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異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました【連載版】  作者: 湯立向日/ガタガタ震えて立ち向かう


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ぶっちゃけサブタイトル考えるの面倒くさい

「よう帰ってきたねデュラハン」


 魔王様が鎮座する魔王城。

 最近トラップの噂が大陸中に広まりフィッツガルドからも観光客がやってくるその魔王城に、勇者パーティーにスパイとして送り込まれていたデュラハンさんが呼び戻されていました。


「招致に応じました。定時連絡は欠かさないようにしておりましたが、何か火急の問題でも?」

「それがやねえ。今度日本人がいる国を集めて会議をするから、私も参加せんかて皇帝から書状が来たんよ」

「ああ、あの件ですか」


 魔王様の話を聞いてすぐさま納得して見せるデュラハンさん。

 実は既にマサトくんが異世界への門が開けるかもしれないということは聞いており、ミィナさんから「くれぐれもやらかさないように見張っておいてくださいね。止められなかったら街のど真ん中でその首落としますよー」とお日様笑顔で脅されてたりします。


 首を落とすというのは単なる脅しなのか。それともデュラハンさんの正体に気付いているのか。

 どちらにせよデュラハンさんの胃痛の原因が増えたのは言うまでもありません。


「魔王様の目的を考えれば丁度よろしいのでは。あの日本人を受け入れるような国々なら、さぞ寛容な価値観の国なのでしょう」

「『あの日本人』て、アンタら日本人をなんやと思てんねん」


 膝にのせたシロウサギをもふりながら文句をいう魔王様。

 デュラハンさんの中で日本人という存在がとんでもないことになっているようですが、その原因の一端は魔王様にあるのでつっこんでも説得力がありません。


「でもまあかねがね同意見や。せやけど問題は別にあるんよ」

「別の問題?」


 何かあるだろうかと首を傾げるデュラハンさん。

 見た目は大丈夫でしょう。魔王様は角が生えてる以外は人間に近い姿ですし、女性ということであちらも警戒しづらいはずです。

 お付きに誰を連れていくかも問題かもしれませんが、そこは意外性を見込んでスケルトンさんあたりで構わないでしょう。

 見た目は骨ですが気のいい骨です。骨格も人間なので相手も親しみやすいに違いありません。

 でも夜中に暗がりの中で見たら完全にホラーなので、そこは取扱い注意です。

 ミラーカさん?

 あんなドS連れて行ったら全面戦争待ったなしです。


「……私どんな格好で行ったらいいやろ?」

「……はい?」


 質問に意図が分からず、間の抜けた声を漏らすデュラハンさん。


「いつもお召しになっているドレスで構わないのでは?」

「ホンマに!? 古臭くない!?『うわ何アレ田舎くせぇ』とかいじめられたりせん!?」

「魔王様いじめるとかどんな勇者ですか」


 魔王様をいじめるとかオネエクラスの実力者じゃないと無理です。

 でもそのオネエは紳士なので、魔王様みたいな女性をいじめている奴を見つけたらバックアタック(意味深)をしかけるに違いありません。


「あらあら。そんなに心配なら私が見繕うわよ魔王様」

「却下」

「あら?」


 ミラーカさんからの申し出を即座に断る魔王様。

 不思議そうに首を傾げるミラーカさんですが目が笑ってません。完全に獲物を見る目になってます。


「何故かしら? これでもセンスはいいと思っているのだけれど」

「アンタ服を着せるより脱がすのが目的やろうが!?」

「当たり前じゃない」

「開き直った!?」


 魔王様の抗議をあっさり認めるミラーカさん。

 いじめっ子は外ではなく内に居ました。魔王様ピンチです(日常)。


「……では、私は任務に戻ります」

「助けえや!?」

「無理です」


 わきわきと手を蠢かせながら魔王様に迫るミラーカさんと、あっさり見捨てるデュラハンさん。

 今日も魔界は平和です。



「陛下。移動魔術の進展ですけれど、今のままでは空中でドラゴンに襲われかねないので、さらに改良を続けるそうですわ」

「……ドラゴンか。なるほどそこまで考えてはなかったな」


 一方フィッツガルド。

 皇帝陛下の執務室にて、ヴィルヘルミナさんがカガトくんの魔術の成果報告をしていました。

 普通はこういった報告は魔法学園を経由してあげるものなのですが、今回の研究はヴィルヘルミナさん個人が配下に依頼した形になっているので、こうして律儀に自分で報告に来ているのです。


「竜王山を通過しないなら問題はないということかな?」

「そうですわね。でも今のままでは魔力の消費が大きいので、長距離で多人数を一度に運ぶのは無理だと言っていましたわ。勇者様ならその辺りも問題ないのでしょうけれど」

「マサトにやらせるなら研究させる意味がないんだよねえ」


 おつかいを頼むだけなら確かにマサトくんだけで事足ります。

 それでもカガトくんに研究を依頼したのは、魔術という技術に落とし込んで誰にでも使えるようにするためです。

 結局一部の人間にしか使えないようならば、あまり意味はありません。


「そういえばヴィルヘルミナ。今度の会議の件なんだがね。君も同行してくれないか?」

「頭が沸きましたの陛下? 私まだ学生ですわよ」

「アッハッハ。君中々手厳しいね」


 ヴィルヘルミナさんの容赦ない発言にも笑って返す皇帝。

 でも内心で泣いてます。皇帝陛下は先帝であるグライオスさんと違って打たれ弱いのです。


「人手と知恵が必要ならお父様をお連れになればよろしいでしょう」

「君のお父さん腹黒過ぎて一緒にいると疲れるんだけど。あとこの国で日本人と一番親しいのは君だろう。友人や部下のために一肌脱ごうとは思わないかい?」

「……その言い方は卑怯ですわ」


 皇帝の言葉にふいと拗ねたように視線をそらすヴィルヘルミナさん。


「しかし一理ありますわね。いいでしょう。このヴィルヘルミナ。友のため、そして陛下のために力を尽くしますわ!」


 しかしそれは一瞬で、一つ息をつくと一切の迷いの色を見せず宣言するヴィルヘルミナさん。

 やだこの子カッコいい。皇帝が惚れかけたのも無理もありません。


「ついでに私と結婚を前提に付き合いを……」

「最低ですわね陛下」


 そして寝不足だったせいで深く考えず「ついでに」とか言ってしまい、あっさりふられる皇帝。

 カガトくんの従属っぷりといい、ヴィルヘルミナさんはダメンズホイホイなのかもしれません。

 今日も異世界は平和です。


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