力の流れは、確かにヘカトンケイルのものと酷似していた。だからこそ困惑していたのだ。
人の姿になれることについては、実際にヘカトンケイルがやっている。後で仕組みを聞くとして、問題なのはそれの次、
「なんでここに来た?」
尤もな質問である。ヘカトンケイルはその言葉を予想していたようで、すんなりと理由を述べた。
「それは貴方に興味があるからだよ、ハルキ・シンザキさん」
「ほう、それはなぜ?」
ヘカトンケイルはわざとらしく声を大きくして、部屋中に聞こえんばかりの声で言い放つ。
「だってぇ、あんなに激しい攻防をしたのは初めてだったし……、それに、あんなことされて今更、はいさようならってわけにはいかないでしょ?」
「「「「「「「………………………」」」」」」」
ヘカトンケイルはわざと言い方を誤魔化して誤解を招くような発言をしている。そのために周りの人の視線が痛い。
因みに、ヘカトンケイルが言っている「激しい攻防」とは、あの戦闘のことを指し、「あんなことをされて、はいさようなら」というのは、流星群を実際に食らってそれの正体が知りたくて興味があるから、とういう意味だ。断じて変なことはしていない。
「………ハルキ、幼気な少女に何をした?」
「何もしてねぇよ」
「そんなわけがないであろう!? きっとその子の言動がおかしいのは遥希が壊したからであろう!?」
「はぁ!? お前馬鹿なの!? ってか何言ってんだ!?」
ニーグスと遥希の言い合いを楽しそうに観賞していたカレンは何か思いついのか、口元を歪める。そして、
「私の初めてを奪ったのはお兄ちゃんだよ? すごく痛かったんだから責任とってね?」
あぁ、終わった。
遥希はその場に崩れ落ちるのだった。
かなりの急展開に少し戸惑いを感じた今日この頃。
「あぁ、なんでこんなことしたんだろう?」
投稿する前、正確にはこの回を製作しているときにそう感じていました。
だがなぜでしょうか、手が止まりませんでした。心の中で、銀髪少女、という言葉を深く思っていたのでしょうか?
こんなことを言う私は少し変態ですね。
え? もう手遅れ? そんなこと言わないでください。割とガチで泣いてしまいまう。
私は某日常アニメのモト〇ルが言っていた『ぶっちぎりでいかれた』人ではありません。何とかご容赦ください。
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