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月見山りりはヒトデナシ  作者: ふる里みやこ
ゼーヴィル編
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67話 ハローフレンズ

 



 日が顔に差し込んできたのでりりは目を覚ました。既に日は高く登っている。

 起き上がれば、アーシユルの代わりに銀髪のエルフ姿。フラベルタだ。


「あら。お目覚めね」

「……おはようございます」


 何故フラベルタが起きがけに側に居るのか?

 何故りりの着ているのと色違いのワンピースを着ているのか?

 疑問に思いつつも、とりあえずおよそ神の纏っていていい服ではないなと思いながら目をこする。


「おはよう。ご飯を食べたら。言ってた空中歩行を早速見せて欲しいわ」

「あぁ……夜は見せられませんでしたもんね」


 目的が判明した。

 服に関してはおそらく好意からだと勝手に判断する。

 聞いてみてもいいが、そうだったとしたらこのエルフ顔がいい感じに気持ち悪く崩れるだけだなと判断してスルーすることにした。




 あくびをして伸びをする。

 一度夜に起きていたぶん長く寝たので目覚めは良い。

 シャチのスワンプマンショックはアーシユルとのあれこれで相殺されたのか夢見も悪くなかった。

 とは言え寝起きだ。いきなり身体を動かす程りりは元気ではない。

 ので、空中歩行の代わりに、念力で創り出した巨大な手で自身を掴み、持ち上げた。

 身体がベッドから離れ、重みの全てが念力で創り出した手にのしかかる。


 モノ自体は、フラベルタのそれごと移動させる足場に着想を得て、なにも自分の足で移動する必要はないという発想に行き着いたものだが、やっていることは面倒臭がってちょっと遠くのリモコンを取っていたあの時と変わらない。

 こういうズボラさは力の有無で変化しないのだ。


 だが、傍から見ればこれは空中歩行ではなく空中浮遊。

 空中に立つというよりも明確に重力を無視しているように見えるのでズボラには映らない。

 況して、フラベルタはりりの念力を何らかの力で観測することができるので余計にだ。


「なるほど。念力というのは魔力を形にして。物質に干渉する魔法なのね」

「そう……ですね……多分。そんなノータイムで当てられると驚くなぁ……」


 念力のことをりり自身、まだぼんやりとしか把握していない。

 シャチの脳食い虫で得た知識も含め、魔力自体を受け止められる事と操ることができる見えない物質の特性を持っているという情報しかないのだ。


「そうね。もう空中歩行はいいわ。ひと一人を持ち上げられるのが容易(たやす)いと分かった以上。足場を出してやったというのも理解できるわ。今ので充分よ」

「そうですか? ご明察ですけど」


 寝起きでエンジンがかかりきらないという理由でもって違うことをやったそれはフラベルタのお眼鏡にかなったようだった。

 しかし、人を持ち上げるのが容易いと言ったフラベルタの言葉に、りり自身少し驚いている。

 こちらへ着て以来、確かに念力の出力が上がっているのだ。


 時間帯にもよるが、以前のようにマグカップ一個が精々というものとは比べ物にならない。

 徐々に強くなっているというよりは、強くなっていたものを初めて試して初めて知ったというものであり、身体が世界に適応していっているというのとは無関係。

 単純に、こちらの世界が空から降り注ぐ魔力濃度が強いだけだ。

 りりの目にもそれは光という形ではっきりと見えている。


 やろうと思えばもっと色々できるかもしれない。

 りりは勿論、フラベルタもそんな事を考えずにはいられなかった。




「じゃあ私はボクスワにでも行こうかしら。少しアイツとお話をしなくちゃね」


 アイツ。

 ボクスワの神、ウビーの事だ。

 神は神同士の、人にはわからない話があるのだ。


「あ、行く前に、アーシユルがどこ行ったか知りません?」

「あの子なら。34分前にシャチさんとお出かけしに行ったわ。昼には戻るそうよ」


 いやに正確な数字。

 恐らくは本当にぴったり34分前に動いたのだろうと判断する。

 神がそう言うのだ。時間は自身のスマートフォンの日本時間基準でしか理解できないりりには判断のしようがない。

 そもそもこちらには時計がないので余計にだ。

 皆が、日の高さや星の位置、腹時計等で時間をなんとなく把握しているにすぎない。


「そうなんだ……ということは1人かぁ」

「そうね。それとも居て欲しいかしら?」

「いえ、結構です……というのも、1人の時間って少し久し振りなんで、ちょっと満喫しようかなって」

「なるほどね。じゃあ私はお邪魔ね。撤収しましょうか。じゃあまたね。りり」

「はい。またねフラベルタ」


 名前を呼ばれ、友達という関係になってからマトモに名前を読んでいないということに気づきそれとなく「様」を付けないまま呼べば、フラベルタの顔は少し緩んだ。

 僅かな変化だが、もっている顔が顔なので破壊力が凄まじい。


 りりは扉を出てゆくフラベルタを見送りながら、ハルノワルドの男性陣の気苦労に思いを馳せたのだった。




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