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異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました【連載版】  作者: 湯立向日/ガタガタ震えて立ち向かう


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猫に掘り返される家庭菜園

 休耕期。

 収穫の終わった畑や田んぼを休ませる期間の事ですが、実は休耕期だからといって何も植えずに放置することはあまりなかったりします。

 これは何もない状態だと土の状態が悪くなったり、雨水で土の栄養がそのまま流されちゃったりするからです。

 なので休耕期には何か他の植物を植えて土から栄養を吸い取ってもらい、その後そのまま土にかえして肥料にするという農法もあります。


「まあこっちの世界ではあんまやらない方がいいと思うぞ」

「え? 何でですか? こっちって肥料の類も少ないから、少しでも土を肥やした方がいいんじゃ」

「いや、単純に面倒くさいから」


 アスカさんの言葉を面倒くさいの一言でバッサリと切るスクナヒコナ様。

 あんまりと言えばあんまりな言い様ですが、面倒くさいというのは実際にやる当人にとっては重要な判断基準なのです。

 この作品のサブタイトルとか。


「トラクターでもあれば耕すついでにすきこめるだろうがな、鍬とか使って細切れになるまで延々と潰すとか人間にできると思うか?」

「私ならできそうですけど」

「言い方が悪かった。普通の人間にできると思うか?」


 あっさりと普通の枠から除外されるアスカさん。

 でも人間って誰しも普通からは外れてる部分があるのであまり気にする必要はないと思います。

 人類は皆変態だってばっちゃが言ってた。


「まあ面倒くさいだけでやれないこたあないし、村の爺さん婆さんの手は借りずにおまえの手が届く範囲でやるならありじゃないか」

「ですよね! 実は菜の花見つけて種をキープしといたんです菜の花!」

「おお。おまえ案外色んなもん見つけてくるな」


 嬉しそうに黒い種を見せてくるアスカさんに呆れるスクナヒコナ様。

 実はアスカさんはたびたび周囲の草原や森を探索しては食料になるようなものを探してきており、その無駄に高いサバイバル能力に磨きをかけていたりします。


 最近では亀を見つけてきて村の池に放っています。

 亀のような水辺の生物がそんなに簡単に見つかるのかと疑問に思う人もいるでしょうが、亀という生き物は意外にアグレッシブで普通に道路を歩いてたりするので注意が必要です。

 たまに車にひかれてお亡くなりになっていますが、バイク相手だと返り討ちにすることもあります。

 流石は某髭親父の好敵手です。


「それにいざとなったらサロスくんが手伝ってくれますから」

「お、おう」


 確かに言えば手伝うでしょうが、それはサロスくんを単に便利な弟分扱いしているのか、それとも恋心に気付いて弄んでいるのか。

 いつも生意気な少年がちょっと不憫に思えてきたスクナヒコナ様でした。

 今日も異世界は平和です。



「緑肥にする植物と言えばひまわりっていいよね」

「いきなり何ですか」


 一方高天原。

 今日も暇すぎて異世界の日本人をウォッチングしていたアマテラス様が、唐突に何か語り始めています。


「だって向日葵ひまわりだよ向日葵ひまわり。太陽(私)の方を向って太陽(私)のように咲く。正に私の化身みたいな花だよ!」


 そう力説するアマテラス様ですが、ひまわりが日本に伝来したのは十七世紀であり、アマテラス様には縁もゆかりもありません。

 でもまあ海外でも太陽の花や太陽に従う花といった意味合いの名を付けられているので、太陽に縁深い花であることは間違いありません。


「もう可愛いよね。お日様に一所懸命向かって咲く花なんてさ」

「ああ。よく勘違いされてますが、それ嘘ですよ」

「なん……だと……?」


 衝撃の事実を告げられ固まるアマテラス様。

 顔が珍しくへたれずにシリアスになっています。


「ひまわりが太陽に向かって動くのは蕾ができるまでで、咲く頃には茎が固まるので動きません。つまり咲いたら見向きもしないと」

「裏切ったな!?」


 襖を開け放ち遠い空の下で咲いているであろうひまわりを罵倒するアマテラス様。

 今の時期にひまわりとか咲いてるか怪しいですが、沖縄辺りなら冬でも咲くのでワンチャンです。


「うええ。何この信じていたものに裏切られて足場が崩れるような感覚」

「どんだけひまわり好きだったんですか」


 そしていつも通りに畳の上でへたれるアマテラス様と呆れるツクヨミ様。

 今日も高天原は平和です。

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