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異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました【連載版】  作者: 湯立向日/ガタガタ震えて立ち向かう


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猫鍋とかいうテロ画像

 東京。

 現在日本の首都として知られている東京ですが、実は厳密に東京を首都と定める憲法や法律はなかったりします。

 歴史的には天皇陛下が御座する地を首都としてきたのですが、東京への遷都時に遷都宣言がされなかったので宙ぶらりんとなり、さらに首都をどこか定めなきゃいけないという決まりもないし、そもそも都が複数あった事例もあるので、もうこれわけわかんねえな状態になっています。


 まあ国際的にも東京が首都だと思われてるし、もう東京が首都でいいんじゃねという意見が大半です。

 でも京都の人の前でそう言うと「日本の首都は京都だろ!」とぶぶ漬けアタックをくらいかねないので注意しましょう。


「にゃー」

「ふむ。なるほど。年末はイベントや忘年会で人と酔っ払いが多くなるので、トラブルにも注意しなければならないわけだな」


 そんな東京の夜の街で定例の猫集会に参加しているグラウゼさん。

 白い毛皮が何か高貴っぽい猫から年末のイベントラッシュについて教えられています。

 何で猫がそんなことを知っているのかというと、猫だからに決まっています。

 何事にも無関心なように見えて、美味しいところは見逃さないのがお猫様なのです。


「キャー!?」

「む!?」


 そうやってのんびり猫と話していたグラウゼさんでしたが、その超人的(人外)な耳に女性の絹を裂くような悲鳴が届きます。


「おのれ! まだ日も落ちたばかりだというのに。か弱きものに無体を働くとは、許せん! 行くぞ猫!」

「にゃー!」


 そして手近に居た灰色の猫を肩に乗せ、悲鳴の主を助けるべく飛び立つグラウゼさん。

 何かもう自分が人類の敵対者だったことを完全に忘れてますが、戸籍も住民票も作られて完全に日本人になっちゃってるので仕方ありません。

 あと何で場所が分かってるのにわざわざ猫を連れていくのかというと、マスコットみたいなものだから深く気にしてはいけません。


「い、いや! だ、誰か!」

「くそ! 大きな声出すな!」


 そしてグラウゼさんが文字通り飛んで行ったそこには――。


「あ……あ! グラウゼ!」


 ――フェリータさんが若い男に腕を掴まれて涙目になっていました。


「……グハ!?」

「にゃ!」


 予想外の光景に勢い余ってごみ収集箱に突っ込むグラウゼさん。

 一方華麗にグラウゼさんの肩から離脱し着地する猫。


「……何をしている小娘?」

「い、いきなりこの人が近づいて来て腕を掴まれて……」

「掴まれる前に逃げんか! どう見ても危ない輩ではないか! 頭の中がお花畑か貴様!?」

「な、何で私がそんなに言われるの!?」


 金髪に鼻ピアスといういかにもな格好の男を指して言うグラウゼさんと、被害者なのに責められてさらに涙目なフェリータさん。

 でも実際頭の中はほどよく花が咲いているので、危機意識は間違いなく足りてません。


「……あのー、俺こいつが路地裏の方にふらふら入って行こうとしたから止めただけなんすけど」

「何だと?」


 しかしグラウゼさんに悪人認定された男から意外な発言が。

 確かに立ち位置を見ると、フェリータさんの方が暗い路地裏に近く、男が表通りに引っ張る形になっています。


「知り合いなら任せていいっすか? 俺用事あるんで」

「……分かった。すまんな」


 そう言ってフェリータさんの手を離すと、地面に置いてあったギターケースらしきものを背負って去っていく男。

 どうやらただの通りすがりの親切なバンドマンだったようです。

 人は見かけによりませんね。


「にゃー」

「きゃあ!? ちょ、ちょっと、離して」


 そしてどさくさ紛れに逃げようとしたものの、足元に猫が絡んできて動けないフェリータさん。

 今は人間の足が生えていますが、人魚なのでそのままかぶりつかれてもおかしくありません。


「よくやった猫。で、何故黙って去ろうとしている貴様?」

「い……」

「い?」

「……いぢめる?」

「ハッハッハ! よし、お望み通りいじめてやろう。この能天気娘!」

「望んでないー!?」


 涙目のフェリータさんと高笑いするグラウゼさん。

 さすがミラーカさん(ドS)の父親。実にいい笑顔です。


「冗談だ。家まで送ってやるから付いてこい。あと夜に出歩くならば誰かほかの者を同行させろ」

「うう……。ぎ、逆ナンとかいうのに挑戦してみたかったのに」

「何だその無謀な挑戦は」

「にゃー」


 歩き出すグラウゼさんと、その後ろをトボトボと付いていくフェリータさん。そして「じゃあまたな」とばかりにトテトテと去っていく猫。

 今日も日本は平和です。

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