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195話 立場が入れ替わると

 



「ハッ!?」

「おはようりり。いや、おそようと言うべきか」


 ここはアーシユルの部屋。

 りりが記憶しているのは夜の海岸だったはずだが、今は昼間近だ。


「なん……あ、あー……思い出してきた」

「りりもあたしの苦労を知ったか」

「はい……その、なんかごめんなさい」


 ベッドの上に直って頭を深々と下げる。


「いや謝罪はいい。この分だともう一晩くらい付き合ってもらうことになるっていうだけだ」

「アレをもう一回!?」

「いいや、やってもらうぜ。りりにはそれをする義務がある」


 アーシユルが笑顔のまま、りりの両肩に手を置き、迫る。


「……はい。その通りです」

「よろしい! じゃあ飯にしようか。おーいプロヴァン! メナージュ! 昼までのつなぎをくれ!」


 下の階から畏まりましたと声がする。


 昨日何があったのか。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 目を瞑ったまま口づけをする。

 手をアーシユルの頬に置いたままなので、見た目的にはりりがアーシユルの唇を奪う形になっていた。


 いつものように舌を侵入させると、ビリリと電流が走るような感覚がして、あわてて舌を引っ込める。


「んん!? 何今の!?」

「んん? なんかいつもと違うな」

「アーシユルも? だよね! いつもより」

「すごいよね」「鈍いな」


 意見が食い違う。


「え? だって電流が走るような……その……」

「感覚だろ? いつもあたしそれを感じてたんだけど、今回はぬるりとした感覚だけだった。これはこれでその……気持ちがいいと思う。暴力的じゃないしな」

「……え?」

「……んー?」


 意見を整理するも、話は食い違ったままだ。

 今度は実験的にもう一度、ゆっくりと、しかし途中で中断することのないようにという約束をしてからキスをする。


 舌が触れると、やはり電流の走ったような刺激が襲いかかった。

 直ぐに逃げたくなるほどの快楽だが、約束通り暫くは耐える。

 耐えている内に慣れてくるかと考えていたが、これは甘い考えだった。それどころか刺激はどんどんと加速度的に増加してゆき、その内に頭がショートしていく感覚に襲われ、何も考えられなくなってゆく。


 体中から力が抜け、いつもよりずっと早い段階で漏らした。

 アーシユルはそれに気づいたのか、この時点で唇を離す。

 2人の舌の間には唾液の橋がかかる。


「っぱぁ……すまん。ちょっと夢中になった……」

「は……はひ……は……」


 アーシユルが口元のよだれをゴシゴシと拭いている中、りりは腰を抜かし、視線を彷徨わせ、体を震わせながらへたり込むのみだった。


「……おかしいな……変な感覚がするな……なんかこう……襲いたい気持ちだ……」

「まっへ……ひゅうへい……ひゅうへいさせて……」


 へとへとになりながら、なんとか右手を持ち上げ待ったをかける。


「そうだな。ちょっと休憩したら解った事を纏めようか」

「はひ……」




 束の間の休憩。

 りりの息が整ってきた所で、アーシユルが説明に入る。

 りりはそれを寝転んだまま聞く。

 行儀は悪が、りりとしてはそれどころではない。


「つまり、あたしとりりの間では快楽に対する反応が違ったわけだ」

「……というと?」

「これは体感だが、あたしの肉体が感じる快楽は、りりの肉体の感じる快楽の5倍だ」

「……は?」


 いやいやそんな馬鹿な。

 こう続けたかったのだが、全くもって否定できなかった。何故なら実際に数値化したとするならそのくらいに感じたからだ。


「きっと人間とヒトとの感じ方が違う。もしくはあたしの体が成人していないから……って考えるのが普通なんだが、寧ろあたしの体は成人してる方が感覚が強いと思うんだよな」

