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「頂きます。」
久しぶりに家族全員で揃っての食事だ。
「おい朝陽、最近学校どうだ?愛美ちゃんとも上手くやってるのか?」
父がそう尋ねると美惚は表情が強張り、朝陽の方に視線をやる。
「学校?ああ、楽しいよ。愛美もいつも通りだよ。」
笑顔で父に言葉を返す。だか美惚にはそれが作り笑いだとすぐに分かった。
「そうか!青春は今しかない!思う存分今を楽しめ!高校受験も控えて居るしな。愛美ちゃんの世話になりっぱなしじゃあ、男としてダメだ。いつか愛美ちゃんを守ってやれるくらい強くならんとな。」
父は幸せそうにそう呟く。その父の表情を見るのが朝陽にとってどれだけ嬉しいことか。
「おう!って、なんですぐに愛美が出てくるんだよ。父ちゃん愛美のことどんだけ好きなんだよ。」
「え、お前、まだ付き合ってないのか?」
「付き合うもなにも、俺とあいつはそんな関係じゃねーよ。」
「はぁ…お前はなにやってるんだ。あんなに可愛いくていい子なんて早々いないぞ!ビビるな、後悔のない選択をしろ!」
「わかったよ…けど俺らは本当にそんな関係じゃないからな…」
そんな話をしながら楽しく夕食を共にした。
美惚を除いて。
ピピピピッピピピピ
今日もアラームの音で目覚める。このアラームの音はトラウマだ。これを聴くと脳が起きなきゃいけないと完全に調教されている。
「…ハァ、学校か」
憂鬱と感じながらも、体を起こし、準備をする。朝食を食べて家を出る。そして机に座り、読者を始める。これが日課である。ここに来ても話す友達なんていない。常に一人で周りからはぼっち大キングと呼ばれたりもする。
適当に授業を聞き流して、昼休みに入り、俺はパシリにされる。うちの中学は給食ではなく弁当で、購買もある。そこにはパン、おにぎり、ドリンクが販売している。
いつも通りパンとコーヒー牛乳を三人分自腹で買い、急いであの三人の元へ届けなければならない。その時、一番会いたくない人物に会ってしまった。
「あ…」
そこには黒髪でセミロングで、大きくて、黒く、少し潤っていて輝いている瞳に、小さな顔、そして成長中の胸を持った綾瀬愛美が居た。
「よ、よお、なんか久しぶりだな。」
両手にパンとコーヒー牛乳を抱えながら軽く挨拶をする。
「う、うん。久しぶだね。最近なぜか会うことが無かったし…」
愛美は少し悲しげな表情をして答える。
それを朝陽は俺と話すのが嫌なんだと思い、すぐにその場を切り上げようとする。
「じゃっじゃあな!俺急いでるから。」
その場から逃げるように走って屋上に向かう。
その時の愛美はいつになく、悲しげな表情をしていた。
買って来たものを届けてその場を後にし、朝陽はトイレでパンを齧る。
情けないなー本当に。そう思いながらぼーっとしているとアナウンスが聞こえる。
2年4組 南雲朝陽くん、南雲美惚さん。至急職員室まで来てください。
そして俺たちは知ることになる。父の真実を。




