第三十四話 風邪の日は
今回は長めの4000字です。
別に作者が風邪をひいた訳でもなく……最近寒くなって来たのでこういうシーンがあったらいいなぁという願望を書きました(笑)
朝六時、いつも通り体内時計で起きた私は、顔を洗い、近衛騎士の制服に着替え、簡単に朝食を食べてミランダ様を起こしに行こうと廊下に出ようとした所で体の異常に気が付いた。
「あら……? 体が、ふらふらして…………?」
片手で軽く壁に手をついて、反対の手でおでこに触れてみる。
「あつ…………。熱でしょうか」
でも休んではいられない。首周りや腋の下に軽く冷却魔法をかけ、熱が下がるのを期待してミランダ様の寝室へ向かった。
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「ユリアーナが熱を?」
「はい。なんだかふらふらしていたので事情を聞いて、軽く診て見た所、かなりの高熱を出していまして。無理に向かおうとしていたので部屋に無理矢理押し込めて安静にさせています」
「それで、大丈夫なの?」
「はい。今日一日ほど静かにしていればユリアーナなら治るでしょう。幸いただの熱のようですし」
「そう。よかった……」
では。と言い残して、近衛騎士団の医務官、シュライセ屋を出た。
私はため息をつき、思案を巡らせる。
(無理、させすぎちゃったかしら……。最近忙しかったし、あまり休めていないのかも…………)
考えれば考えるほどたくさん熱が出るような原因が思い浮かぶ。特に私のせいで。
(しっかり気づいてあげていれば…………)
ううっ、これでは主失格ね……。いつも助けられてばかりで、ちっともユリアーナの事を考えてなかった……
「よしっ、ユリアーナの看病に行こう!」
私は、スクッと立ち上がり、着替えて早速シュライセの元に向かう。
シュライセに看病のノウハウを教えて貰わないと。
朝食はもう食べていたそうなので、お昼前、私はお粥の入った器とお水を載せたお盆を持ち、普段は入らない近衛騎士の女性団員用の部屋の廊下を歩いていた。
王城には、王城で働く様々な人々が暮らす為の部屋があり、多くの人々が暮らしている。
ユリアーナも例外ではなく、上位の近衛騎士用の部屋に住んでいた。
街に家族も住んでいるらしいけれど、毎日ここから私の部屋に来てくれているらしい。
この一角は、女性の近衛騎士達の部屋が集まっているようで、この時間は警備の者以外は訓練に参加しているらしく、人通りは無かった。
「ここね」
お盆を片手で持ち、コンコンコン、と軽くノックして返事を待つ。
…………
返事は無い。
「寝ているのかしら?」
私はそう判断すると、そ~っと静かにドアを開け、ユリアーナの部屋に入った。
この部屋に来るのは初めてね。
部屋には、女の子らしく、可愛らしい装飾が施してあった。
特に目を引くのが、私が何年か前にユリアーナの誕生日にプレゼントしたくまのぬいぐるみだ。
ちょっと大きめのだけれど、大事そうに棚の上に飾ってくれている。
嬉しい……♪
思えばユリアーナの私生活の事を何も知らなかった。
(これを期に、ユリアーナ達の事をもっと知らなきゃなぁ)
家族の事を知るのは大切な事だから。
リビングから寝室へ続くドアを静かに開け、中の様子を伺う。
す〜、す〜。と静かに可愛い寝息が聞こえてきているので眠っているんだろう。
起こすのも悪い気がしたので、ベッドで寝ているユリアーナの横にある机にお盆をそっと置いて部屋を出た。
出る前、少しユリアーナの頭を撫でて来たのは私だけの秘密だ。
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自然と目が覚めたので、時計を見て時間を確認する。
時刻はお昼ちょっと過ぎ、隣の机を見ると、お粥とお水が載ったお盆が置いてあった。
多分シュライセあたりが置いて行ってくれたんだろう。
身を起こし、膝の上にお盆を持って来ると、少しずつ食べる。
「おいしい……」
予想外の美味しさについつい声が出てしまった。
(シュライセ、こんなに料理上手だったかなぁ?)
