最終話 バレンタインデーの夜に-1
連載開始から2年。
今度こそ最終話です。
去年、まだ初々しくも心から楽しめた私たちのバレンタインデーから、早くも一年の時が過ぎようとしていたバレンタインの前日。
バレンタインデーを迎えるにあたって、去年と明らかに今の私たちの関係が異なることは、私たちが結婚している大切なパートナーだということ。
毎日お互いに寄り添い想いやりながら共に過ごす時間は、とても愛おしくて大切なものだ。
今日は去年と同じくお菓子作りに勤しむ日にする予定だけれど、去年と決定的に違うところはアリスと一緒にお菓子を作って、お父様やお母様、お義父さんとお義母さんをはじめいつもお世話をしてくれているユリアーナとミーゼに感謝の気持ちを伝えようと思っていることだ。
「ねえアリス。私は去年クッキーを作ったじゃない? アリスはカップケーキで。今年はガトーショコラを作ろうと思うのだけれど……」
「いいと思う! やっぱり普通のバレンタインデーのお菓子はは定番のチョコレートで作るのがいいかもしれないわね」
「うん! じゃあ早速材料を揃えにいきましょうか?」
「そうね、ちゃんと下調べして準備しましょう……!」
私たちはにっこり微笑み合うと、軽く口づけを交わして各々の出かける支度に取り掛かった。
着替え終わってメイクも済ませると、私たちは厨房にいるパティシエのところに向かって必要な材費と作り方を聞く。
材料もきっと頼めば王城の厨房にある大きな冷蔵庫から出してもらえるに違いないけれど、やっぱり特別な日には自分たちですべてを行いたいもの。
作り方については自信がなかったからパティシエの指導を受けながらすることにしたけれど、材料はメモを取ったものの通り買いに行くことにした。
「王都でお菓子の材料を買うといったらやっぱりあそこよね……?」
「「クローリー・スイーツ!!」」
私が去年クッキーの材料を買いに行ったのと同じお店。
古くからある名門のお菓子屋さんでありながら、お菓子作りの材料が豊富に揃っているという、お菓子作りをする全ての人々の味方。
名門菓子店という名に恥じないストーリーを、以前どこかのパーティーでオーナーと会う機会が以前あって、それ以降いろいろな相談に乗ってもらったりするときとかによく聞く話はこうだ。
クローリー・スイーツの品揃えはオーナーが選びに選び抜いた食材、そして多くのお菓子作りのためだけに開発された道具を揃えるために世界中をオーナーが飛び回って仕入れた一級ものの商品から、理想に一歩でも近づこうとして自ら開発した商品まで、どんなお菓子を作る時にもこの店に来れば必要なものが全て揃う。というお店を目指しているすごいお店だ。
このことをきっと知らないであろうアリスに、お店に向かう道すがら話をする。
「へぇ〜! あのすごいお店の裏にはそんな苦労があったんだね……」
「うん。まさか自分で道具を作ったりしてるなんて、私も聞いたときには信じられなかったわよ。お菓子屋さんがお菓子を作る道具まで作ってるなんて、ね」
「料理をする人とかって、やっぱりその仕事のメインの部分しか分からないから、後ろでやっている細々とした努力は分からないものなのよねぇ……」
「私たちも表ではきっちり人前に出るようなお仕事をこなしてるけど、実際には書類仕事とか会議とかもかなりある訳だし」
頭をよぎる苦労の数々。
やっぱり私は……。
「やっぱり私はアリスがいてくれたからこそ毎日頑張れてるなぁって、いつも思ってるよ」
「きゅ、急にどうしたの!? はずかしいよ。……わたしも、ミラのおかげで毎日が幸せよ」
「えへへ、大好きよ、アリス♪」
「わたしも大好き。ミラ♪」
人前でキスをするのは、私はよくてもアリスが恥ずかしがって怒るので、繋いでいる手と指をきゅっと強く、何度も握り返すことで愛情を表現した。