「……ん? ってことは、アーシユルずっとこの感じだったの?」

「どの感じかは知らんが、快楽が強すぎて逃げたくなる程っていうならそうだぜ?」


 絶句する。

 今までりりはアーシユルの1/5程の快楽を楽しんでいたのだ。必然、アーシユルはその5倍の快楽に毎回耐えていたのだ。

 アーシユルがりりに酒の禁止令を出したのも頷ける話だった。


「いままでこんなのを耐えてたんだね……」

「まぁ……その、りりとのキスだからな」

「アーシユル……」


 今更ながら照れくさく感じる。

 アーシユルとの愛を再確認した感じだ。


「ってなわけだ。続きだぜ?」

「は?」


 りりの思考が停止する。


「当たり前だろう? 目標はあたしが気絶するまでだぜ?」

「はぁ!?」

「さありり。逃 げ る な よ ?」

「あああああああああ!?!?」


 少し休憩したとはいえ、りりは腰は砕けたまま寝転んで聞いていたのだ。簡単に組み伏せられてしまう。


「待ってアーシユル! 待って! 待っててば」

「ハハハ。断る。今ならあたしの顔だろうが全然行けるぜ」

「いや私もそうなんだけど、正直きつ……」


 両手を地面に押さえつけられ、唇を奪われる。

 侵入してくる舌は歯を食いしばり防御していたが、アーシユルの舌が唇に触れているだけでも相当な快楽が押し寄せる。


 歯で防御していたにもかかわらず、あっという間に自然と口が開き、アーシユルの舌を迎え入れる。

 そして案の定襲ってくる爆発的な快楽に苦しむ。

 今のりりの肉体は成人していない。故に、快楽が溜まってもそれが生まれた瞬間に自然消滅していくので、体力の減少はまだ少ない。

 しかし、それでも暴力的な快楽は変わることがないどころか、先と同じ様に加速度的に増加してゆき、間もなくりりは気を失った。




 かと思えば、同じく強い快楽で強制的に目覚めさせられる。

 目が覚めたと同時に感じるのは、アーシユルから送られてくるぬるりとした舌と唾液。

 体中を絶え間なく痙攣させつつ逃げようとするものの、組み伏せられているのでほぼ無駄な抵抗だ。

 程なくして再び意識が飛ぶ。


 これを9回繰り返し……。




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




 今に至る。


 他のメンバーは朝食は食べた後だが、りりとアーシユルは昨日うんと疲れたので、朝食の時間がズレている。


「あぁ……スープが美味しい……」

「夜から何も食べてないからなー」

「ていうか何が1番アレって、アーシユル……というか自分の顔がこれでもかっていうくらいツヤツヤしてるのが本当なんかもうアレ」

「りりはアレした後はいつもツヤツヤしてニコニコしてたぜ?」

「うぁー」


 本当の意味で普段の自分を鏡で見ているようで、りりは妙な嫌悪感に苛まれる。

 そこへ、ケイトがやってきた。

 今までの高身長と真っ黒な見た目とは真逆で、透き通るような白い少女の姿だ。


「はぁい、りり。アーシユル」

「おはようございますケイトさん。っていうかまだその姿なんですね」

「まぁね。ある意味私本来の色だからねこの色は。それこそ生まれ変わった気持ちで今居るわよ」

「それは何より」


 そんな会話にアーシユルが着いてこれない。


「その姿のままってどういう事だ?」

「あーケイトさんは自分自身の姿っていうのがしっかりと理解できているはずだから、フィジカルハイを使って肉体形成したら元の姿に戻れるはずなんだよ。最も、その分食事いっぱい摂らないとだけど」

「という事はりりもあたしも出来るのか?」

「理論上は……でも私もケイトさんと同意見で、せっかく違う体になってるんだから暫く楽しんじゃおうって」


 つまり、まだ試していないだけで、フィジカルハイを強く発動させることで変身が出来るという事だ。


「ついでに言うと、アーシユルの体が成人した後の姿っていうのが気になるっていうのもあるかな」

「あーそれは気になるな。じゃああたしもこのままでいようかな。りりが元の姿に戻るまでって感じで」

「お嬢様方、すごい話をされてますな」

「魔人はすごいって聞いてましたけど、ここまでとは思わなかったっす」


 プロヴァンもメナージュも目を細めて虚空を見ている。


「ハハハ……ところでケイトさん。何か用があったんじゃ?」

「そうよ? ちょっとりりも一緒についてきてもらおうかなと思ってね」

「何処へ?」

「お城よ」


 コミカルな動きで両手でお城の方角を指差すケイト。


「あー、恋人に会いに行くのか」

「そうそう。今のある意味本来の姿の私も見てもらおうと思ってね」


 遺伝子異常が起きなかった場合のケイトの幼少期の姿というのが今のケイトのとる形態だ。

 無論面影が有るので、ケイトを知るものなら確かにケイトだと判る容姿をしている。


「でも色が真逆だし……」

「それも含めてよ。彼が望むなら、私はまた黒くなるわ。今までずっと黒かったんだもの今更よ」

「相手色に染まるってやつですねぇ……文字通り」


 比喩表現ではない。


「じゃああたしも行こうかな。王に新しい魔人メモを買い取ってもらわなきゃだからな」

「因みにいくら位で?」

「500はいける……と言いたいところだが、りりがやり方を忘れてる以上、そこまで取れないな」

「死者の蘇生とか転生とかねー」

「書けて、月食の時にしか使えない程度だな」


 アーシユルは2つのメモ用紙を取り出してヒラヒラとさせる。

 1つは前までのの纏め。2つ目は新しいものだ。

 といっても新しい物の方は、新しい魔法が書いてあると言うよりは、殆どが魔法の応用や戦術などが書かれている。

 言ってみれば基本編と応用編だ。


「実際行って値段をつけてもらうか。もちろん金貨200枚からで」

「それが良いわね」




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