そういえば、ミランダ様はちゃんと勉強をしているのでしょうか……。心配になってきた。
ミランダ様は頭が良いのに勉強をしたがらない。
いつも甘えてきて、ついつい私も忘れてしまったりするのだ。し、仕方ない。
ミランダ様についてあれこれ考えていたら、いつの間にか食べ終わってしまっていた。
「ごちそうさまでした」
お盆を机に起き、横になる。
ふあぁ、だんだん眠くなって来た。
私の可愛い可愛いご主人様。
今、何をしているのかなぁ……
「んぅう?」
「おはよう、よく眠れたかしら?」
「はい。…………って、ひゃぁぁ!?」
目を開けると、なんとミランダが私を見ていた。
「な、なんで私の部屋にミランダ様が!?」
「ふふふ、看病しに来たのよ」
「えっ、私のですか?」
驚いてミランダ様の顔を見る。
よくよく見ると、頬がほんのりと少し紅く染まっていた。
私は今日ずっと思いつずけて来たことを口にする。
「ええ」
「……あの、ミランダ様」
「なあに、ユリアーナ」
「申し訳ありません、風邪なんてひいてしまって……」
「…………」
私は言葉を続ける。
「私がいないせいで、他の皆さんに負担をかけてしまったり、ミランダ様にご心配もかけてしまいました……。これじゃいけないのに…………」
言葉を紡ぐうちに申し訳無さが溢れてしまい、俯く私。軽く唇を噛む。
と、私の頭にミランダ様の、細く、華奢な手が載せられた。そしてそっと手が優しく私の頭を撫でてくれろ。
驚いたが、顔を見たら泣いてしまいそうたったからミランダ様を見ることは出来なかった。
「あのね、ユリアーナ」
「……はい」
「私は、いつもユリアーナの助けがあって暮らしているわ。いろんな事を教えてくれたり、遊んでくれたり。疲れた時にはいつも励ましてくれる」
「そんな……こと…………」
「いつも優しくしてくれるけれど、時には厳しかったり、いけないことをした時は怒ってくれる事もある」
なんだか目に涙が溜まってきた。
こんなに想っていてくれたなんて……私はなんて幸せ者なんだろう。
でも、そこから続いた言葉に、つい泣いてしまった。
「あなたは、常に誰かを支えている。あなたの後輩もいつもあなたに支えられている事を分かっているはずだし、もちろん私だっていつも助けられているわ。でもね」
「……?」
「ユリアーナも、私たちに支えられてほしい。私たちを頼ってほしい!」
「ミランダ……様…………」
「私たちは家族よ。王城という同じ屋根の下でくらす、ね。ユリアーナが頑張るのもいい。でもあんまり無理はしないで欲しい。ただでさえあなたは頑張りすぎなのよ」
「そんな……無理なんて……。私はただ、自分の役割を…………」
そこまで言ったところで、ミランダ様がいきなり私の顎に指を添え、クイっと下を向いていた私の視線を顔ごと上げる。
その顔は真剣だった。今までに見た事が無いくらい。
「言ったでしょう、支えられて欲しいって。あなたの役割は私付きの近衛騎士としての仕事を果たすこと。……あのね、ユリアーナ。私は正直言うと他の事はしないで欲しいわ。だってそれは他の人でも出来る事よ」
「でも……」
「そう、でも。あなたの性格は分かっているわ。長い付き合いでもあるから、ね」
「…………」
「するなとは言わない。でも少しくらい我慢してくれないかしら。ユリアーナ自身のためにも、あなたの家族でもある私の為にも休んで欲しい。今日の熱もシュライセが言うには無理のしすぎですって」
うっと言葉に詰まる。そう言えば最近、近衛騎士隊の用事が色々あったから……
「私のせいって事もあるかもしれないけれど、やっぱり家族の無理は見過ごせないわ」
「そんな……ミランダ様のせいせじゃ…………」
「ううん、私がユリアーナをよく見ていなかったからでもあるわ。ごめんなさい」
ミランダ様が頭を下げる。慌てて頭を上げて貰う。
ポロリと目に貯まっていた涙が一筋、流れ落ちた。ミランダ様がこんなにも私の事を考えてくれている事が純粋に嬉しかった。
「私こそ……色々ご迷惑をおかけしていて……申し訳ありません…………」
「ユリアーナ、私はごめんって言葉はあんまり好きじゃないわ」
あっ、とミランダ様が言わんとする事を思い付いた。
やっぱり、ミランダ様はとっても素晴らしい方だった……。私はなんて良い主に出会えたんだろう。
そして、私の涙腺が決壊した。どんどんどんどん涙が溢れてくる。
そして、私はその言葉を口にする。
「ありがとうございます」、と。
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泣き出したユリアーナをそっと抱き寄せて胸に抱く。
もう、心配かけさせるんだから……
始めはちょっと恥ずかしがっていたけれど私が離そうとしない事を感じたのか大人しく泣いていた。ー
しばらくして泣き止むと、
「申し訳ありません」
と、謝ってきたので、ぺちっとおでこを小突く。
「ごめんなさい、じゃないでしょう?」
私が指摘すると、ユリアーナは顔を赤くしながら、
「ありがとうございます、ミランダ様」
と、はにかんだ。
実は今回あまり納得していない……と言うのも会話のシーンがあまり納得出来る掛け合いでは無くて。
ですが今はこれが最高の状態だと思うので投稿しました。いずれ付け足すなりしてより感動出来るシーンにしたいなぁ…………
ブクマ、評価ポイント、ご感想ありがとうございます!
次話もよろしくお願い致します。




