56話 強者
今日はどんな魔法少女に会えるかなぁ〜。
学校に…向かいすぎだよね。いつも学校行ってる気がする。今日はどっか別の場所…うーん…南の方へ行ってみよっかな。新しい出会いがあるかもしれないし!
私たちの住む[星乃川東]地区から南へは電車、バスといった公共交通機関でのアクセスがかなり盛んに行われている。東地区には学校やお店がいっぱいあって、南地区には住宅街やアパートが多いからそうなったんだと思う。
アパートで戦おっかな。狭いし隠れやすいし。
魔法少女の身体で走れば20分くらいでアパート群に到着! 今日も登場ジャンプでアパートの屋上へ飛ぶ。
・・・ん?隣のアパートの屋上に誰かいる…
ポニテ、青い髪、日本刀、紺色の袴…ってやばい!【テールインペリアル】だ!
ナイトや【ベビーラテラル】に並ぶ魔法少女最強格の一人…。勝てるわけない!
さっさと逃げなきゃ…!
「待つでござる!!!」
「ひっ!」
思わず声が出ちゃった。すごくハリがあってハキハキした通る声だな…。
「一介の魔法少女であれば見逃したでござるが、以前某をハチミツ漬けにした者とあれば逃すわけにはいかぬ…」
日本刀を鞘から引き抜く…のに上手くいかなくてあたふたしながら刀身が出てきた。・・・なんか意外といけそう?
「できればあなたとは戦いたくないんだけど?【テールインペリアル】」
「ほう。某の名を聞いたでござるか。そなたは確か…【ハニーランプ】殿であったか」
ござる口調が気になって会話がすんなり入ってこない…。
「お、覚えてたんだ…」
「当然でござろう・・・そなたのせいでポイントを失ったでござるからな! 戦でござるよ![真剣:守人丸!]」
「行くよ![メルヘンロッド!]」
もう逃げられない…。相手は超格上のだけど魔法少女の戦いでは下克上は珍しいものじゃないはず。現にナイトにだって一回勝ててるしね。
距離はアパート1棟分離れている。どうみても【テールインペリアル】は超近距離型だろうからこの距離さえ保てればワンチャンあるかも…。
この距離ならーー
「『サンダーウィップ!!!』」
使い勝手の良い雷のムチを隣のアパートの屋上へ放つ。
「ふっ、この程度…『サンダーウィップ』でござる!」
同じ魔法をぶつけてくる。同じ魔法なら[メルヘンロッド]で魔法攻撃がちょっと上がる私のほうが競り勝つ!
・・・んん!?
私の『サンダーウィップ』がかき消され、代わりに【テールインペリアル】の『サンダーウィップ』が襲いかかってきた。
「嘘ぉ!?」
すんでのところでなんとか避けきれた。雷のムチが直撃したアパートの屋上はバキバキに割れ、今にも下の階へ突き抜けそうだった。
「な、なんであっちのが勝ったの…?」
「『雷付与!』せあっ!」
「ちょ!?」
驚いている間に【テールインペリアル】がこっちのアパートの屋上まで飛び乗って来ていた。
雷を纏った日本刀がアパートの屋上の端から真ん中までを一刀両断した。嘘でしょ…。怖いことでも度を超したら笑っちゃうってのは本当だね。
「コソコソと…出てくるでござる!」
なんとか一階まで逃げ切った…。
どうなってんのあのリーチは! 『雷付与』の魔法だけでどうこうなるものじゃないでしょ…。
絶望感だけなら【ベビーラテラル】やナイトより上な気がするなぁ。
「どうせこの近くにいるでござろう? だったら目を増やせばいいでござる!」
・・・えっ!? 目を増やすってまさか!私にそんな強い魔法を使う気!?
「絶望するがいいでござるよ…出でよ!『インペリアルモンスター』」
ひゃあ!? クリスマスの日に見た鎧武者だ!
「嘘でしょあの子! そういうのって強者と戦う用なんじゃないの!?」
「むっ、そこか!」
しまった! うっかり大声を・・・。
「くっ、『ショットガンランプ』」
とりあえずダメージを稼げる魔法の準備! 手持ちランプを片手にジャーーンプ!
一気にアパートの屋上まで飛べた。たぶん通常なら届かないけど【テールインペリアル】がぼこぼこにしたから建物全体が低くなっちゃったんだろうね。
「ちゃんと目の前に来たことだけは評価するでござる」
「それはどうも!」
近くで見ると鎧武者めっちゃ怖い…。でもあれほど強力そうな魔法なら絶対デメリットも大きいはず! もしかしたらHP現象系のデメリットかも!
それなら・・・
「『ショットガンランプ』、発動!!!」
思いっきり手持ちランプを投げつける。地面に落ちる瞬間にランプから無数の光が放たれ鎧武者と【テールインペリアル】を襲う。
よしっ! これは大ダメージが入ったでしょ!
煙が引いていく…立っているのは・・・鎧武者のみ。
「やった!勝てた!!」
「ーーーー成程ーーーー」
ゾワっと背中から汗が吹き出る感覚を覚える…。恐る恐る振り返るとすでに【テールインペリアル】が刀を構えていた。
「凄まじい魔法でござる。ただ、普通に発動して攻撃するだけ。それで通用すると本気で思っていたでござるか?それならーー甘く見られたものでござる」
「ど、どうして・・・」
「ただ一直線な光の攻撃程度、『インペリアルモンスター』を盾にすれば余裕で防げるでござる。当然『インペリアルモンスター』は活動停止になるでござるが」
人にモノを教えるのが好きなのか結構会話に付き合ってくれる。なら最後のあがき!
「『ハニートラ・・・』」
「遅い!!!」
魔法が発動する前に一刀両断された。恐ろしく早い…。この距離で斬られたら回避なんて不可能…。
HPが一気に削られーーーー0を示したところで意識は途切れた。




