13話 火照った私を抱きしめて
「桜さん、遊びに来ましたよ」
「あっ! 輝夜さん! いらっしゃーい」
「私もいるんだけど!?」
ゲッ!? いるよいるいる。女の子がわんさかと...
「桜、これみんなお友達?」
「そうだよ。学校の子と、さっき海でナンパした子たち」
うわぁ...また深刻になってるなぁ。
そう。私の妹、森野桜は計算された女たらし。小学生の頃からその能力を発揮し、クラス中の女の子を我が物にして男子からひんしゅくを買いまくった魔女のような子。実妹の紹介とは思えないよねこれ。
「ねぇねぇ!この人桜ちゃんのお姉さん? かわいーー!」
「こっちのお姉さんは超美人ー! スタイルいいですねぇ」
部屋の奥からどんどん女の子が出てきて私たちを囲い込む。
「ちょ、桜ぁ! 何人連れてきてんのコレ!」
「んー? 15人くらいじゃない?」
旅館の一部屋にいていい人数じゃないでしょうに!
「ねぇねぇ、輝夜さんってぇ恋人とかいるんですか?」
桜が輝夜ちゃんに猫なで声で質問する。
何してんの! って注意したいところだけど私も正直気になる。
「いえ。いませんよ」
「キャー! フリーだって」
「もったいなぁーい!」
類は友を呼ぶと言うけど...桜の友達もずいぶんキャピキャピした子達だなぁ。
と思いつつ輝夜ちゃんがフリーであるということに小さくガッツポーズをする。
やっぱり輝夜ちゃんは人気なようで、ほとんどの女の子は輝夜ちゃんを囲むように集まりだした。
桜と私は部屋の隅っこで2人きりになる。
「・・・ねぇ、お姉ちゃんってさ、輝夜さんのこと好きなの?」
「えっ!? な、何の話ぃ〜?」
「嘘つくの苦手なら辞めた方がいいよ」
うっ、この妹は...
「わかるんだ?」
「まぁこれだけ女の子に囲まれているとね」
桜も意外と考えてたりするんだ。ただ女の子を侍らしてウハウハしてるだけかと思ってた。
「輝夜さん美人だもんね。好きにもなっちゃうよね。いいなぁ」
「だ、ダメだよ!? 桜まで輝夜ちゃんを好きになったら」
「そうじゃないんだけどな...」
「えっ?」
「ううん。なんでも」
・・・桜ってこんなに不思議な雰囲気を持った子だったっけ...?
「あっ! そうだぁ〜」
私を見てニッと笑う。.....なんか嫌な予感がする!
「ねぇねぇ輝夜さん! お姉ちゃんが輝夜さんのこと好ーーウゴゴゴッッッ!?」
「あははははは! 輝夜ちゃんどう!? 仲良いでしょ!」
慌てて桜の口をふさぐ。
「は、はぁ。仲良いですね。素敵だと思います」
「桜! あんた何言ってんの!」
「お姉ちゃんの気持ちを伝えてあげようとしたただけじゃーん」
ったく、この子は...
「私はそういうのはもっとムードを大事にしたいの! 地球上のどこに15人くらいの女の子に囲まれた女の子に告白する人がいるの!?」
魔法少女のポイントで輝夜ちゃんと結ばれるというムードも何も無いことは一旦棚上げする。
「ふーん。じゃあいいけど。あっそうだ! じゃあこうしよ! 明日の朝早くに起きて裏手の林で肝試ししよう! もしお姉ちゃんと輝夜さんのコンビがちゃんと時間内に林を抜けれたら何もしないであげる」
「もし抜けれなければ?」
「輝夜さんにお姉ちゃんの気持ちを伝える! 私からでもいいし、お姉ちゃんからでもいいから」
いいからって...
「いやいやそんなのナシ! 第一私にメリットないじゃん!」
「えっー、もしかしたら輝夜さんと明日ゴールインできるかもよ」
「でもそんな賭け...成立しないでしょ!」
「じゃあいいも〜ん。 ねぇ輝夜さん! 実は...モガッガガッ!?」
卑怯者ォッ!
