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異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました【連載版】  作者: 湯立向日/ガタガタ震えて立ち向かう


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上り坂で自転車を降りると負けた気がする

「会議じゃ」


 とある休日の安達家。

 異世界人たちが安達くんの家に居候を始めてから何度目になるかも分からない家族会議(家主不在)ですが、今日はそれほど大事な内容ではないらしく欠席が目立ちます。


 欠席筆頭――グラウゼさん。

 もっともグラウゼさんは相変わらずの夜行性なため、日中は寝ているので仕方ありません。

 それでも他の人の食事時間に合わせて寝起きしてる辺り、当初の高笑いしてた鮮血の公爵(笑)からは考えられない丸さです。


「会議……つまり私の彼氏を探すための話しあ」

「おぬしちょっとだあっとれ」


 コミュ障のくせに目を輝かせてテーブルの上に身を乗り出すフェリータさんの口を、白いバツ印のテープで封印するリィンベルさん。

 どうやら何らかの魔術がかかっているらしく、フェリータさんが必死に手で剥がそうとしているのにビクともしません。


「ヽ( ;×;)ノ」

「まあ相談自体はこのフェリータのことで間違いないんじゃがな。文字通り足がないこの娘に、移動手段を与えるにはどうすればいいのかという話じゃ」

「ああ」


 リィンベルさんの説明に納得する面々。

 確かにフェリータさんは家の中を第三匍匐で移動していますが、それではどうしても限界があります。

 自衛隊員だって階段は普通に上るのです。


「ふっ。女性を助けるのは紳士の役目。多少の距離なら私が抱いて移動しますよ」

「婚約者裏切った股のゆるい男にこの恋愛脳を託すわけなかろう」

「人が忘れかけていた黒歴史を!?」


 いつも通り無駄に格好つけて提案したローマンさんでしたが、多くの読者も忘れているであろう過去の恥部をつかれて撃沈しました。

 ちなみに隣でヤヨイさんが平静を装いながらもちょっとむくれています。

 案外ローマンさんにも脈はあるのかもしれません。


「ふむ。担いで移動するなどという原始的な手段をとることもあるまい。ここは異世界。ならばこの世界の発達した技術の世話になればいいのだ」

「ほう」


 不甲斐ないローマンさんに代わり提案するのはフィッツガルドコンビの片割れグライオスさん。

 その自信満々な提案に、全員が耳を傾けます。


「して、具体的に何を?」

「セグ○ェイ」

「却下」


 親指立てていい笑顔で言うグライオスさんを一刀両断するリィンベルさん。

 セグ○ェイとか日本国内で乗ったことある人はどれだけ居るのでしょうか。


「何故だ!?」

「あんな直立不動で乗るもん魚に操れるはずがなかろう! というかそれおぬしが乗りたいだけじゃろ!?」

「バレたかすっぽん!」


 リィンベルさんの指摘をあっさり認めるグライオスさん。

 どうやら興味があるものの自分のこづかいで買うのはもったいないので、フェリータさん用に買っておいてどさくさ紛れに乗るつもりだったようです。


「まあ何か乗り物を準備するというのは妥当なのでは?」

「そうだな。車椅子ならどうだ。動力のついたものもあるらしいぞ」

「ふむ」


 乗り物という発想自体は悪くないというナタンさんに、マカミさんが車椅子はどうかと提案します。

 確かに最近の車椅子は高性能ですし、車椅子マラソンでの最高速度は50㎞/hに達すると言われています。


 車椅子で走り回る人魚。

 新たな都市伝説が誕生しかねません。


「あの。こっちの世界には『人魚姫』っていうお話があるんですけど」

「む?」


 そこへ控えめに話し始めるエルテさん。

 人魚姫。誰もが名前とおおまかなあらすじは知っているほど有名な話です


「その中で人魚姫は、声と引き換えに人間の足が生える薬を飲むんです。そういう魔術って作れませんか?」

「……ふむ」

「ヾ(;×; )シ」


 エルテさんの話を聞いて何やら考え込むリィンベルさんと「え? この流れ私喋れないままにならない!?」ともがき始めるフェリータさん。

 今回のお話の主役だというのに台詞がまったくありません。


「できんこともないが、幻術ならまだしも物理的に肉体を改造するというのは少し難しいの。自分の体ならまだしも、他人の体を弄るのは勝手が違ってくるし……」

「(ノシ;×;)ノシ」


 そう言いつつも不可能ではないらしく、前向きに考え始めるリィンベルさん。

 このままではフェリータさんが文字媒体の作品なのに喋れないという空気キャラ一直線へと突入してしまいます。


「……まあ勝手が違うなら調べればいいだけのこと。やってみるか」

「プハッ!」


 リィンベルさんがそう結論付けたところで、ぎりぎり間に合ったらしくお口のバッテンから解放されるフェリータさん。

 自分に見合った恋人を召喚しようなどという無駄に高度なことを実行するあたり、魔術の腕も高いようです。


「わ、私……人間の足に変化する術使える」

「……はい?」


 予想外すぎる一言に、揃って固まる安達家の面々。

 丸々一話使った話し合いが、まったくの無駄だったと判明した瞬間でした。

 ディレットとは違うのだよディレットとは!


「……何でもっと早く言わんのじゃ!?」

「だ、だって。り、リィンベルが黙らせたんじゃない!?」


 怒るリィンベルさんと反論するフェリータさんですが、経緯を考えるとどっちもどっちです。

 今日も日本は平和です。



 一方高天原。


「ツクヨミ。セグ○ェ……」

「買いませんよ」


 神格通りのお日様笑顔で言うアマテラス様と、最後まで言わせないツクヨミ様。

 着々と弟の姉に対する扱いが雑になっています。


「……何で!? 便利じゃん! 動画を作るときも足動かさずに水平移動するから楽なんだよ!」

「何の話ですか」


 どうやらアマテラス様のPCスキルは着々と無駄に上がっているようです。

 動画を作ったところでどこに公開するつもりなのでしょうか。


「それに便利と言いますが、あんな遅い乗りもの自転車で十分代用可能でしょう」

「私自転車乗れないんだもん!」

「……ああ」


 涙目で叫ぶアマテラス様と納得するツクヨミ様。

 自転車に乗れないと聞くと「何で?」と思う人も居るでしょうが、地域によっては交通機関が発達していて自転車に乗る機会がないだとか、坂道が多すぎて自転車はむしろ疲れるという理由で乗ったことがない人も普通にいます。


 だからアマテラス様が自転車に乗れないのも、乗る機会がなかっただけなのです。

 決して勢い任せに乗ってみて田んぼでクラッシュしたわけではありません。


「……自転車くらいならすぐ用意できますよ。練習しますか?」

「……する」


 右手で涙をぬぐうアマテラス様と、頭をポンポン叩くツクヨミ様。完全に姉弟の立場が逆転しています。

 今日も高天原は平和です。


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