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私はお兄ちゃんをそんな子に育てた覚えはないよ!?  作者: さいとう みさき
第十章絶対合格しなきゃいけないよ!!
70/75

10-1迫る時間

長澤由紀恵15歳(中学三年生)。

根っからのお兄ちゃん大好きっ子。

そんなお兄ちゃん大好きっ子が学校見学で兄の高校に行くと‥‥‥


「私はお兄ちゃんをそんな子に育てた覚えはないよ!」


ここから始まるラブコメディー。

さいとう みさき が送る初のラブコメ小説!


あいあんくろぉ~!?(由紀恵談)

 

 私は今窮地に陥っていた。



 「まずお嬢さんの状態ですが、完全に新型ウィルスですね。現在これに特化した薬が無い。そしてこれの悪い所は感染が広がりやすいと言う事ですね」

 

 お医者さんからとんでもない話を聞かされる。

 回復傾向にいるとは言えそんな訳も分からないウィルス感染しているとは思ってもみなかった。


 「それで先生、由紀恵は受験までに何とかならないのでしょうか?」


 「うーん、このウィルスについては症例が無いので何とも言えませんが、一般の風邪薬が効くと言う事は大人しくしていれば完治出来るだろうと言う事ですね。なのでもう三、四日大人しくしていてもらえば‥‥‥」


 「先生、それじゃ試験に間に合わないんですよ!」


 思わず口をはさんでしまった。

 でもこれだけは譲れない。

 私は何が何でも桜川東校に受かってお兄ちゃんと一緒に高校に通ってそして地元の大学に一緒に行くんだ。

 

 私が今まで頑張って来たのはその為だ。


 そんな訳の分からないウィルスなんかに私の希望にあふれた未来をつぶさせるわけにはいかない!



 「先生、どうにかならないものなんですか?」


 お母さんだって必死だ。

 私は確実に桜川東高校に行くと思って滑り止めの私立高校は一つも受験していない。

 だからここで受験出来ないと何処の高校にも行けなくなってしまう。


 私とお母さんは真剣な表情でお医者さんの先生を見ている。



 「うーん、そう言う事情でしたら可能な限りの処方はします。少し強い薬ですが回復を促しますのでそれを投与してみましょうか」


 「ありがとうございます、先生」


 「お願いします先生!」


 お母さんも私も今は藁をも掴む気持ちでお願いをする。

 そして私は注射を受け、さらにいくつかの薬をもらって帰宅するのであった。



 * * * * *



 「どうなんだ由紀恵?」


 部屋で寝ているとお兄ちゃんがノックして入って来た。

 ちょうど目が覚めた時なのでよかった。

 

 あの後薬が効いていたのか、午後はほとんど寝ていたようだ。

 なのでお兄ちゃんが夕方戻ってくる頃には少し楽になっていた。


 でもまだまだ体はだるい。


 「うん、少しは良いみたい」


 「そうか、だけど今は体を治す事だけに集中しよう。気持ちはわかるがそんな状態じゃ試験受けさせてもらえなくなっちゃうからな」


 「‥‥‥うん」


 気持ちは焦っている。

 でもこればかりはどうしようもない。


 だからお兄ちゃんの言う通りにするしか無い。


 それでも私はお兄ちゃんに聞いてしまった。


 

 「お兄ちゃん、私が一緒に桜東に行けなくなっちゃたらどうしよう‥‥‥」



 「由紀恵‥‥‥」


 「嫌だよぉ、ずっとお兄ちゃんと一緒に同じ高校に行きたかった。ずっとお兄ちゃんと一緒に並んで登校したかった。なのに、なのにぃ~」


 私はだんだん涙が出てきた。



 「いやだよぉ~」



 するとお兄ちゃんは私の顔に手を載せて来た。

 そしていきなりアイアンクローをかます。



 「痛い痛いいたいぃぃっ! お兄ちゃん、何すんのよぉっ!」



 「よし、気持ちは元気になったな? 馬鹿言ってないで早く風邪治せ。俺を地元の国立大に行かせてくれるんだろ? そして一緒に同じ大学に通うんだろ?」


 「お兄ちゃん?」


 「病は気から。ここでお前が弱気になってどうする? そんなのは由紀恵じゃないぞ?」


 「お兄ちゃん‥‥‥」



 この兄は可愛い妹にいきなりアイアンクロー仕掛けてきてこれか!?

 ここはいたわって抱きしめてくれたりおでこにチューしてくれる場面でしょうに!



 私は痛む頭を両手で撫でている。

 

 でも‥‥‥


 「うん、そうだね。早く治して絶対にお兄ちゃんの高校に行くんだから!」


 「やっと由紀恵らしくなってきたな」



 そう言って私たちは微笑むのであった。

    

  

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