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異世界召喚が多すぎて女神様がぶちギレました【連載版】  作者: 湯立向日/ガタガタ震えて立ち向かう


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会話のドッジボール

「ねー加賀さん。嘘ついたら喉にハリセンボン刺さる呪いとか作れませんか?」

「何それ恐い」


 とある昼下がり。

 長期休暇のため学園から逃亡し未来の主であるヴィルヘルミナさんのお屋敷で厄介になっていたカガトくんでしたが、そのヴィルヘルミナさんの友人であり同じ日本人であるミーナさんから相談を受け、その内容に戦慄していました。


「ちなみにハリセンボンは魚の方で、突然喉の中に出現して、嘘をつかれた人の怒りを体現するかの如く膨らんでいくみたいな」

「想像するだけで痛い! というか窒息する!」

「嘘をついていいのは討たれる覚悟のあるやつだけだ!」

「人類絶滅しちゃう!」


 お日様笑顔から次々放たれる物騒発言に生まれたての小鹿の様にプルプル震えるカガトくん(ヘタレ)。

 このままではカガトくんが女性恐怖症になってしまいます(手遅れ)。


 ちなみに「指切りげんまん~」で始まる約束は日本人なら誰もが知ってるほど有名ですが、実はその「指切り」というのは小指を切断して誓いを立てるという意味で「げんまん」は破ったら一万回殴るという意味だったりします。

 どう考えても針千本にたどり着く前に死にます。


「えー、一応聞くけど何でそんな呪いが欲しくなったの?」

「あのですね。私結構お義父さんに信用されてて、自分で商業ルート拓いたり直接商談に行ったりするんですよ」

「ああ。見た目でなめられるとかそういう話?」


 何せミーナさんは日本ではまだ未成年の少女ですし、見た目も年相応より少し幼いくらいなので異世界人から見たら完全に子供です。

 そのため侮られてまともに商談できないのだろうとカガトくんは思ったわけですが。


「なめられるならまだしも、契約を後から破棄されたり都合のいいように改竄されたりするんですよね。まあそこは私がなめられてる以上に、貴族に取り入っててやりたい放題な連中がのさばってるせいなんですけど」

「ああ。お嬢様も言ってたなあ。この国は急激に大きくなったから、先帝の手が届かずに腐ってるところも多いって」

「だから契約を破ったら署名した手が爆散するギアス的な何かを仕込めないかなと」

「うん。ギアスってそういうもんじゃないからね?」


 いちいち発言が物騒なミーナさんに諦めの境地でつっこむカガトくん。

 ミーナさんも普段からこんなに物騒なわけではありません。上手くいかない商談でストレスが溜まっているだけなのです。嘘ですが。


「さて。前菜代わりの話はこの辺りにしときましょう」

「前菜だったんだ。俺もうお腹いっぱいなんだけど」

「実は新しく日本人がこちらに召喚されたらしいんですよ」

「なるほど。実は会話する気ないね君」


 商家仕込みの軽快なトークに何かを悟ったカガトくん。

 人間時には諦めが肝心です。


「とは言っても情報が来てるだけの段階なので、たまたま手が空いてて近場のユウキさんが確認してるところなんですけど」

「えーと、国生ユウキさんってメルディアで騎士やってる人だっけ。大丈夫なの? 色々と」


 オネエが確認に向かったと聞き心配するカガトくん。

 特に召喚された日本人が男性だった場合、オネエと出会った瞬間にYOUはSHOCKとなりかねません。

 そして実際召喚されたのは海猿系マッスルなカオルさんなので、オネエと並んだら絵面が完全に世紀末救世主伝説です。


「ユウキさんはあれで常識的な人ですし、誰にでもあんな話し方してるわけじゃないですよ。獲物を確実に狩るための擬態は完璧です」

「それを聞いて俺は獲物じゃなかったんだと凄く安心した」


 ミーナさん経由でカレーの存在を知りドワーフ王国に赴いたことがあるカガトくんですが、実はそこでオネエに遭遇していたりします。

 この世に恋に狂った女性よりも恐ろしい存在が居たとカガトくんが恐怖を抱いたのは言うまでもありません。


「でも加賀さんって女性恐怖症気味だからそっちに目覚める素養たっぷりですよね」

「お嬢様ー! 助けてお嬢様ー!」


 順調に削られていく何かを補給するために、自分の知る唯一信頼できる女性に助けを求めるカガトくん。

 順調にカガトくんがヴィルヘルミナさんに依存しています。

 友人からの見事なアシストです。


「それで本題なんですけど」

「まだ本題入ってなかったんだ」

「日本人が召喚されたら察知する魔術とか作れませんか」

「うん。門外漢の人ってさらりと無茶な要求してくるよね」


 ただでさえル○ラにてこずってるカガトくんにそんな余裕はありません。

 一瞬で目的地に飛んでいく魔法とかバードストライクでしめやかに爆発四散しかねません。


「無理なんですか?」

「察知するようにと言われても、範囲が世界中となると単独で維持できるような規模じゃないよ。センサーのようなものを各地に置く手もあるけど、どうやってそれを世界各地に設置するかって問題が出てくるし」

「そうですか。困りました。こちらに来てる日本人で魔術が使えるのは加賀さんと勇者様くらいなんですけど」

「勇者くんなら力技で何とかなるんじゃないの?」

「どうやったらいいのかイメージできないから無理って言ってました」

「無理な理由がおかしい」


 それはつまりイメージさえできたら可能だということになります。

 さすがは神の領域に片足つっこみかけてる脳筋です。


「まあ近場だけでも拾えるように術式だけ完成させて、そこから改良して範囲を広げていくしかないかなあ」

「じゃあそれでお願いできますか?」

「……俺も色々忙しいんだけど」


 ミーナさんのお願いに渋って見せるカガトくん。

 実際魔法学園での課題にル○ラの開発とやること盛りだくさんで寝る暇がありません。


「受けてくださるならジュウゾウさんのために開拓したルートを使ってカレー粉を提供しますよ?」

「俺に任せろ!」


 米に続いてカレーが安定供給されると聞きあっさり承諾するカガトくん。

 寝る暇がない? 寝なきゃいいじゃない!


 今日も異世界は平和です。


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