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金木犀
庭の金木犀が匂う。
秋、街角でふと漂うそれを
お菓子のようだと
胸いっぱい吸い込んでは
駆けていた
遠い日
寂しげなオレンジ色の小花を
小瓶に集めてみたり
うちにも植えてと
ねだっては
断られたりしたものだ。
確かに、そのかおりは
庭に常にあるには強すぎて
そぐわないような気がする。
大人になった私は
甘くむせるような匂いに
少しばかり眉をひそめ
それから
お菓子みたいだね、と
子どもらと笑う。
いつも、少しだけ
嘘をつきつつ
生きている。
庭の金木犀が匂う。
秋、街角でふと漂うそれを
お菓子のようだと
胸いっぱい吸い込んでは
駆けていた
遠い日
寂しげなオレンジ色の小花を
小瓶に集めてみたり
うちにも植えてと
ねだっては
断られたりしたものだ。
確かに、そのかおりは
庭に常にあるには強すぎて
そぐわないような気がする。
大人になった私は
甘くむせるような匂いに
少しばかり眉をひそめ
それから
お菓子みたいだね、と
子どもらと笑う。
いつも、少しだけ
嘘をつきつつ
生きている。