41話、ギルド騒動
少し長くなりました。
誤字脱字あるかもです。
「ハルキ」
「……なんだ」
「結局お前は宴会に行かなかったのか?」
「…………」
現在の時刻は深夜、兵士騒動があった日は昨日になってしまっている。
今遥希とアウリールは宿の一室にいる。辺りは静まり返っていて、街自体も眠っている。
遥希はアウリールの言葉を聞くと、手に力を籠めギリギリと歯を食いしばった。
「俺だって行きたかったさ。それはもう楽しみにしていた。しかし……!」
なにか事件でもあったのだろうか。それとも何かに邪魔されたとか。あり得ないことではない。兵士騒動もあったのだから嫌がらせもあるのかもしれない。
アウリールは次に出てくる遥希の言葉を待った。すると
「あの、あの街と城とニーグスが悪いんだ……」
遥希は何か嫌な記憶を思い出すようにまたも歯を食いしばった。
「とにかく何があったんだ?」
「あぁ、それは」
遥希をここまで怒らせるなど相当な力の持ち主の仕業に違わない。そう確信していたのだが、
「………迷った」
「は?」
拍子抜けもいいところだった。
「街も城も広いし、ニーグスは会場を教えてくれなかったし、行けるわけがないだろう!?」
「はぁ、そう、だな」
自分が悪いんじゃないか? そう喉まででかけた言葉を必死に抑えた。今の遥希にそんなことを言ったら後でどうなるかわかったものじゃない。
「と、とにかくもう遅いし寝るとしよう」
「あぁ、そうだな」
遥希は腑に落ちないような顔をしていたが、疲れていたのか、しばらくしたら寝息を立て始めた。
アウリールはそれを確認すると、ゆっくりと目を閉じた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「アウリール、少し起きるのが遅い」
「あぁ、すまない。それとおはようハルキ」
「おはよう」
なんと清々しい朝だろう。空気は澄んでいて風は心地よく日の光が暖かい。そして目を開ければ愛するもの顔が目の前に。なんとまぁ幸せな朝なんだろうか。
「今日はギルドとやらに行こうと思う。クエストを受け魔物を駆逐し報酬を貰うといった流れをいち早くなれたい」
アウリールのささやかな目覚めは、遥希の物騒な話のおかげで丸つぶれだ。
そんなこともつゆ知らず、遥希はすぐに宿を出てしまった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「すまん、冒険者になりたいのだが」
「はい、冒険者申請ですね。お2人ですか?」
「いや、俺一人だ」
なぜ遥希だけ冒険者申請をしてアウリールはしないのかというと、第一の理由はアウリールが獣種だからだ。
実際問題、獣種と人間種は対立している。今は心配ないがいつどこでアウリールのことがばれるかわからない。人間国で冒険者になるとそのリスクが高まるために控えてもらった。
もう一つはこの国で冒険者登録しても、今後クエストを受けるかどうかは分からないからだ。このまま旅に出てしまえば遥希はともかくアウリールはこの国には戻ってこないだろう。
大きな要因は以上の二つだ。遥希がクエストを受けている間、アウリールには好きなように行動させるつもりだ。
「かしこまりました。それではここに名前と年齢、使える魔法属性とスキルを記入してください」
「わかった」
名前と年齢は問題ないが、魔法とスキルについては少し慎重になる。
とはいってもすべて確認されるわけではなさそうだから、適当に記入する。
魔法属性は火、風。スキルは魔法の心得と書いておいた。
因みに魔法の心得というのは、魔法の才能の下位に存在するもので、魔力の才能が少しある程度の認識しかない雑魚スキルだ。同様に剣の心得や体の心得というのもある。
「では冒険者カードを作成後、お渡ししますので少々お待ちください」
「わかった」
