28.常識再確認
「おはようございます」
意気込んでみたもののちょっと、恥ずかしい
昨日、もう前後不覚に抱きついてわぁわぁ泣いちゃったもんなぁ
「あら、起きたのかぃ、今日はお休みにしたっていいんだよ」
そうおばさんは変わらない口調で
だけど、心配してるんだよ、と全身で伝えてくれた
「起きちゃいました」
笑ってそう言うと、おばさんも、習慣だからねぇと笑い
じゃぁ一緒してもらおうかね、なんてウィンクされちゃった
やることは変わらない、シーツ剥ぎ取って
五部屋毎にコムムンに入ってもらって
剥いだシーツをラムムンに渡す
だから、今コムムン待ちでおばさんとおしゃべり中
「起きちゃったら、何かしてたいんですよね
つい落ち込んじゃうんで」
そう本音を漏らす
「その気持ちは痛いぐらいよくわかるよ」
おばさんも、そんな時があったのだろう
そんな表情をしていた
だけど、いつも朗らかで元気で豪快で楽しいおばさん
私も見習いたい
「アンちゃん、寝かせてからねぇ
みんな集まってくれたんだよ
その時、あんたの言ってたバイキング形式だったかな
使ってみたよ
ありゃぁ、うまく使うといいねぇ」
「えっそうなんですか、嬉しい」
バイキング形式はいっぱい食べる冒険者たちには向かないって言ってたけど
試してくれたんだ
でも、それぐらいイレギュラーな事態だったのかな
なんて思って、少しだけ申し訳なくなる
「ギルドのお人が二人、アンちゃんの親友の学校のカトリーナさん
それにガラス職人さんが来てくれたよ
まぁ、中にはそれ以外のお人もいっぱい来てて
聞き耳たてて、最後には口挟んでたけどね」
おばさんは隠し立てなく報告してくれる
説明のうまい人ってうらやましい
共感して、理解して、そして自分のものにする
私が自分で成長したなって時は、いつもそうだった気がする
知識的には、詰め込みでどうにかなるけど
理解できてるかといえば、難しい
それは、魔法に言えることで、なんとなく某魔法少年とかゲームとかのイメージで
使ってるけど、本質を理解したら強くて疲れなくて
かっこよかったり、使い勝手が一気に良くなった
だから、使役獣を使って役に立てるを命令してやってる状態だったのかなって思う
私とラムムンの関係みたいにお互いが理解して行動してるなら
いい関係となれる
魔法もそういうことなんだろうなぁーってぼんやりだけど思った
「あとで、みんなんところお礼しに行っておいで」
「はい、そうします
コムムンたちをつれてきてくれてありがとうございます」
「あらあら、起きてたの?
私も気配に鈍くなったのかしら」
私は慌てて首を横に振る
「本人たちが連れてきてくれたって言ってたので」
「ああ、そういうことかぃ
ならよかったよ」
ほっとするおばさん、気配に敏感じゃないと、いろいろ困ることが
宿の中でもあるもんね
と思うと、この世界はいい人ばっかりじゃないんだなって気づく
私が甘いんだなぁて、今更ながら思えた
「甘かったですね、私」
「私らもね」
おばさんはそういう、最初に注意、警告できなくて悪かったねと
「痛い目みないと、わからなかったと思います」
私は正直に言う、たぶん、掛け値なしの本当
悪い人がいない、とは思わない
だけど、今まであった人や関わった人が
いい人過ぎた
だから、私の緊張の箍は緩みきってた
「そうかもしれないね
誰も欠けなくてよかったね」
おばさんは、ただ、そう言った
慰めも、そして曖昧な嘘も言わず、真実だけ
その優しさが嬉しい
「また、お手数かけますけど常識教えてください」
そういうと、びっくりされた
「私らが昨日そう決めたんだよ
あんたは、やっぱりすごいね、そしていいね」
ぎゅっと抱きしめられた
ラムムンたちがずるーいというように
飛びついて来てべっちょりとくっつく
おばさんは豪快に笑う
おじさんは何事、と厨房から顔を出し、私たちの様子を見て
笑い挨拶した
日常が戻ってきました、ほっこりほっこりー




