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不運からの最強男  作者: フクフク
日常編
101/222

叔父と伯母_02



 ドン、ドン、ドカーン!

 ザッ、ザッシューー、キンッキンキン──。


 修練場に剣と魔法の轟音とふたつの影が重なる。


「くっ、ヴィリバルト腕を上げたなっ」

「姉様こそ、実戦から遠ざかってるとは到底思えませんよ」

「その油断が命とりになるぞ!『氷刃』」


 伯母の氷魔法が至近距離で叔父に炸裂した。

 あれは一昨日、俺たちが受けた魔法だ。次々と氷の刃が地面に刺さり、叔父の周りから土埃が舞い上がる。

 さすが叔父。あの距離でひとつも被弾していない。


『疾風』


 土埃が円を描く。地面に突き刺さった氷の刃が宙に舞い、10mほど上で止まる。

「チッ」舌打ちをした伯母がうしろに下がる。すると止まっていたはずの氷の刃が、伯母に襲いかかる。その勢いは『疾風』の影響により、速さが増していた。

 辺り一面にズドドドドッとの地響き鳴り、土が舞う。伯母が襲いくる氷の刃を剣で防ぐが、数本が服にかする。


「姉様、甘いですよ」


 氷の刃に気を取られていた伯母のすぐそばに叔父が移動していた。

 叔父が剣を振り、キンッと、伯母の剣が空を舞う。

 決着がついたと誰もが思った瞬間、叔父の首筋に短剣があてられていた。


「その言葉そのまま返すぞ、ヴィリバルト」


 伯母が不敵に笑う。

 叔父が剣を鞘に納めながら「姉様、引き分けですよ」と伝えた。


「なに!?」

「うしろを見てください」

「いつの間に……無詠唱か」


 そこには鋭く尖った土の塊が、伯母のすぐうしろまで迫っていた。

 大きくため息をついた伯母は、叔父の首から短剣を引く。すると土の塊が砂に戻った。


「この根性悪っ!」

「姉様も人が悪いですよ。短剣を服の中に忍ばせているなんて」

「それぐらいしなければ、お前には勝てん」

「まだあの時のこと根に持ってるんですか」

「うるさいぞ。ヴィリバルト! 今回は引き分けで許してやる。そもそもお前は相手に対しての誠意が足りんのだ! そもそもあの時だって──」


 伯母の怒涛の口攻撃が始まった。幾ばくか戦いより白熱しています。

あれには近づかないほうがいい。


「すごかったですね」


 ディアーナが両手を胸に組んで戦いの余韻を味わっている。その横でエマがコクコクとうなずいていた。


「そうだね。いろいろと参考になったよ」


 俺が同意すると、横にいたハクが興奮した様子で話した。


「ガルゥ! ガゥッ!〈すごかった! ハクも『氷刃』使う!〉」

「うん。でも今日はそっとしておこうね」


 今伯母に近づくと絶対に巻き込まれる。それだけは断固阻止だ。

 言い聞かせるようにハクに伝えると、俺の意図を察したハクが返事をした。


「ガウ〈わかった〉」

「じゃ屋敷に戻ろう。ディアさえよければ一緒に魔力循環の修練をしよう。風魔法がうまくできないって言っていたよね」


 俺の問いかけに「はい」と弱々しげな返答がくる。


「魔力循環がうまくできるようになれば『魔力制御』の取得が可能になるんだ。そうすれば風魔法の制御がうまくできるようになりレベルアップにつながると思う」

「本当ですか」


 説明を聞いたディアーナが食い気味に俺に迫る。

 俺は無言でそれにうなずいて、その矛先を変えるように隣にいるハクの頭をなでる。


「ハクも一緒にやろうね」

「ガルゥ!〈やる!〉」


 俺たちは屋敷に向かう。するとエマが遠慮がちに声をかける。


「あの本当に、あのままでよろしいのでしょうか」

「うん? ルイーゼ伯母様が突然仕掛け始めたことだからね。一時間ほど戦っていたんだから満足したんじゃない」



 今からおよそ一時間前、俺たちがいつもの修練場に赴くと、すでに叔父がいた。

 ただまとう空気が尋常ではなかった。その雰囲気に誰も声をかけず佇んでいると、後方から伯母の姿が見えた。

 そしてそれは突然始まった。伯母が剣を抜き、叔父に切りかかったのだ。

 唖然としている俺たちのすぐそばで始まった戦いに、やはりこうなったかと、念のため『守り』を施しながら、修練場より遠のいた場所に土魔法でベンチをつくり、観戦した。

 ふたりの戦いは、最初は純粋に剣のみだったが、中盤から魔法が入り、後半は白熱の攻防となった。

 ブランクがあるはずの伯母の動きは、現役騎士に勝るとも劣らないものであり、それを受け流す叔父も相当の腕だった。

『お属初め』から、叔父のステータスやスキルレベルは、だいぶ上がっていると予想する。

 きっと新しいスキルもたくさん取得しているだろう。叔父のステータスを鑑定しようと決める。

 残念ながら、伯母のステータスも確認できていない。

 一昨日挨拶しに行った時、『鑑定』をするタイミングを逃してしまったのだ。

 というのも、意外や意外、クルマン伯爵との馴れ初めは、とても伯母らしいエピソードで心を掴む話であり、不覚にも聞き入ってしまい、気づけば夕食の時間になっていたのだ。

 しかも話が佳境に入りつつあったため、そのまま西の屋敷に泊まり続きを催促した。この俺たちの行動に伯母は苦笑いしながらも付き合ってくれた。大恋愛と噂が立つのもうなずける内容だった。

 そんなこともあり、伯母のステータス確認はできなかったのだ。

 それに伯母の事前情報から、だいたいのステータスは把握できる。

 近衛騎士団所属のため、レベルは20以上であることは間違いないし、魔属性も水・土・氷だと予想ができる。高い戦闘スキルを所持していることもわかる。

 ともあれ伯母は、この戦闘で落ち着くらしい。

 アンナ曰く「ルイーゼ様は、一戦交えれば落ち着きますので」とのことだった。

 どこの戦闘狂ですか、まったく。

 次は、誰かの剣の修練時に父上、いやアル兄さんと剣を交えてそうだなぁと、遠くない未来を想像する。

 当分は伯母に振り回されそうだ。



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