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不運からの最強男  作者: フクフク
日常編
119/222

裏迷宮_02



 その中は洞窟とは思えない景色が広がっていた。

 いわゆるオアシスだ。

 この場所は、異空間かもしれない。

 ディアーナたちは、不安なようで戦闘態勢を崩してはいない。

「ご苦労さま」と、ハクの頭をなでると「ガウッ?〈もう大丈夫なの?〉 」と、上目遣いで俺を見る。「もう大丈夫だよ」と微笑みながら、ディアーナたちに安全であることを説明する。

 そうこうするうちに、ニコライとスラ、テオ兄さんも無事にセーフティポイントへ入ってきた。

 すると、スラがすごい勢いで俺に飛び乗り、肩の上から抗議している。


「ピッ〈肉、すてた〉 」

「いやこの場合は、しかたないよ」

「ガゥ〈スラ、しかたない〉 」

「ピピッ〈主、肉すてずにできる〉」

「評価はありがたいけど、セーフティポイントがいつ消えるかわからなかったしね。それにほら大量にあるよ」

「ピッ!〈肉!〉」

「ハクも食べて、体力回復してね」

「ガウ!〈食べる!〉」


 スラは、オークの肉を回収せずに来たことを怒っていたようだが、オークの肉を出すとあっさりと引いた。

 スラは、どこまでいってもスラだ。

 ハクとスラが、オークの生肉を食べているうちに、テオ兄さんたちに近づく。

 まずは状況確認と今後どうするかの話し合いと休憩が必要だ。


「テオ兄さん、ニコライ様、後方の処理ありがとうございました」

「ジーク、ここは安全なんだね。いつまでこの状態でいられるのかな」

「はい。魔物は入れない場所のようです。出るのも僕たち自身のタイミングで決められます」


 セーフティポイントは、迷宮内の魔物が介入することのできない場所であり、中に入ってしまえば安全が確保され、出るタイミングは自分で選べる。ただし、誰かひとりでも外に出れば、セーフティポイントは消失する。

 俺の説明に「そうか」と、テオ兄さんが大きく頷き、その場に座り込む。

 相当疲れているようだ。

 ニコライも剣を鞘に納め、ドサッと座り「ここ洞窟内だよなぁ」と、ぼやいている。

 テオ兄さんが「あぁそうだ」と、腰にある魔法袋を俺に差し出した。

 不思議そうに魔法袋を見つめる俺に「ドロップ品、回収しておいたよ」との補足が入った。

 さすがテオ兄さん、俺たちが回収しなかったドロップ品を拾ってくれたようだ。

 疲労を回復するため、ここでいったん休憩と軽い食事をすることにした。

 エマは疲労困憊のため、今回は俺が率先して食事の用意をする。

 さて何を食べようかな。『収納』には、料理人お手製の数々の品が入っている。

 テーブルの上にテーブルクロスを敷き、カツサンドとフルーツサンドを並べ、サイドにポテトフライとコールスロー、飲み物はフレッシュジュースだ。


「うわぁー。美味しそうです。これ全部、ジークベルト様発案の品ですよね」

「そうだね」


 疲労困憊のはずのエマが、料理を前に目を輝かせ、はしゃいでいる。

 ずいぶん元気がいい。

 さきほどまで「もう動けません」と、弱音を吐いていた人物だとは思えないほどだ。

 料理オタク魂だね。

 レシピを教える約束をして、エマに全員を呼びに行ってもらう。



「チビが考える料理は、外れがなく美味いよな」

「ニコライ様、そうですよね! ジークベルト様のレシピは、今まで思いつかない料理方法や組合せですが、その味は抜群です。あぁー私も新しいレシピで料理が作れるんです。アーベル家にお勤めできて幸せです」

