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月見山りりはヒトデナシ  作者: ふる里みやこ
ゼーヴィル編
34/208

34話 羞恥

 



 アーシユルとイチャイチャしていると、音を頼りにシャチが海からノシノシと近づいて来た。


「おまえだぢ、おぎでいだのが……」

「まあな。しかも、ナイトポテンシャルの第1段階……仮説だがな。それを知らない間にやっていたそうでな……なんと足が動くようになったんだぜ」

「まだ立ち上がるまでは無理ですけどね」


 まだ少し痛む首を動かしてシャチを見上げる。

 シャチは、カースによるダメージから復帰していないので目をつむったままだが、それでも驚きの表情を見せた。


「おじえでがら、まだ、4じがんでいどじが、だっでないぞ!? じがも、じらないうぢにだど?! なにをじだ?!」

「それは……」


 言い(よど)む。

 流石にキスに没頭してましたとは言えない。

 アーシユルもそれは同じなようで、少しニヤケ顔になって目を逸らしていた。


「いわないづもりが!? ずるいぞ。おれにばいわぜでおいで!」

「シャチは自分の為に喋ったんだ。あたしらはシャチに教えたところで得はないからな」


 アーシユルの言い分に、シャチはキュイキュイと抗議の声を上げる。

 だが、口でも頭の回転でも負けているので、徐々に劣勢になっていっていた。




 放置していても話は進まないので、とりあえず言いたい事を口にする。


「それより……回復する為に無になる、無に近づくっていうの……その……アレ以外で出来そうにないんだけど……」

「えっ?」


 アーシユルは勢いよく振り返った。

 予想外だったのか、目をまんまるにして口を開きっぱなしというコミカルなフリーズを見せる。


「面倒……見てくれるんだよね?」

「お、おう。あたしは言ったことは守るぜ! だがアレは正直キツ……」

「じゃあ、明日もよろしくお願いするね。アーシユル?」


 顔を妖艶に歪ませ、アーシユルの腕にそっと触れた。

 アーシユルの首筋にゾクゾクとしたものが走る。


 人間は貪欲な生き物……それは、今まさにりりに当てはまっていた。


 アーシユルは、ある意味で魔人を目覚めさせてしまった……と、そう思いながら顔を引きつらせて苦笑いする。


「あぁ……あたしに任せろ。ちゃんと付き合ってやるぜ」

「……ぼんどうに、おまえだぢ、なにをじでいだんだ?」

「知らん! あたしらは宿に戻る。シャチは夜行性だろ? 適当にしてろ。りり。肩を支えたら歩けるな?」

「うん。多分」


 淡い光の中、アーシユルはその髪に負けないほど顔を赤くしていた。


「よし。なら、パンツ脱がせるぞ。洗ってから帰らなきゃ宿屋の主人に怒られるからな」

「え!?」


 アーシユルがとんでもないことを言い出したので、少しエロモードに入っていたりりは素に戻って抗議する。


「でもアーシユルは男の子だし! シャチさんも居るし!」

「無性だと言っているだろう……シャチ! 約束はちゃんと守るから、お前は寄生虫渡してきたやつの情報集めとけ。無駄にはならんはずだ」

「ぞう……だな……」


 言われ、シャチは早速仲間に会いに海に入っていく。

 仲間から馬鹿にされるのは明らかだが、脳に寄生虫がいるかもしれないとなると背に腹は変えられないはずだ。


「ほれ、シャチは行ったぞ。パンツ脱いで(すそ)()くれ」


 りりは今1人では立てないので、自分で股を洗うことは出来ない。どうあってもアーシユルという支えが要るのだ。

 だがそうなると、見られることになってしまう。キスをして理性が飛んでいた時ならともかく、今はそこまでは出来ない。


「嫌なら上からだな。寒いから気をつけろよ。まだ火のジンギ買ってないから」

「は?」


 聞き返そうとすると、アーシユルは既に水のジンギを起動していた。行動の速さは相変わらず。


 軽減したとはいえ体はまだまだ痛むのだ。

 水ジンギが発動されるまでの残り約7秒の間ではパンツを脱ぐことは出来ない。


 アーシユルはジンギ片手にりりに近づく。

 何をするのかと思っていると、(ろく)に動かないりりの両足の間に足が()じ込まれ、無理やりに広げられていく。

 やっと動き出した程度の足の力では、閉じることは叶わない。


「いやあああ! 信じられない! 馬鹿! アホ! 変態!」

「さっき動いてただろ。痛いのも少しのはずだ」


 言う通りだがこれは気持ちの問題だ。痛みの話ではない。

 しかし、無常にも空間は歪み、放水が始まる。

 股間に容赦のない水流が浴びせられた。


「ぎゃあああ!!!」


 羞恥心から、女の子が出してはいけないような声を上げて叫ぶ。

 抵抗しようと右手でガードしようとするも、キスの時と同じく、左腕1本で押さえ込まれてしまう。

 アーシユルは、余った右手で無遠慮にりりの内股とパンツをゴシゴシと(こす)っていく。そこに邪念は無い。


 りりは考えるのをやめた。


「おそらきれい……」




 気が付けば、アーシユルに支えてもらいながら帰路に着き始めていた。

 下半身は、感覚こそ戻っているが未だ力は入りにくい。

 だが、ヨロヨロとではあるが、なんとか歩けるのが他の何よりも嬉しく思えた。


 その感情を膨らませ、代わりについ先程の出来事は記憶から消去する。

 今のりりには必要なことだった。




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