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第16話「特訓」

 Side 銀条院 ユカリ


 夜が明け、混乱している協会本部ではなく、聖ヒメノ学園のグラウンドでユカリは天野 猛、楠木 達也、水樹 綾香、デューネ・マリセイド達と特訓していた。


 あんな事件があった後だが学園長達は快く学校を開けてくれた。


 特訓内容は順番交代に戦い続けることだ。


(やはり皆さん強い!!)


 確かにユカリはパワーアップした。


 だがそれだけだった。


 それだけで皆との差を簡単には埋められはしなかった。

 

 でも嬉しかった。


 自分がここまで戦えるようになったことに。


 同時に不安にもなる。


 自分でさえこれなのだ。他の変身ヒロイン達も同じくパワーアップしている。

 力に溺れて悪事に走るヒロインは出てくるだろうと。


(それにしてもギャラリーが多いような・・・・・・)


 最初はギャラリーは少なかったが、今はどんどん増えてきている。

 教師陣も混じっていた。


 これでは特訓どころではないので昼を前に引き上げることになる。



 運動の汗を落とすために学園内のシャワールームを借りる。

 女学園であるために猛と達也とは順番交代の形を取った。

 

「これが出待ちと言う奴でしょうか?」


 綾香の言う通り出待ちされていて先にシャワールームから出てきた猛と達也は女子生徒達に揉みくちゃにされていた。

 

 デューネは、ハァと「ずいぶん有名人になってしまったな」と溜息をついた。


「随分――雰囲気が変わったわね」


「藤堂さん」


 金髪のポニーテールの少女。

 ヒーローネーム、セインティ・ブレイズ。

 藤堂 アスカが現れた。


「昨日から急に力が増したの――それはアナタも同じようね」


「ええ――そうですけども――」


「まあそれはそうとして男のヒーローがとても珍しいみたいね、みんな」


「それは分かりますけど人気がありすぎる気が・・・・・・」


 その事をユカリは不審に思った。


「ヒーローは人気職だからね。動画で活動とか配信されたりとかもあるし、それにあの四人のことかなり広まってるから・・・・・・まあ学校の一件もあったけど」


「な、なるほど」


 アスカの説明にユカリは納得する。


「それはそうと、国防軍の連中――苦戦してるみたいね」


「ええ。入れ替わりに佐久間さんが突入するつもりですし、それが――彼達とのお別れの日にかと」


「そう――」


 それがこの短い日常の終わりになるのだろう。


 とても寂しいことであるが、彼達には彼達の生活があるのだ。


 それにこの世界に留めると言う事はこの世界の厄介ごとに巻き込むことになる。


 この世界のことはこの世界の住民がなんとかするのが筋だろうとユカリは思っている。


(けれども・・・・・・もう少し彼達と色々とお話したかった)


 それだけが唯一の心残りであるが仕方ない。


(せめて立派に戦い抜きましょう――)


 そうユカリは決意する。

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