表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/17

3

「頂きます。」


久しぶりに家族全員で揃っての食事だ。


「おい朝陽、最近学校どうだ?愛美ちゃんとも上手くやってるのか?」


父がそう尋ねると美惚は表情が強張り、朝陽の方に視線をやる。


「学校?ああ、楽しいよ。愛美もいつも通りだよ。」


笑顔で父に言葉を返す。だか美惚にはそれが作り笑いだとすぐに分かった。


「そうか!青春は今しかない!思う存分今を楽しめ!高校受験も控えて居るしな。愛美ちゃんの世話になりっぱなしじゃあ、男としてダメだ。いつか愛美ちゃんを守ってやれるくらい強くならんとな。」


父は幸せそうにそう呟く。その父の表情を見るのが朝陽にとってどれだけ嬉しいことか。


「おう!って、なんですぐに愛美が出てくるんだよ。父ちゃん愛美のことどんだけ好きなんだよ。」


「え、お前、まだ付き合ってないのか?」


「付き合うもなにも、俺とあいつはそんな関係じゃねーよ。」


「はぁ…お前はなにやってるんだ。あんなに可愛いくていい子なんて早々いないぞ!ビビるな、後悔のない選択をしろ!」


「わかったよ…けど俺らは本当にそんな関係じゃないからな…」


そんな話をしながら楽しく夕食を共にした。

美惚を除いて。





ピピピピッピピピピ


今日もアラームの音で目覚める。このアラームの音はトラウマだ。これを聴くと脳が起きなきゃいけないと完全に調教されている。


「…ハァ、学校か」


憂鬱と感じながらも、体を起こし、準備をする。朝食を食べて家を出る。そして机に座り、読者を始める。これが日課である。ここに来ても話す友達なんていない。常に一人で周りからはぼっち大キングと呼ばれたりもする。


適当に授業を聞き流して、昼休みに入り、俺はパシリにされる。うちの中学は給食ではなく弁当で、購買もある。そこにはパン、おにぎり、ドリンクが販売している。


いつも通りパンとコーヒー牛乳を三人分自腹で買い、急いであの三人の元へ届けなければならない。その時、一番会いたくない人物に会ってしまった。


「あ…」


そこには黒髪でセミロングで、大きくて、黒く、少し潤っていて輝いている瞳に、小さな顔、そして成長中の胸を持った綾瀬愛美が居た。


「よ、よお、なんか久しぶりだな。」


両手にパンとコーヒー牛乳を抱えながら軽く挨拶をする。


「う、うん。久しぶだね。最近なぜか会うことが無かったし…」


愛美は少し悲しげな表情をして答える。

それを朝陽は俺と話すのが嫌なんだと思い、すぐにその場を切り上げようとする。


「じゃっじゃあな!俺急いでるから。」


その場から逃げるように走って屋上に向かう。


その時の愛美はいつになく、悲しげな表情をしていた。




買って来たものを届けてその場を後にし、朝陽はトイレでパンを齧る。



情けないなー本当に。そう思いながらぼーっとしているとアナウンスが聞こえる。



2年4組 南雲朝陽くん、南雲美惚さん。至急職員室まで来てください。



そして俺たちは知ることになる。父の真実を。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