「エマ、そう興奮してはだめよ。ニコライ様もすみません」

「いや、いいんだけどよぉ。エマはチビの婚約者じゃねぇのか」

「滅相もございません。私では身分が違いすぎます。それに五歳も年上ですし」

「チビは、その辺は気にしないだろう」

「はい。ジークベルト様は、いまは婚約者は増やさないとのことです。ですので、いまは婚約者候補ですわ」


 ニコライまた微妙な話を持ち出すな。

 エマが委縮しているだろ。

 ディアーナはなぜか複数の婚約者を望んでいるんだよね。

 婚約者の立場からすれば、複数って嫌じゃないのかな。

 乙女心はよくわからない。

 話を振られないように、俺はそーっと、テーブルを抜け、スラとハクのそばに近寄る。

 スラはカツサンドがお気に召したようで、その小さな身体を伸ばし、カツサンドを三個、一気に包み込んでいる。

 食べ物は逃げないので、お行儀の悪い食べ方をしないようにと注意する。

 躾は大事だ。

 ハクは食べ終わったお皿をジッーと見つめている。

 その様子に微笑みながら、成長期に遠慮するのはダメだよと伝え、足りなければ、おかわりを要望するようにと、フルーツサンドとカツサンドをお皿に追加する。

 最近のハクは、食欲が旺盛で、一般男性の三倍は食べるようになった。

 この様子だと、それでもまだ足りないのかもしれない。


「マイナス十階層、ニコライどう思う?」

「テオが考えている通りだろ。突発的に魔物が現れたり、魔物の数からして、裏迷宮に間違いないだろう。噂では聞いたことがあるが、まさか初心者の迷宮にこれがあるとは思ってもみなかったぜ」


「裏迷宮?」と、テオ兄さんたちの会話に俺は割り込む。


「裏迷宮、冒険者の中ではわりと有名な話なんだ。迷宮には数々のトラップがあるがそのひとつが裏迷宮につながっているとのことだった。ただ裏迷宮を語る冒険者が少なくその存在自体、信憑性を問われていた」

「そうなんですね。もしかすると裏迷宮から脱出できない冒険者が多いのかもしれません」

「そうだね。おそらく裏迷宮を踏破した者は少ない。この一時間で倒した魔物の数は、数百を超えている。低ランクの魔物だからなんとか持ちこたえたけど、ここが初心者の迷宮でなかったら、全滅の可能性もあったね。さて、どうしたものか」

「どうするもなにも、裏迷宮を踏破するしかねぇだろ」

「それはわかっているんだよ、ニコライ。ただここはマイナス十階層だろ。このような戦闘を最低十回は行うってことだよ。油断すれば全滅もある。ここは念入りに計画を立てないと、ジーク、この休憩場所は各階にあるのかい?」

「えっ? ちょっと待ってください。調べます」



 ***********************


 あります。

 ただし、セーフティポイントが出現する場所、時間などは、ランダムです。


 ***********************



 各階層に、セーフティポイントはあるようだ。

 安心する。

 ただ今回は近くにたまたま出現しただけで、毎回タイミング良くとはいかないだろう。


「あるようですが、セーフティポイント、この場所ですね。出現はランダムのようです。今回はたまたま運がよく近場に出現したようです」

「これはまた厄介な感じだね。出現場所や時間さえ見当がつけば、そこから踏破までの計画を立てようと考えていたんだが……」

「なぁ、チビ、テオ、俺が聞いた話だが、裏迷宮は一階層しかないってことだぞ。そもそもマイナスの階層表示自体おかしくないか」

「その話は本当かい。そうなると、マイナス十階層とは、どういうことなんだ。ジーク、マイナス十階層で間違いはないんだね」

「はい。マイナス十階層です」


 俺の答えにテオ兄さんが腕を組んで考え込んでいる。

 ヘルプ機能どういうことだ。



 ***********************


 確認しました。

 地図表示は間違いありません。

 おそらく降下中に裏迷宮のマイナス十階層へ転移したものと思われます。

 迷宮一つに対して裏迷宮の階層が一つとなります。そのため、各階に繋がる階段が存在しません。


 ***********************



 ってことは、この階層を脱出すればいいってことだよね。

 それなら無事に脱出できそうだ。

 しかし、このマイナス表示は、わかりにくい。



 ***********************


 ご主人様の『地図』スキルは、スキルポイントで『索敵』と合成したものですので、一般的な『地図』スキルとは若干異なります。

 特別仕様で、本来の表記が表示されています。

 通常は階層表示がありません。


 ***********************



 うわぁー。俺、余計な情報を外に出してしまった。

 階層表示がないってことは、誰かが意図して隠しているんだろ。

 関わりたくない。だけど、テオ兄さんたちには、事実を告げないと納得してもらえない。

 あぁーー。詰んだ。これは詰んだぞ。


「テオ兄さん、ニコライ様の話は本当のようです。今調査したところ、ここは裏迷宮のマイナス十階層で間違いはありませんが、各階ごとに、異なる迷宮とつながっているようです。アン・フェンガーの迷宮の裏迷宮は、マイナス十階層です。現にこの階層には、階段がありません」

「その話が本当なら、すごい発見だよ。裏迷宮は誰かが意図してつくった可能性があるね。魔物を出現させるには、召喚魔法が必要だし、この規模を人工的につくったのであれば、これはすごいよ」


 やはりテオ兄さんは、その可能性に気づいた。

 階層表示を隠していることは伝えていないのにだ。

 この情報提示で、俺の責任は果たしたよね。あとはご自由に調査してください。

 俺を巻き込まないでと、心の中で祈った。



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