受付の女性は遥希のことを大して気にしていないようでそのまま奥へと引っ込んだ。
この分なら問題ないだろうと遥希はアウリールに視線を向ける。
「とりあえず俺はこの後クエストを受けるつもりだ」
「わかった。私は暇つぶしに魔物でも倒してくる」
「あぁそうしていてくれ」
「じゃあまたあとでな。お前のことだから問題ないと思うが気をつけろよ」
「そっちもな」
アウリールは最後にもう一度だけ遥希を見ると、ギルド会館から姿を消した。
遥希は冒険者カードを受け取るまで暇になったわけだが、これと言ってやることがない。
と、2人の男がギルドに入ってきた。瞬間、ギルド内の空気が重くなった気がした。
その2人は遥希に向かっってくる。それも少し殺気を立ててだ。
「おい」
どすの利いた低い声がギルド内に響く。今のは遥希のことを呼んだのだろう。だが遥希は聞かなかったふりをする。
「お前のことを言っているんだ」
「ん? あぁ俺のことか?」
「お前以外に誰がいるんだ? ひょろっこ男」
遥希はちょうどいいと思った。これはいい暇つぶしになる。
「ほかにもたくさんいると思うが?」
遥希はそういうと辺りを見回す。そこにいた冒険者たちは怯えるように震えている。
なるほど、こいつらは暴漢ってことか。
「ふざけているのか? ふんまあいい。そこをどけ」
「なぜ?」
「俺がどけと言っているんだ」
遥希は以前この手のタイプの奴らに絡まれたことがあった。無論、昨日の兵士たちだ。
今回もその類の奴らなのだろうか。自分が優位に立っていると勘違いしているようだ。
「だからなんだ?」
「二度も言わせるな。殺すぞ?」
「やってみろ虚勢漢」
その瞬間、ギルド内の空気が凍ったように寒くなった気がした。
2人の男の顔を見てみると、今の発言が気に食わなかったのか額に青筋を立てている。
完全にキレたな。遥希はそう思い不敵に笑う。
「クソ餓鬼が! あの世で後悔し……」
男の1人が剣を振りかぶって遥希を真っ二つにしようとした。何やらセリフを言っていたようだが、それを最後まで聞く義理はないと、遥希は途中で蹴りをかました。
その蹴りは男の鳩尾を的確に突いた。案の定、セリフを言っている途中に吹っ飛んでいった。
そしてきめの一言。
「言葉遣いに気をつけろ」
はぁ、すっきり! 遥希は心の中で満面の笑みを浮かべた。これで暇をせずに済んだとばかりに息を吐く。
「てめぇ!! しねぇ!!」
どうやらもう1人の男は諦めていないようだ。まだ勝てると思っているのか分からないが、何とも単調な攻撃を仕掛けてくる。横薙ぎの斬撃だ。
「一文字解放、鎌」
その鎌は優に2メートルを超える巨大なものだ。草や稲を刈るのに使う農具とは比較にならない。なぜなら遥希のそれは農業用でなく戦闘用だからだ。
遥希はその斬撃を鎌の柄で受け止め、鎌を一気に振り上げる。すると剣が鎌の刃に絡め取られるようにして宙を舞う。その剣は天井に突き刺さった。
「まだやるか?」
「くそ……!」
遥希は鎌の先端を男の首に軽く刺す。間もなくすると男は両手を上げ降参の意を示した。
降参している相手にこれ以上の暴力は無意味だ。だから鎌をそっと消すと男に背を向け先ほどまで座っていた席に向かう。
と、周りの冒険者が悲鳴を上げた。きっとあの男が剣でも持って殺しに来たのだろう。
少しおいたが過ぎる。そう思い少しだけ強力な攻撃を仕掛ける。
「二文字解放、突風」
振り向きざまに男にぶつけてやろう。そう思ったのだがそこに男はいなかった。その男は地面に這いつくばっている。代わりに金髪の女性が立っていた。
思わぬ展開に遥希は焦る。このままではその女性を吹き飛ばしてしまう。
瞬間的にそう思い、突風のイメージを頭から消す。と同時に目の前の風も虚空に消え失せた。
「お前は誰だ?」
そう問くと、その女性は笑って見せた。
感想、意見何でも受付けています!
コメントよろしく!




