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梅雨ってこの花のための季節だと時々思う。
雨の中、
そこだけ
光がぱっと差したよう
気高い紫、
雪の白、
夏の空の薄い青、
オオカミの瞳のアイスブルー。
それから、
ほかのどの青とも違う、
目の醒めるような
あざやかな、
けれども、やさしい、
青。
ああそうだ。
この季節、
灰色に濡れた街角では
この色に出会えるのだった。
土の性に合わせて色を変え
日を経るに従いうつろい、
目を引くそれは実際には花ですらない、
それでも、
この青は
今このとき
おまえだけの色だと
懐かしく
通りすぎる。