「じゃあ明日朝4:30に林の前で集合ね、お姉ちゃん♡」
「輝夜ちゃん、部屋に帰ろうか...」
「ま、またぐったりしてますよ!? 大丈夫ですか?」
部屋に帰ってきてすぐに輝夜ちゃんは心配の声をかけてくれた。
正直大丈夫じゃない...だって、私ホラー苦手だし! きっと桜もそれをわかってて肝試しを提案してきたんだ...
とりあえず輝夜ちゃんに肝試しについて説明する。
「肝試しですか。いいですね。夏っぽくて」
案外輝夜ちゃんはイケる口なのかな?
「ごめんねぇ。桜が出てきてから変なことばっかりで。なんかあの女の子たちに変なことされてない?」
「大丈夫ですよ。みんないい人たちでした」
・・・あの子たちをそんなポジティブに言える輝夜ちゃんが1番いい子だよ...
久しぶりに輝夜ちゃんに向かって手を合わせて拝む。
「朝4:30〜というのはちょっと早いですね。もう寝る準備をしましょうか」
「そうだね。もうお風呂入っちゃおうか!」
そう、ここの旅館は大浴場スタイル。つまり輝夜ちゃんと2人でお風呂に入れる!
・・・って
「なんで桜も同時に入ってんの!!」
「えっー、お姉ちゃんたちが後から来たんじゃーん」
嘘だな...この子、ちょっとのぼせ気味そうな顔色してるし。待ってたな。
ちなみに輝夜ちゃんの裸はチラッとしか見てません。私は「その時」まで裸は大事にとっておきたいのです。
輝夜ちゃん、私、桜という謎の3人での入浴となったけど...
「桜、もう出たら? のぼせるよ」
「私あんまりのぼせる体質じゃないから大丈夫だもーん。 あっ、輝夜さんやっぱりスタイルいいですね〜」
「ありがとうございます」
「ジロジロ見ない!」
「もう〜、お姉ちゃんは、ハァ、ケチだ...な...」
パシャーーンッと音を立てて桜が倒れる。
「桜!?」
「灯さん! 涼しいところへ連れていきましょう! きっとのぼせてしまったんです」
「わかった!」
桜をお姫様抱っこで抱えて大浴場を出る。
「輝夜ちゃんは人を呼んできて!」
「はい!」
「桜! 桜! 大丈夫!?」
「おね...ちゃん...」
良かった。意識はあるみたい。
「「「桜ちゃん!」」」
桜の友達が大人数で脱衣所へ入ってくる。
「誰かうちわとか持ってない?」
「あっ、私持ってます」
友達の1人からうちわを借りてパタパタと桜に向かって風を送る。
30分ほどしたら桜が自力で起き上がった。
「桜、大丈夫?」
「うん。ごめんねお姉ちゃん」
「・・・桜、ちょっと私の部屋に来なさい。輝夜ちゃんはちょっと待っててもらっていい?」
「はい...」
座布団を敷いて桜を座らせる。流石に普段はおちゃらけた桜もおとなしく従った。
「どうして私たちが入ってくるまで待ってたの? そんな無茶をする必要があった?」
「ごめん...」
縮こまる桜をギュッと抱きしめる。理由は聞かなくていい。自分が叱られる時も理由を聞かれて言葉に詰まる経験はあるから、桜にそれを強いることはしたくなかった。
「もう、心配させないでよ」
「うん...」
「はい、友達が待ってるんでしょ? ちゃんとお礼言っておくんだよ?」
「うん。ありがとう、お姉ちゃん。でも、明日の肝試しはちゃんとやるからね!」
はぁ。調子いいんだからもぉ。
「お姉ちゃん、さっきなんでって聞いたよね」
部屋から出ようという直前に桜が喋り出した。
「うん」
「そういうとこだよ」
・・・? どういうことなんだろ。部屋を出る桜の顔は、まだ熱が引いていないのかほんのり赤くなっているように見えた。




