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不運からの最強男  作者: フクフク
エスタニア王国中編
157/222

告発_01



「アルベルト様、こちらです」


 黒い影が、アルベルトをそこへ導く。


「これで、八個」


 時限装置付きの小型の魔道具が、天井裏の隠れたスペースにあった。

 アルベルトは、ヴィリバルトから預かったボフール製の魔道具を手早く起動する。キラキラと白い粉が舞い、小型の魔道具を包み、その機能を停止させた。

 瞬時に凍らせる威力から、ヴィリバルトが魔法を提供したのだと確信する。

 何度見ても幻想的な景色に感嘆の声を上げそうになるが、アルベルトは我慢した。


「時間がない。すぐに次を探せ」

「御意」


 黒い影たちが、アルベルトの指示に従い、競技場の方々へ消えていく。

 アーベル家の影。精鋭部隊が、その鼻を利かせ『武道大会爆破テロ』の阻止にあたっていた。

 ユリウス王太子殿下の容認を取ったヴィリバルトが、ギルバルトに依頼したのだ。

 アーベル家の影が、他国で動く。その意味は計り知れない。

 アーベル家当主の決断に、否はない。

 アルベルトは、凍った小型の魔道具を見つめ、あの日、ユリアーナの告発を思い出した。



 ***



 ユリアーナに案内された場所は、寂れた礼拝堂だった。

 以前は孤児院として活動していたが、亜人の子供を保護していたことがわかり、廃墟となった。

 ユリアーナは目を伏せ「私が訪問しなければ……」と、言葉を詰まらせる。

 庇護欲をかき立てる彼女の姿に、アルベルトは片腕に結ばれた赤いリボンを無意識につかんだ。


「アルベルト様?」


 沈黙するアルベルトに気づいたユリアーナが、声をかけた。

 アルベルトは「すまない。なんでもない」と、首を振り、ユリアーナに話を続けるよう催促する。


「ユリアーナ嬢、あまり長居はできない。本題に入ってほしい」

「あっ、はい」


 ユリアーナは返事をするも、次の言葉をなかなか出せないでいる。

 すると、アルベルトが礼拝堂の椅子に深く腰をかけると、腕を組み目を閉じた。

 その行動に、ユリアーナは表情を隠すこともなく、泣きそうな顔で微笑んだ。

 アルベルトの心意気が態度でわかったからだ。

 ユリアーナの葛藤を理解し、心の整理ができるまで、急かすことなく、待つことを選択したアルベルトの厚意に、ユリアーナは、祭壇前に膝をつくと祈りだした。

 ユリアーナが祈りだしたことを察知したアルベルトは、もうひとつの問題について考えはじめた。

 時折、ユリアーナから発せられる微量の『魅了』に気づいたからだ。

 アルベルトは、彼女の行動から無意識に『魅了』を振りまいているように思えた。ユリアーナの『魅了』は、悪意がなく、感情がそのまま『魅了』に感化され、垂れ流されているようだった。『まるで訓練されていない赤子のようだ』と、アルベルトは感じた。

 ひとつの可能性を思い出す。

『本人が自覚していない可能性もある』と、ヴィリバルトは言っていた。

 しかしその可能性は、ほぼないとしてアルベルトたちは却下した。

『ステータス』がある限り、外的要因で他者から干渉されたり、能力そのものが封印されていなければ、自身の能力を把握できないことはありえないからだ。

 万が一、王族であるユリアーナが、他者の干渉を受けているとすれば、すなわち、犯人は王族しかいない。

 彼女の過去の背景から、弟のトビアスが怪しくも思えるが、物心がつく前と考えれば、彼女の母親である側妃エレオノーラとの結論が高くなる。

 アルベルトは、グッと唇を噛んだ。

 このまま自覚しなければ、将来ユリアーナは精神崩壊が起きる。能力にのまれてしまうからだ。

 魅了などの精神干渉系のスキルは、幼少期から徹底的にコントロールを叩きこまれる。徐々に汚染される精神との闘い。それが精神干渉系の能力だ。

 だから、幼少期から力をコントロールして、能力にのみこまれないようにするのだ。

 ユリアーナの年齢から考えれば、すでに汚染が進行している状況だろう。


『早急に叔父上へ相談しなければ……』


 そう結論づけたアルベルトは、祈るユリアーナの姿を捉えた。

 片腕にある赤いリボンが、静かに揺れていたことにアルベルトは気づくことはなかった。 



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