４７．お届け物は使役獣に

「久しいな、アンよ」

そう紡がれた響石の声に私は首をかしげた

どこかで聞いた事のある声

はっきりしてしっかりとした張りのあり力強く凜とした声

誰？とラムムンに目をやるが紫色の核

悩んでるね、ラムムンも

響石を運んできた使役獣にも見覚えがないし

うーん、誰なんだろう

「使役獣使、バルトロメイだ

　君的に思い出すのは裁判より久しいなという言葉だろうか」

そう紡がれた言葉で、はっとした

ラムムンもそうだったらしく

私たちはまさに、顔を見合わせるなことをして

あーっと言った

あの時のおじさんだ

最後の最後までいてくれて、説明してくれた

立派な人だ

「王より早くお前に連絡を取りたかった故に

　響石連絡をさせてもらった

　至急連絡してほしい」

うん、それはいいけど、どうしたんだろう

「先日、お前の元に王の書簡が届いただろう

　その答えはお前にとって正しい選択だと私も思う」

おおお、それは嬉しい

うん、だってねぇ

私が王様のもとで、がんばっても多分無理

なんで、王様が呼び寄せるのかもわからない

だから、お断りしますな返事をして

さっと返した

「それにより、お前の説得と拉致のため

　親衛隊および魔法医師が向かう

　学長の方には連絡はすませてあるからその点は心配するな

　お前は、一点のみについて連絡をしてくれれば

　それでよい」

はーい、簡潔なのは助かります

それで何を返したらいいのだろうか

「年かさの使役獣使にはお前を知らぬものが多い

　その響石を消して、お前を語れ」

え・・・なんですか、それは

えーと、自己紹介をしたらいいってことなのかな

それで何か変わるんだろうか・・・

おじさーん、簡潔なのはいいんだけど、言葉足らずだよー

「アン、良き教師に、良き使役獣使になったことに私は嬉しく思う

　同じ地で働けずとも、お前の功績は

　お前が送り出す生徒たちにより理解できる

　お前はお前らしく表現しろ

　ただ、それだけでよい」

そう響いて、響石は沈黙した

そう言われてもねーとラムムンと見ると照れてる

ちょっと人が悩んでるのに

ハネムンたちと、一緒にお使い使役獣と戯れないでよ

私も触りたい

「とりあえず、おばさんに言おう

　うう、もっと早くにもってきてよーって言いたいけど

　たぶんぎりぎりだよね

　何食べる子なのかなぁー」

もそもそと並べると、物欲しそうな顔

うんうん、食べていいのよ

ラムムンがどぞっと言ってくれたみたいで

もしゅもしゅ薬草たべて、水飲んで

あと鉱石をいくつか食べて幸せそう

だけど、私を見て、くわぁぁって鳴く

「早くって」

ああ、お返事ね

「ちょっとだけまって

　ラムムン、回復とお風呂してあげてて」

「行くよー」

あ、おいて行っちゃ駄目と

「コムムン、頼める？」

ぷよりと揺れ

「まかしてっ」

と自分の声が響く、うーんちょっと違和感だけど

うん、任せるね

さーてと、お話してこよー

「おばさん、今、ちょっといい？」

とんとんと階段をおりると、ちょうどおばさんがいた

「どうしたんだい？」

お互い移動しながらの会話

「王都の使役獣使さんから連絡がきてんですけど

　王様側が拒否を納得できなかったらしく

　人が来るそうなんです」

「あらあら、大変ねぇ」

といってるけど、言葉以上におばさんの雰囲気は固い

そして、いつの間にか食堂に来てて

まわりに人がいっぱいいた

あれ？なにこの状況

「アンちゃんの、意見は変わらず拒否なんだよな？」

お泊りの冒険者さんが聞く

私は当然ですと頷く、あちらに観光に行くなら別だけど

そんな暇はないし、行く予定はなしです

というと、皆がどっと笑った

「普通は、がんばって目指すんだけどなぁ」

「まぁ、それでこそ、アンちゃんだ」

とか言われてちょっと納得できないけど

まぁこの街にいる予定なので

それはそれでいい

こちらの世界、冒険者さんたちは、旅行というか

街をめぐって、クエストや、その時々の目的に合わせて

移動するけど

それ以外の人って、ほとんど動かない

旅行という感覚はないんだよね

あるとしたら、王侯貴族さんたちの避暑とかかな

そんな感じであんまり関係ないんだよね

「使役獣使さんたちに、自己アピール

　えーと、私はどんな人物ですよ

　っていうのを響石にいれて、送り返してねって言われて

　どう表現していいものかと思いまして」

そう言ってまわりをみると

なんだろう、この素敵な笑顔は

「響石持ってこい」

「何する気ですか？」

「まぁまぁ」

とりあえず、入れてみたけど、本当にこれでいいのだろうか

お、おじさん、悪ふざけって思わないかな