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薄井君は気づいているけど、気づかないふりをする。~高校三年生に上がったはずが、二度目の高校二年生を過ごしている件~  作者: 池中織奈


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文化祭でも気づかないふりをする ④



「博人、これ、面白いね」

「そう?」

「うん。こうやってこの周辺の歴史を纏めるだけで、一つの出し物になるっていうのも面白いし。結構細かい所調べているのも面白いと思う」


 和装喫茶を後にした僕と乃愛は、展示を見てそんな会話を交わす。

 乃愛は簡単な展示物を見ても楽しそうに見ていた。乃愛は相変わらず僕の腕に自分の腕を絡めている。


 ちょっとだけ暑苦しいのだけど、それを口にしたら乃愛が悲しそうな顔をしていたので今日ぐらいいいかと結局ひっついていていいよと言ってしまった。


 なんだろう、僕も文化祭だから普段とは違って少し気分が高揚しているのかもしれない。

 文化祭だからこそ、普段とは違う気持ちになるだろうし。というか、僕がこうなのならば、他のクラスメイトたちもこんな風にはしゃいでいるのだろうか。

 そういえば、クラスメイトの中にもだれだれに告白するとか、そういうのを言っていた人もいた気がする。



 ……女神様を案内している杉山が、そうやってはしゃがなきゃいいけれど。

 だってもともと色々やらかしているのに、また色々やらかされたら正直僕は困る。





「乃愛は割となんでも楽しそうに見るよね」

「ふふ、博人が一緒に居るからだよ? 私、博人が傍にいなかったらこんなに楽しくないんだよ? だから博人はもっと自分が凄いんだって言うのを実感したほうがいいんだよ?」

「……いや、僕は凄くないから」

「むー、博人はあくまで自分を普通だと思い込みすぎだと思うの。博人は凄いのよ」



 ……そんなに言われても僕は普通だと思う。

 それにしても乃愛がにこにこしながら、僕にひっついているから周りからの視線が結構酷いことになっている。

 



 そうやって展示をみたりしていたら、急に外から大きな音が聞こえてきた。

 外を見たらなんか校庭に丸いものが起きている? 何あれ。校庭凹んでいるんだけど……何か落ちてきた?


 僕は遠い目になる。

 というか、こんだけ大きな音が鳴っても誰も気づいていないところを見るに明らかに異世界関連だしなぁ……。



 考えてみればこの場には、杉山たちだけではなく、異世界の女神様もいるわけで……あと杉山たちは知らないけれど、乃愛も此処にいて。うん、ヤバいぐらい異世界の主要人物の人口密度が高いと思う。



 そんなことになっているからこそ……これだけなんか引き寄せられているのだろうと思う。

 でもあれか、本当にこの世界をどうにかしようって異世界人がいるのならば、逆に杉山たちのいない場所でやらかすのかなぁ。裏でこそこそ黒幕みたいにやらかしているとか、もしそういうことがあるのならば、この世界はどうなるのだろうか……とちょっと不安になった。




「乃愛、あれは?」

「お姉ちゃんを追いかけてきただけだと思う」

「へぇ……」


 別に女神様を追いかけてきたのはいいけれど、登場シーンもうちょっとどうにかできなかったんだろうか。校庭にめり込む形で登場した不思議生物。なんか球体っぽい。それから手足が生えていて、なんか不気味。というか、あれ何。


 そう思いながら乃愛を見れば、「お姉ちゃんのペット」などと言われる。女神様は、そういう不思議生物も愛でているらしい。なんか不思議生物と杉山たちで喧嘩している? うん、放っておこう。




「――乃愛、次どこいく?」

「んー。じゃあ……」



 特に問題はなさそうなので、あの生物や女神様達は完全に置いておくことにする。というか、一般人の僕には関わり合いもないものだし。乃愛もどうでもよさそうにしているし。


 そうやってぶらぶらしていたら、両親がやってきた。



 両親も含めて四人でぶらぶらと学園祭を見て回った。乃愛は両親が来ても相変わらずにこにこしていた。


 それから少しして、自由時間が終わったので乃愛と一緒に教室に戻る。


 相変わらず杉山たちは戻ってくる気配がないらしい。そのせいで僕らのクラスの催しは中々悲惨なことになっている。杉山もそんなに女神様と一緒に居たいのならば戻ってくることなどせずに、異世界に行ったままで良かったんじゃないか? などと僕は思う。

 それに『勇者』としてではなく普通の高校生として此処にいるつもりならば、そういうところはちゃんとすべきじゃないのかなぁ……って感じである。



 ちなみに売り上げが落ちているので、クラスメイトから乃愛に「メイドをやってほしい」などという嘆願もあった。ただし乃愛は「嫌」と言っていて、それで終わった。



「博人以外のメイドになんてこういう催しでも嫌だもん」


 そんなことを言っていた乃愛を無理強いする気もなかったので、クラスメイトからの乃愛を説得してほしいと言う視線は無視した。



 それからはのんびりとした時間だった。

 一度だけ杉山が戻ってきたけれど、女神様の接客をして終わっていた。……他の客はいいのか? そして女神様ってこの世界の通貨持っているんだろうかなどと疑問に思ったが僕は素知らぬふりをしておいた。

 ついでに謎生物も一緒にきていて、何とも言えない気持ちになった。



 そんなこんなで文化祭の一日目は終わった。明日も文化祭はあるのだけど……無事に終わるだろうか?






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― 新着の感想 ―
[一言] 杉山くんの印象がどんどん悪くなっていくなぁ。 さすがにこれは。 主人公がどんどん乃愛に甘くなってく。 ラブラブだぁ。 クラスメイト達の目にはどんな風に見えてるのか気になる。読んでみたいな…
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