第76話 離れる予定なんだ
チルダが頑なに拒んだこともあって、仕方なく下着を付けたままでの施術となった。
肌の露出が多い服装のお色気系なのに、意外とガードが固いようだ。
非常に残念だったが仕方ない。
ぶっちゃけ治療にそれほど支障はないからな。
「はぁはぁ……こ、これで、本当に強くなれるの……?」
治療が終了し、艶めかしく息を荒らげるチルダ。
「ええと、治療は上手くいったはずです」
「うん、完璧だったよ、コレットお姉ちゃん」
初めての治療だったにもかかわらず、まったくミスすることなくやり遂げてしまった。
どうやらコレットには才能があるようだ。
「あんまり実感は湧かな……ま、待って。なに、この感じ……? 身体の中を魔力がぐるぐる流れている……?」
魔法使いである彼女は、普段から自分の魔力を認識していたはず。
だからすぐに変化に気づいたのだろう。
「実際に魔法を使ってみてよ」
「今ここで……? 室内よ?」
「大丈夫。結界を張ったから。ファナお姉ちゃん」
「ん、心配ない。師匠が言うなら間違いない」
一応部屋の主に確認してみたが、すんなりと頷いた。
「本当に大丈夫なのよね? 火事になっても知らないわよ……?」
室内だからと遠慮したのか、チルダは初級の火魔法を発動する。
「ファイアボール!」
ゴウッ!
「……へ?」
火の玉が飛んでいき、部屋の壁に直撃して周囲に四散した。
もちろん結界を張ってあるので燃えたりはしない。
あれ?
大した威力じゃなかったな?
「ちょっ!? い、今のがファイアボール!? しかも威力を抑えたつもりだったのに!?」
「あ、抑えたんだね。道理で弱いと思った」
「いやいや、弱くはないでしょ!?」
「あれ?」
「師匠の基準で考えたらダメ」
ともかく治療を受けた効果はしっかり出たらしい。
「これは凄いわ……これを知ったら、全ての魔法使いが殺到する……」
「魔法使いもそうだけど、ファナお姉ちゃんたちのような前衛職にも効果大だよ」
もちろん身体強化魔法を習得する必要があるが、それくらいは自力で何とかできるはずだ。
「じゃあ、他のメンバーたちを呼んでも……?」
「構わないよ。今はまだコレットお姉ちゃんも練習中だから、タダで良いよ」
「ほ、本当に!?」
無論、俺が認めて独り立ちした暁には、しっかりお金を貰う予定だ。
今日の感じだと、恐らくあと数人試せば十分だろうけどな。
「施術一回で金貨五枚くらいかな」
「ききき金貨五枚!?」
コレットが仰天する。
「そそそそんなに貰えないよっ!?」
「いえ、それくらいの価値は十分にあると思うわ。むしろ安すぎると、予約が殺到して大変なことになってしまうわよ」
「な、なんだか、とんでもないのを身に着けちゃったみたい……」
その後、研修期間を無事に終えて、コレットは本格的に仕事として魔力回路の治療を行っていくこととなった。
ギルド長にも施術をして、その効果が認められたことで、冒険者ギルドのバックアップも受けられるように。
「はっはっはっは! これで儂ももう一花咲かせられそうだ!」
「……現役引退してますよね?」
冒険者ギルドが背後にいれば、たとえ悪い奴らがコレットを利用しようと思っても、そう簡単には手を出してこれないだろう。
「コレットお姉ちゃん、これからは一人で施術を行っていくことになるけど、頑張ってね」
「う、うん。すごく不安だけど……」
「大丈夫。コレットお姉ちゃんなら上手くやれるよ」
「そうかな……? でも、レウスくんのお陰で無事に職を得ることができちゃった。……最初は騙されてるとばかり思ってたけど。たくさん稼いで、早く借金を返したいな」
なかなか健気な娘である。
「また機会があったら様子を見にくるね」
「……? 治療は冒険者ギルドで行うから、いつでも来てくれていいよ?」
俺の言い方に違和感があったのか、首を傾げるコレット。
「あ、言ってなかったっけ? 僕、この街を離れる予定なんだ」
「え?」
少しでも面白いと思っていただけたら、↓の☆で評価していただけると嬉しいです!





