36話、思わぬ出会い
また話が進みません……
何というかうまく纏まらないんですよねぇ。
誤字脱字あるかもです
「ひい……! 助け………」
遥希は黒いモノの正体を探るべく、トップスピードで現場へと向かった。
そこには人の死体が数体。胸に穴が開いているものから、それが人間だったのかと疑ってしまうほど滅茶苦茶に蹂躙されたものなど被害は様々だった。
しかし、少し先のあたりにはまだ人がいるようで、悲鳴が聞こえる。そこには例の黒いモノの複数いるようだ。
「急ぐぞ」
「あぁ!」
遥希たちは黒いモノに捕捉されない程度の距離を開け着地すると、すぐさま走り出す。
「だ……誰か……」
不幸中の幸いなのか、まだそこには1人生きているようだ。その周りには当然、あの黒いモノがいた。
「あれは、トロールじゃないか!」
「トロール……。強いのか?」
「あぁ、トロールはオーガの上位にあたるもので、Cランクの奴だ」
Cランクと言われてもいまいちイメージが湧かない。しかしアウリールの言動から察するに、かなりの強者なのだろう。
見た限り、トロールは全部で5体。この周辺に木や岩などの障害物がないため、増えることはないだろう。
そうと決まれば、遥希は早かった。
「一文字解放、剣、剣、風、力」
「待て! 1人で行くつもりか!?」
何やら、アウリールの声が聞こえたが、この状況での優先順位はアウリールへの返事ではなく、魔物の殲滅だ。
「さぁ、どう料理してやろうか……」
「ギッ! ガァアアアア!!」
トロールたちは遥希の殺気を感じ取ったのか、10メートルほど迫ったところで振り返り、手にしている棍棒を振りかぶった。
だがその攻撃は空振り、遥希は攻撃の反動でよろけたトロールの頭に上段の構えからの斬撃をお見舞いする。
トロールは聞くに堪えない断末魔を残し絶命。
残りのトロールは遥希との力量の差を思い知ったのか、その場から逃げ去るようにして背を向ける。
「馬鹿だな。戦闘中に敵に背を向けるなど……。まるで殺してくれと言っているようなものだぞ?」
基本、遥希は魔物に躊躇しない。もしそれが戦いを恐れ逃げようとしているものであってもだ。
「この際だから、何か試してみるか」
遥希は逃げ惑うトロール1体に狙いを定め、掌を向ける。
「二文字解放、爆発。どっかーん」
遥希のイメージ通り、間の抜けた声と共にトロールは体の内部から粉々に吹き飛んだ。
トロールの脆さか将又爆発の衝撃か、その死体は木端微塵になり、空中で燃え尽きた。
「次。二文字解放、浄化」
浄化の意味、それは清めることや清潔にすること、または卑俗な状態を神聖な状態に転化する。
遥希はイメージとして、ドラ〇エの二フ〇ム的なことを想像していた。すると魔物であるトロールは綺麗さっぱりこの世から消え去った。
「次。二文字解放、落雷」
落雷は読んで字の如く落雷。イメージをミスすると自分に降ってくる可能性があるため、少し慎重に想像する。
なぜ一文字解放の雷にしないかというと、ただ想像し辛かっただけだからだ。雷、と漠然としたものではなく、落雷みたいに『何がどうなる』という言葉を選択した方が、断然イメージしやすい。
そしてこれまた遥希の予想通り、トロールの上空が入道雲で覆われたかと思うと、ビリッビリッという音とともに見事、雷が直撃した。
雷を食らったトロールはというと、黒焦げになり、時折痙攣していた。しかし生きているわけではなく、雷の影響だと思われる。
「ラスト、は疲れたからいいや」
遥希は面倒とばかりに、剣を無造作に投げた。その剣は見事トロールの頭を直撃し頭を切断、勢いが収まらず空の彼方へ飛んで行った。
「ふぅ、何となくテキトーにそれらしくやれば意外と出来るんだな」
遥希は一息つくと、さほど疲れた様子も見せていないのに肩をグルグル回している。
「お、お前………」
「ん? どうした?」
「どうしたじゃなくてだな……」
アウリールは何やら言いたげな顔をしている。が、口を魚みたいにパクパクさせているだけでそれから何も言ってこない。
遥希はそんなアウリールを一瞥すると、思い出したように振り返り、襲われていた女性に手を伸ばす。
「大丈夫だったか?」
「あ、はい……。ありがとうございます……」
「………………?」
遥希の手を取った女性は、遥希の顔を眺めたまま硬直している。そしてなぜか顔が赤い。
「むっ……。まさか……!」
アウリールは気づいた。女性のあの顔、あの目は、惚れているものがする表情だ!
どこかぽーっとしていて、しかしその眼はしっかりと遥希を捕らえていて、尚且つ顔が赤い。これは確実だ。
「怪我はないか? どこか痛いところとか」
「いえ、怪我はありません。ですがなぜか…………が…………痛い……」
「……?」
その女性は俯きながら小さくそう呟いた。そして遥希と繫いでいる逆の手を胸に当てている。
アウリールから見れば、一目惚れをしたのだろうと分かる。だか、相手はあの遥希だ。そうそう簡単に分かるわけがない。
アウリールの予想は的中していた。女性の表情や言動を見ても、遥希はキョトンとしている。
「あ、あの………その……」
「どうかしたのか?」
「えっと……」
その女性は遥希の顔をチラチラ見ながら、何か言いたそうな顔をしていて、口籠っている。
数秒後、決心したのか、その眼には強い意志が浮かんでいた。
「わ、私を貴方の奴隷にしてください!!」
「「………は?」」
「だから、私を貴方の……」
「き、聞こえている! 急に何を言い出すんだお前は!」
遥希はこれ以上ないという感じに混乱している。それもそのはず。遥希は健全な男児であり、色々疎いが言葉が通じないほど馬鹿ではない。
「………それは、どういう意味だ?」
「と、言いますと?」
「なぜお前が俺の奴隷になるんだ?」
「それはですね……。ほ、……」
「ほ?」
「ほ……ほほ……ほれ………」
遥希は首を傾げている。と同時に挙動不審の彼女を見て警戒している。
そしてそれからまたも沈黙。そしてついに女性が顔を上げると
「惚れてしまったからです!!」
大胆にも、大声でそう言った。
「………え?」
「ま、まさか、もう一度言わせる気ですか!?」
「いや、そうではなく……」
遥希は内心思っていた。この女、ビッチなのか? と。確かに容姿は整っていて、服装や雰囲気など高貴な家のお嬢様という感じだ。だが、いきなり大声で何を言っている。名前も知らない人に告白されても正直困るんだが……。
「ハルキ……」
「なんだ?」
「心の声が、本当に声になっているぞ」
「は……え?」
遥希は意味が分からないといった感じで、女性を見る。と、なんか途轍もなく落ち込んでいる。
「あ、すまん」
「あ、すまん、じゃありません!」
怒られてしまった。知らない子に。
そういえば名前を聞いていないと今更ながらに気が付いた遥希。
「ってか、名前教えてもらえんか? じゃないと呼びづらいしな」
「確かに、名乗っていませんでしたね」
その女性はお嬢様のように裾を掴み軽く会釈する。
「私は、人間国第2皇女、リリシア・リーラ・二グラム・イルレイドです」
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