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私はお兄ちゃんをそんな子に育てた覚えはないよ!?  作者: さいとう みさき
第七章クリスマスは家族で一緒にいなきゃいけないよ?
53/75

7-8ブービートラップだよ

長澤由紀恵15歳(中学三年生)。

根っからのお兄ちゃん大好きっ子。

そんなお兄ちゃん大好きっ子が学校見学で兄の高校に行くと‥‥‥


「私はお兄ちゃんをそんな子に育てた覚えはないよ!」


ここから始まるラブコメディー。

さいとう みさき が送る初のラブコメ小説!


くっ!

親友その一覚えてなさい!!(由紀恵談)


 クリスマスパーティーはつつがなく行われた。



 「なにこれ美味しい!」


 「本当ですね! このピザも薄くてカリカリだけどすごくおいしい!」


 「クリスピーピザで美味しいのは本物‥‥‥」


 

 まだ温かさの残るこのピザは確かに美味しい。

 薄い生地がパリパリしていてトロトロのチーズが良い感じになっている。

 もう二枚目なのにもっと行けそうだ。



 「後ね、私の好きなこれもお願いしたの~」



 そう言ってあの黒メガネ白髭のおじいさんマークのフライドチキンを出す。



 「紫乃、それって外側美味しいけど中が味薄いのよね?」


 「うん、知ってる~ だから骨なしスティックのにしてもらった~」



 あ、それって一度食べてみたかったやつだ。

 差し出されたそれを一つつまんで食べてみる。



 「おおっ! これは行けるわね! ほど良い大きさだから味が全体にちゃんとからんでいる」



 これは確かに行ける。

 味はオリジナルと同じだけどささみスティックみたいなので食べやすいし味が全体になじんでる。


 私はにこにこしながらそれを食べていると紫乃がブルーレイを取り出す。



 「さあ、昨日届いたばかりのこの限定特典付きのアニメみんなで見ようよ~ 特典では妹ちゃんの入浴シーンもあるんだよ~」



 ぬっふっふっふっふっとか変な笑いしている。


 大丈夫か紫乃?


 

 「あ、それこないだテレビ放映終わったばかりのですね? 確か第二期も制作決定したやつですね?」


 「‥‥‥お風呂シーンは神回」



 なんか食いついて来てるのがいる。



 高橋静恵はその箱を取ってみる。


 「私あまりアニメとか見ないけど、これって面白いの? えーと、『私はお兄ちゃんをそんな子に育てた覚えはないよ!?』ですって? ふーん、ちょっと面白そうね」



 何故だろう、このアニメってものすごく親近感があるのよね‥‥‥



 そんな事を言いながらアニメ鑑賞会したりケーキを食べたりと楽しくしているとインターホンのベルが鳴った。



 「あれ? 誰だろう」


 紫乃がインターホンに出るとそこには親友その一が立っていた。



 あ、そう言えばこいつも来るんだったっけ?

 何今頃来てるのよ?



 紫乃は親友その一を迎える為に玄関に向かった。



 「ふう、あのバカなんで今頃来るのかしら?」


 「ああ、剛志は結局バイトのシフト抜け出せなくて今頃になっちゃったんだよ。紫乃ちゃんには先に連絡してたみたいだけどな」


 「え? そうするとお兄ちゃんよくバイト抜け出せたね?」



 「そりゃぁ、由紀恵と約束したもの」


 

 そう言っていつもの笑顔を見せてくれる。




 どきっ!




 完全に不意打ちだ。

 しかも私との約束の為って‥‥‥



 やっぱりお兄ちゃん優しい。




 「いやぁ、友也お前バイト抜け出して正解だよ! すっげー混んでたよ今日は」


 部屋に入って来た親友その一はそう言って包みを差し出す。



 「イベントの残りのチョコもらってきたよ。みんなで食おうぜ!」



 あら、親友一のくせに気が利くじゃない?

 紫乃はその包みを受け取りお皿に盛り付ける。



 「お疲れ様太田君、しかし太田君にしては気が利くわね?」


 「ほんとですね、先輩の爪の垢でも煎じて飲みましたか?」


 「別に来なくてもいいのに‥‥‥」



 「泉ひどっ! と言うかみんなもひどっ!!」



 やっぱり私と同じに感じているんだみんなも。

 そんなこと思っていると紫乃がさっきのチョコレートを持ってきた。


 それはかわいらしい丸い形や瓶の形、クリスマスツリーの形をしていた。


 「へぇ、可愛らしいわね? どれ」


 私を含め女子組はそれをつまんで一斉に口に運ぶ。

 そこそこの大きさがあるけどこのくらいになら一口で口に入る。



 「ん、なんか中に入ってる? うわっ、にがっ!」



 私が驚いていると高橋静恵たちもそれに気づいたようだ。



 「あれ? これってもしかして‥‥‥」


 「んっ、飲み込んじゃった」


 「‥‥‥私はこれ弱い」



 もの凄く強烈な味と言うか苦みと言うか、とにかく咀嚼して飲み込む。

 そして飲み込んだ後に喉が焼けるような感覚がある。



 「あ、剛志これって!」



 お兄ちゃんはそれまで親友その一と雑談していたけど私たちに気付く。


 「お前、これってウイスキーボンボンの方じゃないか? みんなにこんなの喰わせて大丈夫かよ?」


 「あれ? ほんとだ。でもお酒は少ないから大丈夫だろ?」



 え?

 お酒??



 「あ~、私ぃお酒弱いのよねぇ~ ねえ長澤君?」


 高橋静恵が少し赤い顔でお兄ちゃんに近づく。

 そして矢島紗江も。

 

 二人はお兄ちゃんに寄りかかりそうになる。



 「ちょっと、お兄ちゃんに何してるのよっ!」



 そう言ってお兄ちゃんに近づこうとした私だったけどいきなり視界がゆがんでふらふらとしてしまいその場で倒れてしまった。



 そしてだんだんと意識が遠のく。




 最後に視界に入ったのは私と同じく倒れている泉かなめの姿だった。


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― 新着の感想 ―
[一言] ブービートラップと言うか、未成年の集まりにそれを選んで持ってくる神経よ。 しかも地元の名士級のお宅で。 これが(世間を含む)紫乃の親御さんに知られたら、親友その一と家族はこの地域を歩けない…
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